文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究」
研究成果がNature Communicationsに掲載されました。
本研究は、成長ホルモンであるジベレリン(20世紀の作物増収を引き起こした「緑の革命」に利用されたホルモン)が、植物進化の過程でどのように出現し、つかわれるようになったかを明らかにすることを目的としました。私たちの以前の研究から、ジベレリンは植物の生長や生殖を制御すると知られていたましたが、約4.5億年前に出現したコケ植物には存在せず、その後に誕生したシダ植物で初めて使われるようになったと考えられていました。今回、私たちはシダ、コケ、イネの胞子(イネでは花粉)が出来る生殖過程を詳細に調べたところ、この過程にはこの3つの植物で非常に似ているが、イネとシダはこの過程のスイッチを入れるためにジベレリンが必要であるのに対し、コケ植物はジベレリンなしでスイッチが入ることを明らかにしました。この結果は、本来ジベレリンはコケ植物に既に存在した胞子・花粉の生殖システムを促すスイッチとして、後のシダ植物グループの誕生に伴って登場したことを示しており、植物ホルモンが植物進化の過程でどの様に出現し、つかわれるようになったかが解明されました。