脂肪酸合成は、fatty acid synthase (FAS)によって行われ、初期反応の段階ではアセチルCo-Aが基質として用いられており、malonyl-acyl carrier protein (ACP)が伸長反応を触媒する。動物のFASとは異なり、植物のFASは単一機能の酵素からなる複合体で3-ketoacyl-ACP synthase (KAS), 3-ketoacyl-ACP reductase, 3-hydroxyacyl-ACP dehydrase, enoyl-ACP reductaseがこれに含まれています。FASはステアリン酸やパルミチン酸を合成しdiacylglycerol, triacylglycerol, sphingomyelin, ceramideなどのglycerolipidやphospholipidの前駆体として用いられる。また、waxなどの超長鎖脂肪酸やジャスモン酸の前駆体としても用いられるため、植物の生育過程で重要な役割を果たしています。
3-ketoacyl-ACP synthase (KAS)はクライゼン縮合反応を触媒する酵素である。KASタンパク質はその機能によってKAS I, KAS II, KAS IIIの3つのクラスターに分類されます。KAS III は脂肪酸合成の初期ステップであるacyl-CoA とmalonyl-ACPの縮合反応を担っており、 KAS I はステアリン酸までの炭素鎖の伸長反応、KAS IIはステアリン酸からパルミチン酸への炭素鎖の伸長反応を担っています。
KASII遺伝子破壊系統では、球状胚で致死がみられました。KASIIがプラスチドにおけるステアリン酸からパルミチン酸への伸長反応を担っていることから、球状胚から心臓型胚への移行には、ステアリン酸と正常なクロロプラストの分化が必要であることを明らかにしました。
この研究内容をGenes Genet. Syst. (2008) 83: 143-152に発表しました。また、発表内容を示す図表が掲載雑誌の表紙に取り上げられました。
http://dx.doi.org/10.1266/ggs.83.143
わたなべ
2008年5月の記事です。
クライゼン縮合反応を触媒する酵素をコードするKASII遺伝子の機能解明
2008年5月 5日 (月)