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単子葉および双子葉植物病原菌の感染に必要な病原性分泌タンパク質を発見し、PLoS Pathogensに掲載されました

 植物病原体は、宿主植物への感染時にエフェクターと呼ばれるタンパク質を分泌する。エフェクターは様々な戦略で宿主植物の防御反応を抑制し、病原体の感染を成立させる役割を担っている。

 

 いもち病はイネの最重要病害であるため、イネのいもち病抵抗性機構およびいもち病菌のイネへの感染機構の解明は非常に重要な課題である。しかしながら、いもち病を含む糸状菌病において、エフェクター関連研究の成果は、未だ乏しい状況である。 


 そこで、イネいもち病菌由来エフェクターを探索するために、感染初期に発現している78個の推定分泌タンパク質遺伝子の大規模破壊解析を行った。大多数の遺伝子破壊はいもち病菌の生長、胞子形成および病原性に影響を及ぼさなかった。一つだけ例外があり、その遺伝子をMC69と名付けた。mc69変異体はイネとオオムギへの病原性が著しく低下していた。mc69変異体は培地上での生長、胞子形成および宿主植物上での付着器(病原菌が植物に侵入する際に形成する器官)形成率において野生型と比較して差異を示さなかった。また、MC69タンパク質は実際にいもち病菌から分泌されることが明らかとなり、これらの結果はMC69が宿主植物との相互作用において重要な役割を果たすことを示唆している。さらに、ウリ類炭疽病菌におけるMC69相同遺伝子の欠失は、キュウリとNicotiana benthamianaへの病原性を低下させた。以上の結果より、MC69は、単子葉および双子葉植物にそれぞれ病原性を示すイネいもち病菌およびウリ類炭疽病菌の感染に共通して必要な病原性分泌タンパク質であることが明らかとなった。


slide1.jpgSaitoh, H., Fujisawa, S., Mitsuoka, C., Ito, A., Hirabuchi, A., Ikeda, K., Irieda, H., Yoshino, K., Yoshida, K., Matsumura, H., Tosa, Y., Win, J., Kamoun, S., Takano, Y., and Terauchi, R.

 

PLoS Pathogens (2012) 8: e1002711

 

http://www.plospathogens.org/article/info:doi/10.1371/journal.ppat.1002711


論文紹介 (齋藤@岩手生工研)


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