東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

【出前講義】愛媛県立今治西高等学校・大学出張講義「農学・生命科学入門--アブラナ科植物の自家不和合性と研究者への道--」(9/24, 10/4追記)

2014年9月25日 (木)

 午前中は愛媛県立今治南高等学校。午後は愛媛県立今治西高等学校。本校相互は歩いて数分の所にあるのですが、日高農場からだと。少し距離があります。高校時代は、年に1回のマラソン大会の時に日高農場の前を通ったような。。。歩くと結構な距離です。このところ、毎年ですが、母校の今治西高等学校から、大学出張講義をお願いされ、今年も。ありがたいことです。高校から今治駅の方に少し歩いたところに常盤小学校がありますが、その小学校と今治小学校の合同だと思いますが、ここ数年、普通のうるち米と紫稲をつかって、水田アートとでも言うのでしょうか。そうしたものが作られています。いつも何なのかわからないのですが、今年は立て看板があり、こんな文字という説明が。ただせっかくなので、できるだけ高い位置から撮影して、それらしく見えるように。。。実際に植える小学生は楽しいだろうなと。。。また、その近くでは、高校時代の体育の時間にハンドボールをおしえてくれていた先生が、マツの手入れをされていて。高校の時には、ボールうまくつかめず、苦手でしたが、今は、渡辺に近いfieldのことをされているもあって、高校へ伺う前の短い時間でしたが、楽しく話して頂き、昔を懐かしむことができました。ありがとうございました。

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DSCN3838.JPG 大学出張講義で母校に伺うと、時間を見つけて、校長先生とお話しします。今回も時間を頂き、今年度、東北大受験生がおらず、申し訳ありませんと校長先生からお話しを頂いたのは、恐縮でした。東北大には、あとの講義でも話をしましたがAO入試を2 pattern用意しているので、是非、トライしてほしいと。。。そんな校長先生との話のあと、講義をされるtotal 11名の大学教員が会議室に集合し、担当の月原先生の方から、総合学習の時間を使って、進路のことを考え始めたところだと。もちろん、文理選択は、渡辺の頃と同じように、2年生の時というか、1年生で希望をとって、2年生からは文理それぞれと。また、渡辺の頃とは、カリキュラム、おしえる内容も異なることもあって、。。ただ、講義をするときには、こんなことは、ニュースとかで聞いたことがあるのではと言うことは、渡辺の頃に何を習ったというのは関係なく。

DSCN3862.JPG 講義はいつもの生物講義室。高校に入って、はじめて1年生で生物の講義を受けた場所。あの当時は、細胞の成り立ちから入り、核、核膜、ミトコンドリア、小胞体など、中学校まででは聞いたことがないような細胞内小器官の名前も。また、渡辺が大学に入ってからの「生物化学I, II」の講義もそうでしたが、黒板を上下にして、ひたすら、黒板に書かれることをノートに書くのが精一杯で。。。どうも苦手でした。高校時代では、生物Iの最後の「遺伝」の所だけは、確率というか、数学的に考えればよかったこともあって、そこだけは点数がよかったような。そんな記憶が蘇る場所です。この講義は2年生が聴講対象ですが、昨年、1年生で何かの都合で、1年生のイベントに参加できず、渡辺の講義を聴いてくれた方が、今年も聴講してくれていました。うれしい限りです。今の高校生が、今治しないで小学生向けに講義を始めた2年目の学年。なので、小学校の時に、渡辺の講義を聴いた受講生がいるかと思いましたが、意外とそうでもなくて。来年あたりからでしょうか。講義の内容は、渡辺の研究対象である「自家不和合性」のことと「キャリア教育」の話。将来を考えるという意味では、こんなことをしてみたい、こんな学部を考えているけど、将来への不安というか、キャリアをどうすればよいのかと言うことに悩まれているからだと思います。最初に、講義のどちらに重きを置けばよいかというので、手を上げてもらったら、「キャリア教育」の話だと。ということで、研究の話をできるだけ早めに切り上げ、キャリアの話と思ったのですが、。。。

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DSCN3847.JPG 講義の最初は、渡辺が受講生の先輩であると言うこと。年齢を数えるととてつもなく上になってしまったという何ともいえない気持ちになりつつも。簡単に自己紹介を。そのあと、自家不和合性というか、植物の生殖の話をする訳ですが、その前に、植物の基本的な大切さ。それは、植物があるから、生きとし生けるものがO2(酸素)を摂取することができると。。。当たり前のことではありますが、意外とこの酸素のありがたみを忘れている訳です。植物は光合成をしてくれて、その同化産物を、人間に食糧として提供してくれていることは、もちろん、理解している訳ですが、その前にと言うところを、改めて。。。こんな地球に大規模に貢献している「植物」の話と言うことで。それに続いて、恒例の普段食べている野菜、果物、穀類などの花を見て、それが何の作物なのかを考えるコーナー。今治のように自然が豊かなところです、たくさんの名前がわかるだろうと思ったところ。。。わかったのは、オクラ、キュウリ、ネギ、くらいだったかと。。。もう少しわかると思いましたし、愛媛県の花になっている身近な「ミカン」の花はわかってほしかったですね。ヒルガオ科のサツマイモの花を見て、食べるものという条件があるのに、「アサガオ」という生徒さんも。。。ネギ坊主をみて、タンポポかな。。。と言うのもあったのは、結構かなり、ショックでした。また、ヒマワリの上のハチさんがどこから来て、何をして、次にどこへ行くのか。というのをいつも聞く訳ですが、ここではちゃんとした回答があることを期待したのですが、。。。まず、最初に、ハチさんがどこから来てというところで、これはある意味斬新でしたが、「森、山からきた」と。よくある回答は、「巣から来た」と言うのがほとんどなのに。。。確かに、蜂の巣の多くは、山とか、森にあるかも知れないですが、意外と身の回りにもあります。最近は、温暖化の影響で人家の周りにまでスズメバチの巣ができているというのを聞きますし、アシナガバチであれば、簡単に見つけることができると思います。秋は巣別れからのシーズンだったでしょうか。あまり近づかない方がよいかも知れないですが、冬には落ち着いていると思います。探してみて下さい。

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DSCN3851.JPG 遺伝的多様性を持つことは大事なこと。その多様性を生物というか、生き物は大事にしている訳で。動物では免疫系が機能しているとか。では、植物ではどの様に多様性を獲得するための工夫をしているのか。トウモロコシなどでは、雌雄の生殖器官が熟するタイミングをずらすことによって、違う個体の花粉で受粉、受精していると。。。意外と知らないようでした。もちろん、話のメインの自家不和合性では、驚きの動画を見ているようなのは、何よりだと思いました。というか、多くの生徒さんが動物に興味を持っているようでしたが、植物も考え、工夫しているというのは、わかってもらえたのではないでしょうか。また、自家不和合性を使うことで、異なるS系統を用意することで、容易にF1雑種を作ることができ、雑種強勢を発揮させることもできると。ただ、雑種強勢発現のためには、多くの組合せを実験した結果であり、それをするのが、品種改良、育種だと。また、アブラナ科植物の自家不和合性については、25年近くの研究で多くの成果を上げてきて、Nature, Scienceというtop journalを目指したと。是非、今西の後輩と一緒に研究をして、Natureに論文掲載をしたいと。。。この中から、そうしたメンバーになってくれる人がいるのを楽しみにしていますので。

DSCN3854.JPG 後半は、渡辺の小学校時代から現在に至るまでを提示しての「キャリア教育」。渡辺と同じ小学校、中学校を卒業した方はきていませんでしたが、隣の小学校の学区の方は。ずいぶん時代も変わったので、ただ、基本、今治の田舎というのは、変わってないのではないかと。そうした中で、小学校の時に体験したのが、大事であったと。もちろん、今でもよいのでと。。。。その渡辺が小学校を卒業するときに「科学者になりたい」と書いたのは、いつも書いていることですが、当時のアニメの影響。でも、そのアニメの科学力は、現在でも実現されてない訳で。そう考えると、科学の心を揺するには十分であったのだと思いますし、今でも、意味があるのではと。。そんな渡辺が高校時代にどの様なことを学んだのか。今でも意味があることだと思うので、是非、大事にしてほしいと。。。高校3年生で共通一次試験ができず、悩んでいるときに励ましてくれたのが、小学校の時の担任の先生だと。また、そのおかげで、東北大に行くことができ、先日なくなられた師匠の日向先生、自家不和合性に巡り会うことができたと。。。だから、やりたいことをしっかり持って、がんばることだと。このあたりから、時間も足りなくなってきて。。。ただ、農学部というのは、幅広い学問であり、是非、進路の1つに考えてほしいと。また、論理的思考力、リーダーシップ、問題発見能力も大事だけど、責任感、コスト意識、ストレス耐性も大事だからと。今治人なら、コスト意識は知らないうちに、埋め込まれているからと。。。座右の銘として、いつものように、理化学研究所所長・原子物理学者・仁科芳雄博士の「環境は人を創り、人は環境を創る」を。だからこそ、今治の後輩たちに還元したいのだと。。。それは、前々日に研究打合せでお会いした、広島工大の渡辺より15級くらい上の越智教授も同じことを。是非、そんな先輩もいるから、HPを見てほしいと。。。最後はいつもの組織論と集合写真で世界へ情報発信。

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DSCN3860.JPG それから、後半のキャリア教育の所だったか、どこかで何をやりたいのか、と言う質問をしたときに、イネの品種改良をしたいとしっかりとした目標を持った生徒さんがいたのは、立派です。ぜひ、大学院では、渡辺の所に来て、一緒に遺伝学、ゲノミクス、エピジェネティクスという先端のことを学んで、日本のleading varietyになるようなイネ品種を育成してもらえるような人材になってほしいなと。楽しみにしておりますので。と言うことで、今年の母校での講義も終わった訳です。

 最後になりましたが、愛媛県立今治西高等学校・月原先生、小野先生、中川先生をはじめとする関係の先生方にはお世話になりました。ありがとうございました。また、今治で出前講義があるとき、お邪魔でいればと思います。と言うのと、是非、1人でも多くの生徒さんを東北大学に、また、大学院で渡辺と一緒に研究できる方がいれば、楽しみにしておりますので。ありがとうございました。


 わたなべしるす

 PS. 講義をしていた机の上に九大の仁田坂先生が書かれた変化アサガオの本を発見。あんなに変わったアサガオを江戸時代に。というのは、すごいことだと。遺伝学のおもしろさを理解する上では、よい刺激になるかと。多くの生徒さん、是非、見てみて下さい。渡辺も河北新報の記事を書くときに、ずいぶんお世話になった先生でもありますので。と言うこととともに、皆さんの祖先の人たちは、メンデルの遺伝の法則を知らないで、こんなことができたのだと。。。

DSCN3861.JPG PS.のPS. 講義が終わったあと、同じように講義に来られていた、九州工大・安永先生とは、高校時代の同期。こんなところでお会いして話をできるのはうれしい限りで。ただ、どこの大学が抱えている問題も同じ。議論が進んだ頃に、午前中にお世話になった別府先生も。高大連携と言うことで、いろいろな話もできました。ありがとうございました。

DSCN3863.JPG PS.のPS.のPS. 昨日の夜に、Twitterで速報しましたが、打合せなどが終わって宿に戻った少し前と、ちょうど、その頃だったと思いますが、21:45頃、22:30頃に、M5.0, M5.2の地震が。。。1hrの間に連続とは。。。ちょっと、びっくりでした。研究室のある仙台市青葉区は震度1~2だったと思われますが、確認したところ、研究室の被害はなかったと。ほっとでした。

 PS.のPS.のPS.のPS. 講義の翌日の岡山への移動前には、今治市内の小学校のふるさと出前授業を統括頂いている、今治市立今治小学校の高橋校長先生と11月の出前講義についてお話しをできる時間を頂きました。ありがとうございました。教育実習の時に、ご一緒した方がこの学校にいらしたり、世の中、狭いなと。。。また、余りに差があるならしょうがないけど、そうでなく、僅差で何とかなるようなことであれば、それはtopを目指さないと。。。最初から、勝てないとあきらめるというのはと。。まさに、その通りだと思いました。勝利至上主義というとおこられるかも知れないですが、勝つことができるのであれば、がんばって、topになろう。というのは、子供の頃から、大切だと。ちょうど、運動会の頃。走るのが苦手だった渡辺も障害物競走では、工夫をして、勝とうと努力をしていましたので。。。

 PS.のPS.のPS.のPS.のPS. 10/4(土) 21:00追記。講義でお世話になった月原先生から母校のHPに今回の記事が掲載されていると。。。この上ない喜びです。ありがとうございました。


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