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研究経過報告|新学術領域|ゲノム・遺伝子相関

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2013年6月の記事を表示しています

総説がJ Applied Ecologyに出版されました。

人為的であれ自然であれ、環境の変化に対して、どのように生態系の機能を保つかというのは、生態系から大きな恩恵を得ている我々人間社会にとって重要な課題です。本総説内で北野は、生物の進化研究の重要性に関する部分を執筆担当しました。

ゲノム遺伝子相関領域では、近縁種間や多種間等の様々な相関現象を扱います。従って、ゲノム遺伝子相関の成果は、広い意味で生物多様性の維持や生態系マネージメントに役立つことを日々期待しております。

Tomimatsu et al. (2013). Sustaining ecosystem functions in a changing world: a call for an integrated approach. J Applied Ecol. in press

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1365-2664.12116/pdf

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 東南アジア熱帯雨林では、フタバガキ科などの数百種もの樹木が、数年に一度、不規則な間隔で一斉に同調して開花します(写真)。しかしながら、なぜこのような大規模な開花が誘導されるのか、その仕組みについては長らく謎とされてきました。そのため一斉開花は、熱帯生物学で最も壮大でミステリアスな現象と言われ、世界中の研究者の注目を集めてきました。開花誘導の仕組みについては、乾燥、低温、日照といった環境要因に加え、栄養蓄積量などの内部要因が開花を引き起こすとの説がこれまでに提唱され、長く論争が続いてきました。今回我々は、2009年にボルネオ島ランビル国立公園で起きた一斉開花の際に、フタバガキ科樹木Shorea beccariana(写真)の網羅的発現解析を行い、遺伝子発現の観点からこれらの仮説の検証を行いました。
 
 50mにもなる高木からのサンプル採集は、国立環境研究所の竹内やよい博士、筑波大学の田中健太博士らとの共同研究により、日本の研究グループによって設置された高さ80mを越えるクレーン(写真)を用いることで可能になりました。非モデル生物であるShorea beccarianaの発現解析にはRoche 454 次世代シークエンサーを用い、一斉開花をはさむ4時点のサンプル間で1128遺伝子の発現が変わっていることを確認しました。花芽形成に関わる遺伝子に注目すると、その翻訳産物が花芽形成を誘導する植物ホルモン「フロリゲン」であるFT (FLOWERING LOCUS T)遺伝子のホモログの発現が、一斉開花の約3週間前の雨量が非常に少なくなる時期を境に上昇していることがわかりました。またFT遺伝子を直接抑制し、花芽形成を抑えるMADSボックス遺伝子SVP (SHORT VEGETATIVE PHASE)のホモログの発現が同様に雨量の少なくなる時期を境に低下していました。これらの遺伝子をシロイヌナズナで強制発現したところ、それぞれ花芽形成時期を促進させる、あるいは遅延させるといった表現型を引き起こしたことから、花芽形成に関わる機能を保存しているものと考えられます。さらに、1128遺伝子をシロイヌナズナの発現データベースと比較したところ、長期の乾燥で発現変化する遺伝子の多くが、この雨量の少なくなる時期に発現変化していることがわかりました。これらの結果は、植物が実際に乾燥を感じ、その後、花芽形成に関わる遺伝子の発現が変化を始めることを示唆しており、「乾燥が一斉開花を誘導する」という仮説を支持します。東南アジア熱帯雨林では、地球環境変動の結果、より頻繁に雨量の少ない時期が生じることが予想されています。このことは、一斉開花の規模、頻度を変化させる可能性があり、今後注意深い観察が必要になってくると考えられます。これまで、一斉開花時期の予測の難しさから、たくさんの種子を計画的に得ることができず、このことが熱帯雨林再生の一つの障害となっていました。しかしながら、本研究を応用し、発現解析によって開花、種子形成時期の予測ができるようになると、これらの保全の問題の解決にも貢献できる可能性があると期待しています。

Kobayashi, M.J., Takeuchi, Y., Kenta, T., Kume, T., Diway, B., Shimizu, K.K. (2013) Mass flowering of the tropical tree Shorea beccariana was preceded by expression changes in flowering and drought-responsive genes.
Molecular Ecology, Early View
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/mec.12344/full

Shorea_beccariana.jpeg

canopy_during_general_flowering.jpeg

CraneBorneo.jpeg


(班友 チューリッヒ大学 清水健太郎)

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非モデル作物のオミックス研究の展開

カキのトランスクリプトームを用いた研究成果が掲載されました。
H. Itamura, A. Nakatsuka, N. Sun, T. Esumi, A. Yamada, K. Yano, T.Nakagawa (2013) Effect of ascorbate on prolonging shelf life of persimmon (Diospyros kaki Thunb.) fruit. Acta Hortic., 989: 131-138.

矢野班では、多くの植物種のオミックス情報の比較解析を実施しており、これらのオミックス情報の蓄積はゲノム・遺伝子相関を明らかにする上で、重要な解析基盤となります。

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研究成果がAnnals Bot.に掲載されました。

 今回の成果は、インセスト回避のモデルとも言える、アブラナ科植物の自家不和合性の花粉動態を自己花粉と非自己花粉で、比較したものです。タイムラプスの手法を使い、1つの乳頭細胞にほぼ1つの花粉が載っている状態で、柱頭全体では、100個程度の花粉があるという状況下で、個別に花粉動態を評価したものです。S対立遺伝子系統という遺伝的背景の部分とlinkさせて研究することができれば、さらにおもしろいことになるのではと思っております。

Time-lapse imaging of self- and cross-pollinations in Brassica rapa

Hiroi, K., Sone, M., Sakazono, S., Osaka, M., Masuko-Suzuki, H., Matsuda, T., Suzuki, G., Suwabe, K., and Watanabe, M.

Annals Bot, 112: 115-122. (2013)
http://aob.oxfordjournals.org/content/112/1/115.abstract

論文は、free pdfではないですが、「ContentSnapshots」というのがあり、それのpdfはfreeになっております。それで概略はわかるかと。。。


わたなべしるす

PS. 渡辺の研究室HPに関連記事があります。あわせてご覧ください。

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 科学研究費の申請書にも近年、実施が義務づけられている「国民との科学・技術対話」の推進。鈴木班でも、小中高への出前講義を通したアウトリーチ活動を広く展開し、国民へ科学・技術を還元します。

 前々回が12月末まで、前回が3月末までという、昨年度でした。今回は、新年度の4月から6月の第1四半期における研究分担者・渡辺のアウトリーチ活動をまとめておきます。詳しい内容は、研究室のHPに記してありますので、興味のある方は、ぜひ、以下のlinkをご覧ください。講義内容は、今回は小学校、高校、一般の方、向けで、内容は植物の生殖などに関わる講義、実験、見学サポートなどです。


 石川県立小松高等学校SSH集中講義・研究指導・SSH総合科学・開放講座(1, 2, 3, 4, 5)
 宮城県仙台第一高等学校・生物部・研究室探訪、SSH活動討論会・特別講義(1, 2, 3, 4, 5)
 福島県立磐城高等学校・SSH大学訪問研修
 宮城県仙台二華高等学校・模擬講義
 小松市立中海小学校・特別講義
 福島県立福島高等学校・SSH「課題探究」開講式特別講義・研究室探訪(1, 2)
 宮城県古川黎明高等学校・SSH特別講義
 宮城県宮城第一高等学校・特別講義
 加賀市立橋立中学校・特別講義
 石川県立金沢泉丘高等学校・SSH特別講義
 福島県立岩瀬農業高等学校・特別講義
 宮城県仙台第三高等学校・SSH「理数科の日」発表会・SSH運営指導委員会(1, 2)
 仙台市立木町通小学校・特別講義
 仙台市立七北田小学校・特別講義(1, 2)
 金光学園中学高等学校・SSH課題研究発表会・コメンテーター
 愛媛県立今治南高等学校・出前講義
 今治市立今治小学校、日吉小学校、美須賀小学校、城東小学校・2013年度ふるさと出前授業
 香川県立観音寺第一高等学校・科学教養特別講義・SSH運営指導委員会(1, 2)
 今治市立富田小学校・2013年度ふるさと出前授業
 今治市立常盤小学校・2013年度ふるさと出前授業
 今治市立西中学校・特別講義
 愛媛県立松山南高等学校SSH研究指導
 松山市立久米小学校・特別講義
 大阪府立天王寺高等学校・SSH特別講義

DSCN6628.JPG 今後も引き続き、社会貢献ができる領域であるように努力したいと思います。


 わたなべしるす

DSCN6626.JPG

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