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2013年5月の記事を表示しています

山元班の研究成果がNature Communicationsに掲載されました

雄に求愛された雌は、受入れるか、拒否するか、いずれかの決断をします。キイロショウジョウバエ野生型の性的に成熟した雌は、雄の求愛をたいてい数分のうちに受入れます。ところがspinster突然変異体の雌は、1時間にわたり雄と一緒にしておいてもその間拒否を続け、交尾成功率が0%にまで低下します。このspinster変異についてホモ接合となった細胞を脳に少数作り出し、どの細胞が変異型となった時に雌が拒否をするのかを解析しました。その結果、脳内の二つのニューロン群、Spin-ASpin-Dが、雌の"受入れ−拒否"の意志決定をしていることを突き止めました。さらに、mTORシグナリングがこの決定に関与することも明らかにしました。雌雄の協調と軋轢を生み出す分子・細胞機構解明の一里塚となる成果です。

 

出典:Sakurai, A., Koganezawa, M., Yasunaga, K., Emoto, K. and Yamamoto, D. (2013) Select interneuron clusters determine female sexual receptivity in Drosophila. Nature Commun. 4:1825 DOI: 10.1038/ncomms2837

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Spotlight on Research article

Our undergraduate student, Yu Hasegawa, was selected as the first person to be profiled on the new Hokkaido University international website.  Check it out here.


Yu will be attending the Kobe meeting this weekend and will also present a poster on her research, so please say hello when you see her!  We are looking forward to seeing everyone at the meeting and especially to discussions on new ideas for collaboration!

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ニホンウズラは体が小さく成熟期間が6週間と非常に短いなど、鳥類のモデル動物として有用な特性をもちますが、ゲノム情報がないことから遺伝学的な解析は困難でした。私たちは、東京農業大学生物資源ゲノム解析センターとの共同研究で、ニワトリゲノムの80%に相当するニホンウズラのゲノム配列の解読に成功し、ウズラにおいてもニワトリと同様にポストゲノム研究が可能となりました。さらに、私たちは、得られたゲノム配列情報に基づき、ウズラの遺伝解析のためのツールとして、1 ‒ 28番染色体とZ染色体をカバーする150のマイクロサテライトマーカーを開発しました。これらの研究成果は、現在私たちが取り組んでいるニワトリーウズラのF1雑種における胚性致死と性特異的な致死現象を引き起こす遺伝的制御機構の分子基盤に関する研究を進めるうえで、次世代シーケンサーを用いた雑種胚における遺伝子発現の網羅的解析を可能にするものであり、今後の研究の発展が大いに期待できます。

 

Kawahara-Miki R, Sano S, Nunome M, Shimmura T, Kuwayama T, Takahashi S, Kawashima T, Matsuda Y*, Yoshimura T and Kono T* (2013): Next-generation sequencing reveals genomic features in the Japanese quail. Genomics 101: 345-353. (* corresponding authors) 

 

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雑種不妊は、交雑によって生じる種間の遺伝的交流を防ぐ生殖後隔離機構の一つであり、アヒルとバリケンのF1雑種(ドバン)は、鳥類における雑種不妊の研究の良い実験モデルとなります。このF1雑種は、比較的大きな精巣をもつにもかかわらず精子が産生されないため不妊となりますが、その原因についてはまだ良く知られていませんでした。私たちはドバンが不妊となる原因を探るため、精巣における減数分裂と両親種の染色体の形態について解析しました。その結果、ドバンの精巣では精上皮は正常に発育・分化し、減数分裂は第一精母細胞のパキテン期までは正常に進行するが、移動期から第一減数分裂中期以降には進まず、おもにパキテン期で細胞の退縮が生じ、分裂を停止した細胞はアポトーシスによって除去されることがわかりました。さらに、核型解析の結果、アヒルとバリケンの間で1番染色体とZ染色体の形態に違いが見られたことから、ドバンにおける不妊の主たる原因は、パキテン期と第一減数分裂中期における減数分裂の停止であり、これは両種間の染色体構造の違いによる相同染色体の対合阻害と、それにともなう染色体組換えと染色体分離の異常によって引き起こされる可能性が示唆されました。

 

Islam FB, Ishishita S, Uno Y, Mollah MBR, Srikulnath K and Matsuda Y. Male hybrid sterility in the mule duck is associated with meiotic arrest in primary spermatocytes. Journal of Poultry Science (advance publication)

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 植物病原体は、宿主植物への感染時にエフェクターと呼ばれるタンパク質を分泌する。エフェクターは様々な戦略で宿主植物の防御反応を抑制したり、細胞環境を変化させたりして病原体の感染を成立させる役割を担っている。近年、植物病原菌のゲノム配列解読により、様々な病原菌のエフェクタ−の同定が可能となっている。新奇のエフェクタ−タンパク質の同定およびその機能解析は、病原菌の病原性や宿主植物の防御機構を理解する上で重要である。

 

 Sohnらは、Effector Detector VectorEDV)と斑点細菌病菌のIII型分泌機構(T3SS)を利用し、双子葉植物におけるべと病菌エフェクタ−の探索および機能解析に成功した(Sohn et al. 2007 Plant Cell 19: 4077-4090)。本研究では、イネもみ枯細菌病菌(Burkholderia glumaeT3SSを利用し、イネいもち病菌エフェクタ−AVR-PikAVR-Piiの単子葉植物細胞内への導入および機能解析を行った。

 

 蛍光タンパク質と核移行シグナルを融合させたAVREDVにクローン化してB. glumae を形質転換し、イネ、コムギ、オオムギおよびNicotiana benthamianaに接種した結果、接種組織細胞内の核において蛍光シグナルが検出された。また、B. glumae T3SSによって導入されたAVR-PikAVR-Piiは、対応する抵抗性遺伝子を保有するイネ品種において非病原性を示した。B. glumaeを非宿主植物N. benthamianaに接種すると過敏感細胞死(HR)を生じるが、導入されたAVR-PikはそのHRを遅延させた。本研究により、単子葉植物におけるエフェクターの探索および機能解析の目的でB. glumae T3SSを利用できる可能性が示された。

 

Sharma, S., Sharma, S., Hirabuchi, Yoshida, K., Fujisaki, K., Ito, A., Uemura, A., Terauchi, R., Kamoun, S., Sohn, K.H., Jones, J.D.G. and Saitoh, H.

 

The Plant Journal (2013) 74: 701-712

 

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/tpj.12148/full

 

論文紹介 (齋藤@岩手生工研)


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