東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

植物科学、死の谷、農業への応用。。。(5/29)

2010年5月29日 (土)

 以前にもお知らせしましたが、日本学術会議主催で「植物を活かす--植物を利用したグリーンイノベーションに向けて--」というシンポジウムに参加しました。学会、産業界、アカデミアからのプレゼンのあとに、パネルディスカッションがありました。21世紀の産業を支えるために、「植物をどう活かせばよいか。」ということで、食糧、エネルギー、材料、医薬など様々な現状、提案がありました。大盛況で300人収容の会場に490人だったそうです。

DSCN4262.JPG 興味深かったのは、共同研究を行うことは投資と同じくらいの効果があると。。。これまで数多くの共同研究をやってきた渡辺としては、とても心強く感じた言葉でした。また、アカデミアにいる場合、どうしても基礎をやる方が評価が高い。ただ、応用もやらないと、「税金」という研究費を使っている限りは、という面もある。その点、科研費の申請書のところに、研究費は税金から来ているので、国民への還元は??という欄がある。その意味で、きちんとした説明責任を果たしながら、アウトリーチという教育活動ができればと思った次第です。

DSCN4263.JPG また、よく言われることに、基礎と応用の間には、「死の谷(The Valley of Death)」があると。たとえば、シロイヌナズナの研究をBrassica植物、作物に応用するのは、容易でないと。。。たしかに。。渡辺の場合は、アブラナの研究から、シロイヌナズナも使うようになったので、あまり実感していませんでしたが、栽培面積など、大きく違いすぎるのは明白です。でも、自家不和合性研究の場合、やはり、Brassicaを使って研究をするという醍醐味はあると思っています。また、キャベツの仲間には、ブロッコリーなど形も多様ですし。。。

DSCN4259.JPG 植物科学というか、生命科学にイノベーションというのが、もちろんあるべきとは思いますが、工業製品のように、パーツ取り替えのようなことができるわけではない。また、物理、数式で示せるような単純さもない。まさに、生命体という曖昧なものをどのようにコントロールするかということを、周りと共有して、発展させることが重要かなと。つい、先日も、同じようなことばを師匠の日向先生から頂いたことを思い出しました。自家不和合性のイノベーションといえば、CO2で自家不和合性が打破されるというのが、中西先生と日向先生によって見つけられて、40年を超えるのでしょうか。。。でも、その基礎科学というか、なぜ、それで打破されるのかということはわかっていません。これを解決するのも、残された渡辺の20年の研究期間の使命と実感した1日でした。


 わたなべしるす

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