東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

News Release

研究成果:イネの花粉・タペート細胞の網羅的遺伝子発現プロファイル決定

2008年10月16日

イネはアジアを中心とした数億の民の食糧であるとともに、近年はバイオエタノール、バイオマテリアルへの利用の可能性も示唆され、応用度の高いモデル植物といえる。花粉発達は、花粉自身の遺伝子発現とその周りにあるフィーダー細胞であるタペート細胞の同調的な遺伝子発現が重要とされてきたが、植物細胞から、その両者を独立に単離することが、困難であったことから、葯という、全体での遺伝子発現が明らかになっているだけであった。

今回は、当分野の諏訪部、藤岡、金子、宮野、増子による実験、解析を元に、科学研究費・特定領域研究「植物ゲノム障壁」の支援班と数研究室との共同研究により、減数分裂期から、三核期までの葯をLaser Microdissectionで、小胞子/花粉とタペート細胞を切り出し、44K-microarrayにより、遺伝子発現プロファイリングを行った。新規な細胞、ステージ特異的な遺伝子が多く発見できただけでなく、それまで、小胞子の発達とタペート細胞の発達は、関連があるものの、両者で同じ遺伝子が発現していることは予想されていなかったのが、発育初期には、かなりの遺伝子が、両者で同調していることを新規に発見した。このデータを基盤として、花粉の発達に必要ない遺伝子、その機能が近い将来決定できるのではないかと期待している。また、本分野で行っている他の研究とリンクさせることで、さらなる発展を考えている。

この一連の内容は、Suwabe et al. (2008) Plant Cell Physiol. 49: 1407-1416、Hobo et al. (2008) Plant Cell Physiol. 49: 1417-1428という、2つの論文として発表した。本論文は、pdfのdownloadがfreeとなっているので、以下のsiteから、ぜひごらん頂きたい。

また、この論文を含めて、Plant Cell Phyisol. 49(10)には、植物生殖関連の特集号が掲載されており、その編集には渡辺が担当し、Editorialを執筆している(Watanabe (2008) Plant Cell Physiol. 49: 1404-1406)。あわせてごらんいただければ、幸いである。

なお、特集号の巻頭を飾ったこと、この研究が植物生殖研究に大きなインパクトを与えたことから、10月号のPlant Cell Phyisol. の表紙を飾っている。

以上の論文は以下のリンクから是非ご覧ください。

論文URL:
Watanabe (2008):http://pcp.oxfordjournals.org/cgi/content/full/49/10/1404
Suwabe et al. (2008):http://pcp.oxfordjournals.org/cgi/content/full/49/10/1407
Hobo et al. (2008):http://pcp.oxfordjournals.org/cgi/content/full/49/10/1417

また、本論文が掲載されているPlant Cell Phyisol. 49(10)が「植物生殖」の特集号であり、その中に掲載されているというプレス発表も出ております。あわせてご覧ください。

http://www.atpress.ne.jp/view/9422
http://cobs.jp/press/history/2008/10/-plant-cell-physiology-200810.html

それから、本研究科のweb siteのtop pageにも公式記事が記載されている。
あわせてご覧ください。

http://www.lifesci.tohoku.ac.jp/kenkyuu/花粉とタペート細胞をlmd法で分離し、発育ステー

最近、植物生理学会のweb siteに、今回の論文発表に関する表紙の説明が掲載されたので、あわせてご覧ください。

http://www.jspp.org/17hiroba/photo_gallery/pcp/49-10/49-10.html

わたなべしるす