東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

News Release

【研究成果】セルロース・カロース合成の鍵を握るUGPase遺伝子の機能を逆遺伝学的手法で解明(6/23一部改変)

2010年6月12日

 高等植物の生殖形質を遺伝学、分子生物学的に解剖するために、2002年からmicroarrayと生殖器官をステージ別に分けることによって、イネ、ミヤコグサ、シロイヌナズナなど、いくつかの論文を発表してきました。こうした基盤の研究で発見した生殖器官特異的遺伝子の機能解明の一貫して、いくつかの論文を発表してきましたが、今回は生殖において重要なカロース合成の鍵を握るUGPase遺伝子の栄養生長から生殖生長の全体でどのように機能しているかを、国内外の研究者と共同研究を行い、国際誌Plant Cell Physiol. (Impact factor 3.5)に発表しました。

RIMG0441.jpg これまでにも多くの生物でUGPaseに関する研究がありましたが、高等植物の場合、シロイヌナズナの写真、イネなどでは、2つのhomologousがあることから、double mutantを作るなど、解析に工夫が必要でした。事実、1つの遺伝子を破壊しただけでは、これといった表現型が現れませんでしたが、double mutantにすることで、植物の形態は小さくなり、雄性不稔が観察されました。雄性不稔は、tertard stageでのカロース形成が起きないために、その後、花粉発達が異常になりました。また、形態が小さくなるのは、細胞サイズが小さくなることが原因でした。これらの異常は、遺伝子相補により回復しますが、興味深いことに、形態異常は、Sucroseの添加で回復しますが、雄性不稔は回復されず、UDP-glucoseでないとだめでした (Park et al. (2010) Plant Cell Physiol. 51: 981-996)。同論文は、以下のURLにあるので、参考にして頂きたい。

http://pcp.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/51/6/981?etoc

 このような糖代謝という新しい研究を展開できたのも大阪大学大学院理学研究科の石水博士との共同研究のおかげです。今後も、新たな展開をできればと思っております。

RIMG0438.jpg また、生命科学研究科のHPにも関連記事を掲載しているので、ぜひ、ご覧ください。

  生殖ステージには様々な要因が関係しており、遺伝学だけでなく、関連分野との融合の重要性を実感したのでした。


わたなべしるす