東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

2014年12月の記事です。

無菌播種したアツモリソウのその後。

2014年12月 7日 (日)

 こんにちは。農学部二年植物系の木幡です。秋も終わり、いよいよ本格的な冬が始まるこの折、体調管理に気をつけたいところです。さて、本年7月25日のこと、研究室の人にアドバイスをいいただきながらアツモリソウの無菌播種を行いましたが、このたび、そのアツモリソウについて目立った変化がありましたので報告いたします。少しおさらいをすると、アツモリソウはラン科アツモリソウ属の温帯の冷涼地を中心に自生する植物種で、日本国には数種類が分布します。ラン科の植物はみな胚乳が退化しているため、外部からの養分供給なしには自力で発芽できません。自然界では種子に進入してきた糸状菌の菌糸を分解することで養分を賄いますが、糖を含んだ無菌の人工培地を用いることでも発芽させることができます。これは、洋ランの育種業界では広く用いられている方法です。ラン科のアツモリソウにもこの方法を用いることができます。今回私は育種学上あまり意義を持たないにせよ異変種間の交配を行いました。どんな親を用いたのか。雌親側としては国内のアツモリソウ基変種であるCypripedium macranthos var. speciosum の中国産シノニム C. macranthum var. speciosumを、花粉親としては国産のホテイアツモリソウ C. macranthos var. hotei-atsumorianum Sadovskyを用いました。ちなみに雌雄逆でも受粉を行い、無菌播種操作を行いましたが、種子の発達が不完全だったようで、報告からは除外いたしました。播種から2か月間は10瓶のうち1つがコンタミしてしまったこと以外に肉眼的に大きな変化はありませんでした。   

141207-01.jpg          2014/07/25培養スタート。10瓶ありますがうち5本は除外したものです。  

141207-02.jpg 2014/08/18瓶の一つにコンタミが発生。発生率は1/10なので、良好な経過だと勝手に確信しています。

 変化が見られたのは播種から89日目。一つの瓶の培地表面中央付近に2㎜ほどの乳白色の塊が生じました<図1>。大腸菌のコロニーのようにも見えましたが、常時25℃付近の環境で3か月近く経過してからのコンタミ発生は考えにくいので、プロトコームと仮定しました。それから3週間ほどで、さらにこの塊は根茎様体(リゾーム)の特徴を持ち始めたので、植物体であると確信しました。ここからの成長は速く、わずか1週間ほどで根とバルブの区別ができるほどに分化が進みました。経過は以下の<図2>に示す通りです。

141207-03.jpg                <図1> 2014/10/21 初のプロトコーム発生。

141207-04.jpg             <図2> プロトコーム発生とリゾームの経時変化。

 ちなみに、同時進行でおなじくラン科のサワラン(Eleorchis japonica)も無菌播種したのですが、こちらはリゾーム期を経ることなくプロトコーム発生から1か月ほどで、シュートの発生を確認できました<図3>。サワランは日本の高層湿原に自生する湿生植物で、一般に湿生ランは無菌播種が容易と言われている通りの結果を示しました。

141207-05.png                     <図3> サワランの実生の経過。

 今回は、中間報告ということで、私自身手探りの培養であったにもかかわらず、興味深い結果が出ていることには驚きとともに感動を覚えています。今後も観察を続け、いずれまた報告をさせていただくと思いますが、そのときはまたよろしくおねがいします。




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【全学教育科目・展開ゼミ】メンター木幡君からのコメント、温室の野菜:現在の様子、二回目

2014年12月 6日 (土)

 こんにちは。今日はこの研究室の温室で栽培している野菜を前回(11/17)に引き続き紹介します。 温室で栽培中の野菜は根菜・葉菜ともに順調な生育期・収穫期を迎えています。その中でも特に注目したいのは、播種から2か月半、本格的な冬を迎える前に結球を始めてくれた白菜です(画像1)。このまま何も起こらず収穫を迎えたいところです。撮影後は結球期に向けての追肥をしました。結球性葉菜類の生育には肥料分の過不足は禁物です。肥料の不足ややりすぎはいずれの場合も葉が球になることを妨げてしまいます。キャベツや白菜を選択した人は、適切な施肥量を文献なり手加減なりで探ってみてください。

2014-12-02-GH-1.jpg             画像1:白菜の現在の様子。   

 キャベツ・ブロッコリーのグループの生育は相変わらず順調です(画像2)。キャベツは結球するかどうかが決め手。ブロッコリー&カリフラーは来春に期待です。この後、これらにも追肥しました。   

2014-12-02-GH-2.jpg            画像2:キャベツ・ブロッコリー(Brassica oleracea)のグループ、現在の様子。  

 そして、あまりこれまで紹介してこなかった3品、ネギ、パセリ、アイスプラントの様子です(画像3)。アイスプラントは今回誰も選択していなかったようなので割愛。ネギは生育初期の段階でいくつか溶けたようになってしまっていたものがありましたが、水はけのよい土で植えつけた後は順調に生育しています。基本的なことですが、幼若期の苗の過湿には注意ですね。また、パセリは遅いながらも、順調な生育をしているものと思われます。しかし、パセリはもともと根があまり強くない植物なので、植え替えのストレスからまだ回復しきっていないようにも見えます。今後も要観察です。

2014-12-02-GH-3.jpg             画像3:ネギ(中央下)、パセリ(左上)、アイスプラントの様子。  

 そして今回収穫したのは根菜ではミニダイコン(四季どり辛味大根/雪美人)、小かぶ(あまうま小かぶ/あやめ雪)、葉菜ではミズナ(京みぞれ)と少し適期を過ぎてしまったコマツナ(極楽天)です(画像4)。非結球性の葉菜類(コマツナ、ミズナ、ホウレンソウなど)は収穫適期が短いので、タイミングを見落とさないようにしましょう。野菜の栽培は種まきから収穫までです。いい生育をしたとしても収穫の適期を逃してしまっては意味がありません。

2014-12-02-GH-4.jpg             画像4:今回収穫したもの   

 ますます寒くなってきましたが、みなさん、自分の体にも、野菜たちにも気を付けてよい年末を過ごしてください。また、目立った変化があれば報告させてもらいます。"



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【全学教育科目・展開ゼミ】メンター木幡君からのコメント、アイスプラントの近況

2014年12月 6日 (土)

 こんにちは。農学部2年・メンターの木幡です。中間発表から3週間ほど経ち、ますます寒くなって参りましたが、皆さん選択の野菜の調子はいかがでしょうか。本日は私の栽培するアイスプラントの近況報告をします。11/14(金)の中間発表の段階では発芽し、子葉が出てから二週間経過したところでしたが、それから本日までの約3週間の間に本葉が展開し、植物体も一度はしっかりしてきました(画像1)。しかし、この期間にかなりの芽生えが立ち枯病にやられてしまいました(画像2)。  

2014-11-30-Ice-plant-1.jpg                  画像1:アイスプラントの近況   

2014-11-30-Ice-plant-2.jpg              画像2:立ち枯れ病にやられ倒れてしまった幼若苗   

 もともとアイスプラント自体は多肉植物の一種であるため、生育が遅いという特性を持つらしく、サボテンの栽培のような扱いをしようと考えておりましたが、低温乾燥を好むという性質も持つため、室内での栽培にはなかなか苦労しています。(高温のサボテン温室は使えないので...)  今回は、風通しの悪さに加え、植物体に合わない大きな鉢を用いたため土の乾燥が遅く、過湿にしてしまったことが立ち枯れの大きな原因だと考えられます。また、屋外にさらした無殺菌の土を用いたのも原因かもしれません。このままでは残り少ない苗も全滅する可能性があり、報告のネタを尽きさせるわけにはいかないので、新たに種子を購入しました。対策を重ね、次こそはうまく栽培してみたいと思います。

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【出前講義】鹿児島県立錦江湾高等学校・平成26年度コアSSH運営指導委員会第2部と「わくわく実験教室 in 市立科学館」(12/6)

2014年12月 6日 (土)

 仙台はこのところ、冬将軍に。。。昨日が初雪で、今朝は-2.6oCとか。。ちょうど寒さの底のようなときに、渡辺は東京へ。寒さにあわなかった分だけ、ちょっとluckyかなと。。。ただ、そのまま、鹿児島へ。この時期恒例の鹿児島県立錦江湾高等学校・コアSSH。今回は、東京でのイベントとの完全にoverlapして、2日間のコアSSH関連も最後の半日だけ。少し残念でしたが。。。仙台が寒いと言うだけでなく、鹿児島も寒いようで、数日前に雪が降ったとか。桜島の山頂付近が雪景色というのは、地元の方でも珍しいと。。。

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DSCN5372.JPG 1.5日参加できなかった分は、渡辺の座るべき机の上で、ピンチヒッターがいてくれたようです。いつも様に質問できなかった分、代わりにしっかり目をつけてくれていたと。そんな写真を参加されている先生から頂きました。ありがとうございました。十分に代打として機能してくれたのでは。。。

DSCF4837.JPG 伺った時間帯は、ちょうど「わくわく実験教室 in 市立科学館」。以前、ここで出前講義もしたような。その当時の方々とは、もちろん世代も変わりましたが、多くの机が用意されていましたが、どの机にたくさんの子供たちが。いろいろなものを作っていたようで、会場にいろいろなものが飛んだり、ぜひ、小春日和の暖かい日に外でやってみて下さい。

DSCF4896.JPG そのあとが「コアSSH運営指導委員会第2部」。渡辺が参加できなかったことと次年度に向けて、どの様な戦略で取り組むか。運営指導委員の先生方から、さらに高みを目指すためによいideaがずいぶん出てきました。さらに楽しみになってきました。なにより、このコアSSHに参画している高校のSSHでの活躍は目覚ましいものがありますので。。。最後になりましたが、今回の企画でお世話になりました教頭先生、樋ノ口先生、河野先生をはじめとする多くの方々にこの場を借りて、お礼申し上げます。ありがとうございました。次年度のさらなる発展を祈念しております。


 わたなべしるす

 PS. 鹿児島と言えば、路面電車。広告を書いた電車を発見してびっくり。「山形県鶴岡市」と。。3月に研究室見学に来る鶴岡南高校があるところであり、渡辺の師匠である日向先生のふるさと。。。こんなところでお目にかかれるとは。。。不思議なご縁なのだなと。。。

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物質の三態、小さい頃から、考える(12/4)

2014年12月 4日 (木)

 先週の金曜日、愛媛県今治市立常盤小学校での研究授業とシンポジウム。小学校の時に習ったのか、どこで習ったのか、覚えてないが、「物質の三態」。気体、液体、固体。こんな言葉を習ったのは、小学校のような気がするので、物質の三態という言葉もあったような気がする。固体がいきなり、気体になるのが、昇華だったような。毛糸のセーターなどを保存する「なんとか、というか、なんだったか、ここで、パラジクロロベンゼン」かなと、Wikipediaを調べて、ベンゼン環に塩素が2つ結合する、それも、オルトの位置に。オルト、メタ、パラ、というのは、高校の化学の時間に学んだ単語のような。Wikipediaによると、防虫剤だと。メタ、パラの位置で何とかというような問題があったと思うが、その当たりは、思い出せない。液体が気体になれば、気化。そういえば、沸点が違うものを混ぜて、分留実験をしていた、中学校では。この時、使っていたのは、ガスバーナー。一方、小学校で沸騰実験をしていたときは、なんと、アルコールランプでなくて、カセット式ガスコンロ。。。。ちょっとかなり驚き。昔と今でこんなに違うのだというのをそういえば、この前、テレビでもやっていて。。。なんでも、アルコールをこぼすと危険だから。。。。たしかに。。。ただ、火を使うことを覚えたHomo sapiensは、その危険さを理解するのも大事ではないかと。。。。そういえば、クリーンベンチでピンセット、メスなどを滅菌するために、70%(80%??)アルコールを使うが、ガスバーナーで温度を上げすぎると、アルコールに引火するときが。。。というか、火がついたのではなくて、実験をしている人がまちがって、火をつけてしまったわけであるが。。。ついたのでなく、つけてしまった。この違いと危険を理解する、どちらも大事な気がする。加熱しすぎて、突沸するのを防ぐために入れるのが「沸騰石」。そんなものを入れていたのを、小学校で授業を拝見して、久しぶりに思い出した。小学校の時、結構、おっかなびっくりで実験をしていた方なので、意外と、突沸しなかった気がする。。。ところが、大学の研究室で、アガロースゲルを電子レンジで加熱していて、ちょっと目を離すと。。。。突沸。何度痛い目に遭ったか。。。そのうち、phageを使った実験をしていて、top agaroseというに懸濁して、まいていたが、その時にも。。。そんな時に、沸騰石という概念はなかった。。。というか、思い出すこともなかった。ちょうど、その研究授業から1 week。味噌汁などを温め直していて、突沸というニュースが。。。ただ、そのニュースでいっていたこと。「お料理に愛情を持って、接すること」だったような。ながら族なので、言葉をちゃんと書き留めてないので。。。沸騰石を入れて料理をするというのもありかも知れないし、アガロースゲルも。ただ、やっぱり、ちゃんと見ていること。そういえば、師匠の日向先生の言葉に「火をつけたら、そのそばにいてみていること!!」というのがあったような。。。お料理だけでなく、実験にも石でなくて、愛情をと言うのが大事だと思う。研究全般と言うべきなのだろうか。。。

DSCN5298.JPG 今治で理科専科の先生がいて、自然科学教室があって、ちゃんと理科を教えてもらったのに「沸騰石」ひとつ、覚えてないというか、思い出せないというか。。。。先生の問題でなくて、児童生徒の問題というか、渡辺の問題のような。。。身の回りに、小学校の教科書に出てくるような現象がいっぱいあるのに、気がついていない。それくらい、身の回りの不思議に気がつくのが難しいのかも知れない。植物、それも作物というか、アブラナ科なら、すぐに反応するのに。。。「突沸」にも気がつかない。。。何とも皮肉な。。。もう少し領域融合というか、遺伝学だけでなくて、その周辺のことも。しっかりと。小さい頃から、ちゃんと学ぶことと言うか、考えること、一連のこととして、教育することは、大事だなと。どんな分野でも。。。

 そんな風に、身の回りに注意を払って何が起きているのか、考えること。そんなことを日向先生はいいたかったのだろう。確かに、毎回の実験では、いろいろなことが起きる。一本道ではない。たとえば、自分の花粉を自分の雌しべの上にのせても、その日の環境条件の違いによるのだろう、蛍光顕微鏡で観察すると、見える花粉の数だったり、状態は完全に同じにはならない。生物の反応だからと言えば、そうかも知れないが。だから、物理、化学をやっている方からは、生物は。。。といわれるとか。そんないろいろな考え方を柔軟に持って、そんないろいろな考え方を教えてくれたのは、高校時代の数学の長井先生。基礎を大事にして、柔軟に最終地点というか、解答というか、そこまで導くと言うか、考える。ただ、最近の数学の問題を見ていると、分厚い解答があるというのは、どうなのかと、いつも書いていた。また、解答から考えるというのもどうかと。それと同じというか、それとはまたちがう不思議な問題をふと見つけた。間違い探し??これだと一本道で、いろいろな考えではないような。。。。また「????????」がふえた。。

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 わたなべしるす

 PS. お知らせに書いた「はやぶさ2」の打ち上げ、昨日、無事に、宇宙へ。ほっとしました。パブリックビューイングが延長になったことのアナウンスができず、。。申し訳ありません。


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