東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

2011年8月の記事です。

集中力、持続力、そして。。。(8/16)

2011年8月16日 (火)

 今年のお盆休みは、土日が微妙に影響したこともあり、割と平常に近い。といっても、研究室はイネのおしべ(葯)などのサンプリングに追われる、「農繁期」である。数年ぶりに、時間が少しできたこともあり、イネの葯サンプリングを手伝ったが、老眼(?)ではないと思うが、結構厳しいものを感じた。いつも、アブラナのめしべ、葯のサンプリングでは、そんなことを感じたこともないのに。。。毎日、displayを見過ぎの生活をしているからであろうか。。。。

 そんなとき、やはり、若い学生さんたちの集中力とその持続力には感動する。午前中は水田でこれはというステージのイネを集めてきて、この猛暑の中で。。。午後から夜遅くまでサンプリングをしている。そういえば、渡辺自身も、学部の3年生の時に、イネの花粉、葯のサンプリングのアルバイトをしていた。その頃は、土日なしでも元気だったような。何ともいえず、若者の集中力と持続力に拍手を送りたい。

DSCN4685.JPG ただ、世の中に目を向けると、集中力が一瞬で切れるというのも目にする。それまでの集中力で、自分たちが遙かに有利だったものが、逆に相手方に、堰を切ったように流れがいってしまう。これではせっかくの成果が。。と思ってしまう。実験とか、研究とかだけではない、いつも見慣れた普通の自然現象にも、そうしたものがある。その逆転を生むものは何なのか、逆転させないようにするためには。そうしたことが、頭をよぎった。これからのというか、永遠の課題なのかもしれない。

 ただ、このサンプリング技術も、研究室で昔から伝承されている技術であり、それを絶やさないことも大切な持続力なのであろう。


 わたなべしるす

 PS. 偶然にも「平成23年度版 科学技術白書」のpdf版なるものを見つけた。ページの最後の方に、社会・国民に支持さえる科学技術というところで、「日本学術振興会賞」の一覧があり、渡辺の名前を見つけた。何ともいえず、うれしい限りであった。その前のページには、科学技術、グリーンイノベーション、ライフイノベーション、科学技術コミュニケーションなど、科学教育、研究、アウトリーチという普段の活動の一端を取り上げて頂いているような気がした。というか、labの方向性として、間違ってないのだと。思いを新たに、また、がんばろうと。。。13:00現在で、全国10位の暑さに負けずに。。。

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【研究室訪問】「科学者の卵養成講座」の発表会とそれに伴う高校生の来訪(8/13)

2011年8月14日 (日)

 東北大で行っている「科学者の卵養成講座」。今年で3年目です。年度の終わりには、その年の発展コース、エクステンドコースの発表会があります。3年目の終わりの発表会は、3/12でした。つまり、3/11の大地震の翌日。もちろん、開催できず、それを、5ヶ月遅れでしたが、8/13に行いました。発表会には、初年度の発展コースから、エクステンドコースになり、研究をしていた受講生も。とても懐かしい顔がそろい、また、震災依頼、あってない友達同士もいたようです。この会の開催もよかったのかなと。。。発表では、それぞれのポスターに多くの受講生との議論があり、サイエンスを通して交流できたのではと。

 終わったあとにも、多くの受講生の方々が相互に話をしたり、先生方と議論をしたり。ここで知り合った人たちが、次の世代の科学者として、共同研究を展開してほしいなと。また、この講義を通して、東北大で勉強したい、研究したいという方が多くいたのも、うれしい限りです。いつでもまた、ご相談ください。そうそう、帰り際に、1年間お世話になりましたと丁寧な挨拶をしてくれる受講生の方も。何ともいえず、うれしかったです。これからいろいろな人生が広がると思いますが、がんばってください。

 今回は、講義が2日連続であったこともあり、研究室を訪問してくれた受講生の方々も多くいました。写真は、前日に放射線の講義があったときに、物理の先生と理論物理の話をしていた、埼玉県立浦和第一女子高校の受講生の方々でした。研究室の施設、植物などを見て、大学の新しい一面を見てくれたようです。また、兄弟できていた、福島高校の受講生の方も。

DSCN0926.JPG みなさん、いつでも研究室訪問は歓迎ですので、いらしてください。

 最後になりましたが、暑い中参加してくれた受講生、その関係者、指導いただいた先生方、また、organizeに関係してきた多くの方々に感謝します。ありがとうございました。


 わたなべしるす

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【出前講義】スーパーサイエンスハイスクール平成23年度生徒研究発表会、分科会座長と講評者(8/11)

2011年8月12日 (金)

 SSHの運営指導委員を数多く仰せつかっていることもあり、初めて「全国大会」である、生徒研究発表会に、分科会座長と講評者ということで、参加し、多くの高校生などと交流しました。今年のSSHの採択校は140校を超えるとか。ダイコンコンソーシアムで多くの高校を存じ上げたり、出前講義で伺ったりしておりますが、未知なる領域、まさにawayという感じでした。

DSCN0913.JPG 午前の最初のセッションでは、大阪大の審良先生の特別講演がありました。お名前は伺っておりましたが、お話を聞いたのは初めて。アブラナ科植物の自家不和合性研究を行っていたときに、動物の免疫に関係するという、Toll受容体のことは、名称だけ覚えています。細胞外がleucine-rich repeat(LRR)だったような。植物の様々な受容体にも細胞外ドメインがLRRのものは多く、植物ホルモン・ブラシノライド、耐病性遺伝子、低分子ペプチド等、様々な現象に関連していたのを思い出しました。自家不和合性のreview articleの中で、細胞外ドメインの比較をしたものがあり、その中に、アブラナ科植物の自家不和合性の雌しべ因子・SRKのS-domainと比較して、Toll受容体が並べられた時期も。こんな場面でお話を伺えるとは。また、この講義で驚いたのは、あの著名な審良先生がとある遺伝子の研究をしていて、これなら「Nature」に掲載されるだろうと、論文を投稿しようとしていたら、競合相手に同じ研究内容を「Science」に掲載され、タッチの差で「Nature」に論文が載らなかった。。。。どこかで聞いたような。。渡辺も1999年の11月の最後の週の月曜日の朝に、自家不和合性の花粉因子のSP11を投稿できる状態にあったのが、前の週の金曜日のScienceにアメリカのグループが同じ遺伝子を見つけて、論文として掲載。。。。その月曜日が研究室中をパニックにしたのを思い出しました。世の中では同じようなことが起きるのだなと。。。できれば、繰り返したくない「悪夢」であったのは、いうまでもないのですが。。。。

 そのあとに昼前までの分科会では座長を仰せつかり、SSH・4校と海外からの招待高1校の座長を。運営側の配慮もあり、渡辺の専門に近い、「植物」の話が多かったのは幸いでしたが、最後の英語の発表、その座長はさすがに。。。プレゼンは時間をしっかり守り、また、質疑にもきちんと対応していたのは感動でした。また、多くの高校生から絶え間ない質問が会場から出たことも分科会が盛り上がった要因だったかと。それから、招待高1校の英語の発表に対して、英語で質問をした高校生も。自分自身が同じ頃、絶対に無理だったと。。。そう思いました。こうした科学を高校生時代にもできる今のこのシステムに感動でした。メモをとっていたわけではないですが、普段、植物の遺伝学をやっているものからすると、同じ実験区の反復実験、その実験材料の意味、実験の生物学的な意義をもう少し深く考えると、よりよい方向になるのではと思いました。発表の中に、研究室の卒業生の方の出身校もあり、その方のことで発表のあとにお話しできたのも、何よりでした。

 午後からは、参加校全体でのポスター発表。理数ですので、物理、化学、生物、地学、数学の様々な発表がありますが、発表内容も多岐に亘っており、また、地方色もあり、時間いっぱいまで議論をしたり、話を伺ったり、。いくつか気になったのは、実験というか、研究というか、それをそれとして純粋に楽しんでいるのは、すばらしいこと。では、それが将来の自分の進路、就職先、社会との関係という点があまり明確でないのは、せっかくのすばらしい研究が少し片手落ちのような気がしました。ぜひ、そうしたことも考えていただければと思います。

 個人的に気に入ったというか、興味深いというか、すごいポスター発表はいくつかありました。子供の頃、この時期は、カブトムシ取りが仕事でした。もちろん、セミ取りも。それをその地域の甲虫に限って採収し、分類して、標本にして、とてもきれいで、楽しめました。アブラナ科植物を使った実験もいくつかあり、お話しができました。発展が楽しみです。それから、震災関連のものがあったのも、衝撃的でした。津波が来る前のあとの写真を載せてあるところ、放射性物質の植物による吸収、いわゆる、phytoremediationの実験。簡単な機材で放射線が走ったあとを検出しているのは衝撃的でした。それよりも何よりも、現地、福島高校の校庭の放射能汚染状況の実態計測。細かいメッシュ観測をしており、グラウンドがわずかに傾斜している関係で、そちらの方に水が流れ、その方向に汚染の傾きが出ている。また、いわゆる、線量計によるマイクロシーベルト/hrという計測でなくて、単位面積、体積あたりの放射性物質の量、ベクレル、で示したdata。セシウム134, 137が確かにそこにあるということを示し、その量が、よく比較対照になる、チェルノブイリ原発事故の避難地域となった量とほぼ同レベル。福島の中通りの線量が高いといわれていますが、そこまでなのかと思うと、身近な場所だけに、どうすればよいのかという衝撃的なdataでした。もちろん、表土などを除去することはされると伺いましたが、それ以外の部分の除染は難しいと思いますし、先日も書きました、中山間地など手をつけることが難しいところも。。。。こんなdataをSSHの生徒さんが出したこともすごいですが、そんな環境にいることは果たしてどうしたものか、終わったあとも、かなり考えさせられました。。。。。。。。。。

DSCN0922.JPG こんな衝撃的なこともありましたが、また、来年度以降も何らかの形で、貢献できればと思った次第でした。来週は、鹿児島・錦江湾高校・SSHのダイコンコンソーシアムの会議です。こんどはより専門に近い話ができるのではと思います。昨年からの発展がどれくらいなのか。楽しみです。


 わたなべしるす

 PS. 先日、大きな地震はなかったと書いたのがよくなかったのか、3/12, 03:22に福島県沖でM6.0の地震とか。。。仙台も揺れたようです。不思議と、毎月、11日前後に揺れるのは、何か地球が生き物のように感じ得ないのは、渡辺だけでしょうか。。なお、研究室の改修敷いて頂いた実験台は、無事でした。ご配慮頂いた、研究科長、事務長をはじめとする多くの方々に、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

 帰りの電車で、渡辺が座長をしていたのを見かけられた兵庫県内の先生から、声をかけて頂き、出前講義の依頼も頂きました。また、より幅が広がればと思います。よろしくお願いいたします。

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ビフォー・アフター

2011年8月12日 (金)

先日、震災により壊れていた実験台が無事に修繕されました。


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引き出しが開かないなど、

壊れてしまっていた実験台は半日かけて撤去され、

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新しい実験台が組み立てられました。

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天井なども修繕され、実験台は元通りになりました。


新しい実験台で、これからも実験を頑張りましょう。


M1、前田


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3/11(金)、14:46から今日まで、その16(8/11)。

2011年8月11日 (木)

 前回のその15を記してから、1ヶ月ほど、震災についてお知らせする十分な時間がありませんでした。振り返って考えると、復旧とか、そういうことよりも、「原発被害の様々な食糧への影響拡大」というのが、key wordになるのではないでしょうか。農学部を卒業し、作物を育てることの大変さを学んできたものとしては、この拡大には、何とも言えず心を痛めたというか、「想定外」ということでは済まされないような範囲とも言える、日本の半分くらいが、ある意味、可能性があるようになったのではと危惧しいる次第です。最初は、牛の肥育用の稲わらへの放射性物質の付着というか、汚染というか。こうしたことが起きるだろうという警鐘が早期にあったということをテレビなどで聞きましたが、農学部出身ということもあり、結構こうしたことに敏感になっている割には、テレビなどで早期に流れなかったような。。。。。

DSCN4967.JPG この牛の問題に続いて、ここ最近は、主食の水稲への放射性セシウムの蓄積の問題が。。。。極早生の早場米の地域では、早速測定が始まっているとか。。。。爆発の直後には、キャベツ、ブロッコリー、ホウレンソウなどが畑に鋤き込まれているのを見て、何とも言えない思いでしたが、お米の胚乳部分にどれくらいのものが蓄積するのか、過去にも論文をひっくり返せば、dataがあるのではと思います。時間がなくて、また、そうした専門(植物栄養学、土壌肥料学等)でないことから、どうも苦手です。。。ただ、そうも行ってられないので、何とかfollowしながら、と思っています。放射性物質は、RI実験室でしか使わないという概念だったのが、こんな身近に迫ってくるとは。。放射性物質は、今回被害があった地域に広く拡散しているはずです。1年間、作物のサイクルを考えてみると、ムギだったり、冬作物だったり。。。。どこまで考えればよいのか、放射性物質が苦手な渡辺には、頭が痛いです。

 長期に考えるという点では、木材にも吸収しているはずです。そんな木材で建築などは無理でしょうし。。。椎茸などの原木も。。考えると果てしなく広がります。そういえば、腐葉土からも出ていたのを思い出します。想定外にならないように、対応したいと思いますし、こうした資材を使って、実験をするとき、低放射線量の植物を実験に使ったとき、どのような影響が出るのか、見ている形質に。あるいは、種子を介して次世代にどれくらい移るのか、それが実験の誤差を広げる要因になるのではないのか、考えるファクターが多くなったのは、頭を抱えます。こんな時に、いわゆる次世代シークエンサーのようなもので、こうした要因を排除できないものか、少しサイエンスの世界として考えたいものだと。。

 いずれ、秋祭りが豊作を祝うものだったような。たくさんの問題のないお米ができるのを切に祈る限りです。。。。。

 この1ヶ月を正確に記録にしているわけではないですが、比較的大きな地震があった時期とそうでなく、1日搖れを感じることなく終わる日が。。。。この違いは何なのだろうと、本当に不思議に思います。地震学、地学の先生から、地面の下は見えないのでというようなコメントを頂き、確かに見えないものは、。。。という気がするが、何とかならないものだろうか。気象関係のHPを見ていても、揺れる場所を見ていて、何かが見えるかというと。。。よくわからない。

 大型台風一過のあとには、ずいぶんと涼しかったというより、寒い日もあった。ここ数日は、また、夏が戻ってきたというか、十分すぎるくらい暑い。寒暖の差は、やっぱり体力を奪われ、震災以来の疲れが。。。この暑いという熱エネルギーをどうやってか貯めることができないのか。外に出ると、触るものすべてが暑い。今のこの工学力で何とかならないのか。もちろん、植物は、静かに「光合成」をして、少しずつであるが、デンプンとして貯めているわけであるが。。

DSCN3150.JPG そういえば、この間に、66回目の広島、長崎原爆の日があった。広島原爆の記念館には小学校での修学旅行で。長崎原爆の記念館には、ずいぶん後になってから伺ったのを思い出す。その中でのコメントに、「福島原発」があったのは、印象的であり、生涯忘れ得ぬ出来事になるような気がした。

 以前に実際の暦と体内時計というか、自分自身の暦があってないようなことを書いたが、暑さも手伝ってか、また、夏にあるであろうことがそれぞれ起き、テレビなどで見たおかげだろうか。戻ったような気がする。ただ、緊張の糸が切れないのか、切ろうとしないのか、それだけは何とかしたいものと思った、震災から5ヶ月であった。最後になったが、亡くなられた方々に、哀悼の意を表します。


 わたなべしるす

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