文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究」
鳥類の複雑な羽装は、ユーメラニンとフェオメラニンの産生に関わる数多くの遺伝子群の相互作用によって形成されており、そして、鳥類には哺乳類の毛色の変異を上回る数多くの羽装の突然変異体が存在します。しかし、それらの原因遺伝子はまだわずかしか同定されていません。私たちは、ポジショナル候補遺伝子アプローチによって、古くからよく知られているニワトリの碁石羽装(mo)とミノヒキ鶏に新たに見出された白色羽装(mow)の原因遺伝子が、エンドセリンをリガンドとするエンドセリン受容体B2遺伝子(ENDRB2)であり、異なる塩基の非同義置換(mo:Arg332His, mow:Cys244Phe)によって異なる表現型が生じること、そしてmowはニホンウズラに見られるパンダ羽装(s)と同一の塩基配列の変異であることを明らかにしました。マウスでは、ENDRB遺伝子の変異体は巨大結腸症を引き起こすことが知られていますが、鳥類の変異体ではこの形質は見られません。鳥類ではENDRB遺伝子に重複が起こったことによって、ENDRB2遺伝子はメラノサイトの発生・分化と移動を制御する機能に特化したと考えられ、新たなエンドセリン(END)-ENDRBの遺伝子相関が生み出されたと考えられます。