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研究経過報告|新学術領域|ゲノム・遺伝子相関

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2012年6月の記事を表示しています

Plant Morphology誌にinvited reviewが掲載されました

この度、日本植物形態学会の学会誌に、シロイヌナズナの胚発生についての和文総説を掲載していただきました。

Plant Morphology vol. 24 pp. 89-97
シロイヌナズナの頂端--基部軸形成を担うWRKY2-WOX8転写因子カスケード

これは、昨年9月に頂きました同学会奨励賞の受賞者ミニレビューとして掲載されたものです。私がこれまでに進めてきた胚発生研究を中心にまとめましたので、本新学術領域で採択されたテーマの背景を網羅した構成となっています。
まだオンラインでは公開されていませんが、いずれ以下のサイトで閲覧できるようになりますので、是非ご一読ください。

https://www.jstage.jst.go.jp/browse/plmorphol/

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アウトリーチ活動

2012613日(水)、山元は公益財団法人東北活性化研究センターが主催する出前講座"ユニバーサイエンス"の講師として山形県立山形北高等学校を訪れ、理系クラスの2年生70余名を対象に、約1時間にわたり「性行動を生み出す脳と遺伝子のしくみ」と題して講演した。ショウジョウバエを材料に展開しているsatori変異体の最近の成果を紹介した後、ヒトのフェロモンへと話を広げ、たびたび笑いも取りながらなごやかに時を過ごした。講演後は数名の生徒から質問も出て、充実したひとときであった。

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カメ類には、温度依存的な性決定様式と遺伝的な性決定様式が存在し、また、遺伝的な性決定を行う種には雄ヘテロ型(XY型)と雌ヘテロ型(ZW型)の性染色体を持つ種が共存するため、カメ類は性染色体や性決定様式の進化を明らかにするうえで非常に興味深い研究対象です。

我々は、ホオジロクロガメ(Siebenrockiella crassicollis)がもつ分化型のXY染色体に着目し、染色体ペインティングと遺伝子マッピングによって性染色体の遺伝連鎖群を同定し、遺伝子オーダーの比較によってX-Y染色体間に生じた構造変化を調べました。その結果、S. crassicollisX染色体の連鎖群はニワトリの5番染色体と相同であり、その遺伝子オーダーにも違いはなく、25千万年以上にわたり両者の染色体構造に変化が生じていないことがわかりました。また、X-Y染色体間の遺伝子オーダー、ならびに染色体を構築する多様なヘテロクロマチンの分布を調べた結果、S. crassicollisXY染色体は性染色体分化の初期段階にあり、Y染色体において動原体の再配置(repositioning)が生じたことが示唆されました。これらの結果は、遺伝的性決定様式を獲得した後の性染色体分化過程を解明するうえで重要な情報を提供するものです。

 

Kawagoshi, T., Nishida, C. and Matsuda, Y. (2012) The origin and differentiation process of X and Y chromosomes of the black marsh turtle (Siebenrockiella crassicollis, Geoemydidae, Testudines). Chromosome Research 20: 95-110.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22183803

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研究成果がCellに掲載されました

 キイロショウジョウバエのfruitless遺伝子は、神経系に性差を作り出す主要因子であり、それを通じて行動の性差を生み出している。この遺伝子の産物であるFruitlessタンパク質はBTB-Zn-fingerファミリーに属し、雌の神経系には存在せず、雄の神経系の約2000個のニューロンに発現している。転写制御に関わることが推定されるものの、その作用機構はこれまで不明であった。今回、Fruitlessタンパク質が転写補助因子のBonus (TIF1s)を介して染色体上の標的サイト約100ヶ所にHDAC1またはHP1aを動員し、クロマチン状態を変化させることによってニューロンの性差を生み出すことを明らかにした。注目すべきことに、HDAC1Fruitlessの持つ雄化作用をサポートするのに対し、HP1aはこれに拮抗して脱雄化をもたらす。これらの因子を操作した際、単一ニューロンレベルでは、「性の中間状態」は認められず、「雄型ニューロン」と「雌型ニューロン」の割合が変化した。Fruitlessタンパク質は、その存否によってニューロンの性を転換するスイッチとして機能すると考えられる。

 

Ito, H., Sato, K., Koganezawa, M., Ote, M., Matsumoto, K., Hama, C. and Yamamoto, D. (2012) Fruitless recruits two antagonistic chromatin factors to establish single-neuron sexual dimorphism. Cell 149, 1327-1338.

 

図:唾腺染色体の免疫組織化学染色によってFruitless, Bonus, HP1aの局在を調べたもの


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