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雑種強勢(ヘテローシス)の研究成果がPNASに掲載されました

新潟大学の藤本龍助教らにより雑種形成(ヘテローシス)の分子機構の一つが解明され、4月9日付けPNASオンライン版に掲載されました。


PNASのURL: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22493265


雑種強勢とは、同一種内のある特定の組合せの両親間の交雑により得られたF1雑種個体が、両親の特性よりも優れた形質を示す現象です。この現象は、動植物の育種改良 (収量増加)に重要な遺伝現象で、品種育成に広く利用されています。雑種強勢の現象は、100年以上も前に発見されていますが、未だ、動植物で、雑種機構の分子機構の共通理解には到っていません。

 雑種強勢はモデル植物のシロイヌナズナでも見られ、Col系統とC24系統のF1雑種では、図1に示したように、植物体が大きくなることが分かっています。本研究では、雑種強勢の分子機構を解明する為に、シロイヌナズナのCol系統、C24系統、及びF1雑種(C24×Col)を用いて、詳細な表現型の解析及び、ゲノムワイドな転写解析を行いました。雑種強勢は、生育初期 (播種後4日後)で見られ、コチレドンの葉面積が増加 (細胞サイズが増加)します。また、播種後4日後のステージでは、クロロフィル合成や、光合成に関与する遺伝子の発現レベルが上昇していました。単位面積あたりの光合成量は、両親系統とF1雑種で差が見られませんでしたが、F1雑種では全ての葉において、葉面積が両親系統よりも大きいことから、『葉あたりの光合成量』はF1雑種の方が大きくなります。このことから、本研究では、生育後期の顕著な雑種強勢には、生育初期の葉面積の増加に伴った、『合計の光合成量の増加』が生育に従い増幅されることが重要である可能性を示しました。生育初期に光合成を化学薬剤で阻害した場合、雑種強勢が見られなくなることからも、上記の可能性が支持されました (2)。この成果を元に、生育初期にF1雑種で葉面積が増加する機構を解明するべく実験を進めると伴に、本領域では、同じアブラナ科植物であるハクサイの雑種強勢の研究を同時に進めることで、雑種強勢の分子機構を複合的に研究していきたいと思います。



藤本さん図.jpg

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