東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

News Release

2010年6月の記事です。

【研究成果】イネ耐冷性遺伝子の網羅的探索と解析(6/23一部改変)

2010年6月17日 (木)

 東北大に異動するまでは、アブラナ科植物の自家不和合性とミヤコグサを利用した生殖器官特異的遺伝子の解析が主でした。仙台にもどって、イネも材料に加えて、これまでにもいくつかの論文を記してきました。仙台・東北とイネとの関係は、耐冷性の強いイネの育成との戦いの歴史だったのかもしれません。渡辺の所属している現在の研究室をたどると「農学研究所」になり、その設立の大きな柱は耐冷性の強いイネの育成基盤構築と安定的食糧生産と聞いています。そんなこともあり、仙台への異動を機にこの実験を始めました。

DSCN2859.JPG 研究には、宮城県「古川農業試験場」の全面的サポートを頂きました。そこには冷水掛け流し圃場があり、その評価システムは学生時代、助手時代から見ていて、大学では再現できない現場を再現できるまさに、「最新鋭」の設備というものでした。使った品種もその試験場が育成した「ササニシキ」、「ひとめぼれ」であり、ササニシキから、ひとめぼれへの品種転換が起きたのも、1993年の大冷害が大きな契機となりました。1993年には、農学部の助手時代であり、その冷害のすごさをまざまざと見せつけられ、食事の時に、indica米が出たことも記憶の彼方に残っていました。そんな、耐冷性の大きく異なる品種間の形態的差異を明らかにし、遺伝子発現の差異を利用して、その違いを染色体上にmappingし、既存の耐冷性QTLなどと比較することで、耐冷性の候補遺伝子を抽出しました。(Oda et al. (2010) Genes Genet. Syst., 85: 107-120)。この論文は、pdfを freeでdownloadできるので、興味のある方はぜひ、ごらんいただければと思います。

アワ1.jpg また、生命科学研究科の HPにも関連記事を掲載しているので、ぜひ、ご覧ください。


  この候補遺伝子を有効利用して、耐冷性分子メカニズムの全体を今後明らかにしたいと思っております。

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わたなべしるす



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【研究成果】アブラナ科植物における新規自家和合性系統の探索と遺伝学的解析(6/23一部改変)

2010年6月16日 (水)

 アブラナ科植物の自家不和合性を研究して、20年以上になり、最近では、シロイヌナズナを使った解析を報告しました。しかしながら、その間に自家不和合性の自他識別を制御しているS遺伝子の実体解明が中心でした。様々な研究分野での研究材料に重要なのは、「変異体解析」です。これまで様々な材料について、網羅的に自家和合性の探索・解析は40年以上間に行われているが、その時点ではS遺伝子の実体も分からず、今や、その材料もない。

DSC_1617.JPG そこで、アブラナ科植物であるBrassica rapaを材料として、様々な遺伝資源から自家和合性系統を探索し、遺伝子発現、遺伝様式、どの染色体上の遺伝子が寄与しているかなどを網羅的に解析しました。この研究成果を共同研究を行い、国際誌Genes Genet. Syst.に発表しました(Isokawa et al. (2010) Genes Genet. Syst., 85: 78-96)。この論文は、pdfをfreeでdownloadできるので、興味のある方はぜひ、ごらんいただければと思います。

DSCN4153.JPG この研究は、岩手大学で研究を行っていた時代に始めたもので、10年近くかかった研究であり、ここにまとめることができたことに、研究を支えてくれた皆さんに感謝したいと思います。

 また、生命科学研究科の HPにも関連記事を掲載しているので、ぜひ、ご覧ください。

  この遺伝資源を有効利用して、自家不和合性認識反応の全体を今後明らかにしたいと思っております。


わたなべしるす

PS. この研究が評価され、本論文がつづられたNo. 2の冊子の表紙に研究材料のB. rapaの写真を取り上げていただきました。感謝。

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【研究成果・プロジェクトHPへの掲載】5/11発表のPNASの論文が、農水プロジェクトHPに掲載(6/10)

2010年6月13日 (日)

 高等植物の高温障害で起きる雄性不稔を植物ホルモン・オーキシン処理で回復、米国科学アカデミー紀要「PNAS」5月11日号に掲載 (生命科学・東谷研との共同研究)ということをお知らせしました。この研究内容は、これまでにも取り上げた「基礎研究」を「応用研究」へという、「死の谷」を超えるという点では、コロンブスの卵とも言える、画期的研究・発見でした。そのこともあり、多くの新聞紙上に取り上げて頂きました

DSCN4268.JPG そんな中、新農業展開ゲノムプロジェクトHPである「イネゲノムと未来 - 未来を切り拓くお米のチカラ - 」の「ここに注目」という項目に取り上げて頂きました。このページはまさに基礎と応用をつなげるようなページであり、高い評価をされたものと思っております。また、経常的なHPであることから、いつでもご覧頂けるのは、うれしい限りです。お時間の許す範囲で、ごらんいただければと思います。

DSCN4271.JPGわたなべしるす


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【研究成果】セルロース・カロース合成の鍵を握るUGPase遺伝子の機能を逆遺伝学的手法で解明(6/23一部改変)

2010年6月12日 (土)

 高等植物の生殖形質を遺伝学、分子生物学的に解剖するために、2002年からmicroarrayと生殖器官をステージ別に分けることによって、イネ、ミヤコグサ、シロイヌナズナなど、いくつかの論文を発表してきました。こうした基盤の研究で発見した生殖器官特異的遺伝子の機能解明の一貫して、いくつかの論文を発表してきましたが、今回は生殖において重要なカロース合成の鍵を握るUGPase遺伝子の栄養生長から生殖生長の全体でどのように機能しているかを、国内外の研究者と共同研究を行い、国際誌Plant Cell Physiol. (Impact factor 3.5)に発表しました。

RIMG0441.jpg これまでにも多くの生物でUGPaseに関する研究がありましたが、高等植物の場合、シロイヌナズナの写真、イネなどでは、2つのhomologousがあることから、double mutantを作るなど、解析に工夫が必要でした。事実、1つの遺伝子を破壊しただけでは、これといった表現型が現れませんでしたが、double mutantにすることで、植物の形態は小さくなり、雄性不稔が観察されました。雄性不稔は、tertard stageでのカロース形成が起きないために、その後、花粉発達が異常になりました。また、形態が小さくなるのは、細胞サイズが小さくなることが原因でした。これらの異常は、遺伝子相補により回復しますが、興味深いことに、形態異常は、Sucroseの添加で回復しますが、雄性不稔は回復されず、UDP-glucoseでないとだめでした (Park et al. (2010) Plant Cell Physiol. 51: 981-996)。同論文は、以下のURLにあるので、参考にして頂きたい。

http://pcp.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/51/6/981?etoc

 このような糖代謝という新しい研究を展開できたのも大阪大学大学院理学研究科の石水博士との共同研究のおかげです。今後も、新たな展開をできればと思っております。

RIMG0438.jpg また、生命科学研究科のHPにも関連記事を掲載しているので、ぜひ、ご覧ください。

  生殖ステージには様々な要因が関係しており、遺伝学だけでなく、関連分野との融合の重要性を実感したのでした。


わたなべしるす


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