東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

News Release

【研究成果】次世代高速シークエンサーとアブラナ科植物3種の融合による乳頭細胞発現遺伝子群の解析と基盤構築をPlant Cell Physiol.に発表(11/2)

2013年11月 2日

 今年に入って、4報目の論文発表になります。いずれも自家不和合性関係で、Takada et al. (2013) G3, Hiroi et al. (2013) Ann. Bot., Sakazono et al. (2013) APPSに続いてとなりました。前にも書きましたが、2011/03/11の震災後、activityが下がっていたのが、ようやくもどりつつあるという感じです。特に今回の論文は、渡辺の研究室でも多くの学生、スタッフの方々の協力の賜物ですし、渡辺の研究室以外に、三重大大阪教育大奈良先端大名古屋大明治大スイス・チューリッヒ大、韓国・忠南大という多くの方々のProfessionalityを融合して、完成したものです。

F1.medium.gif 雌ずいにおいて、花粉と接着し、コミュニケーションするために特殊化した細胞といわれているのが雌ずい先端の「乳頭細胞、乳頭状突起細胞(papilla cell)」です。電子顕微鏡等で拡大すると、雌しべの先端がこの乳頭細胞で敷き詰められているのがよくわかります。これまで、花粉を含む葯での遺伝子発現は、イネミヤコグサ、アブラナなどで、マイクロアレイ法を用いて、網羅的に解析したことはありますが、乳頭細胞は雌ずいの先端に他の細胞と結合していることから、解析が容易ではありませんでした。また、サンプルの大きさも小さく、量を集めることも大変でした。そこで、以前にイネ葯タペート細胞だけを切り出し、遺伝子発現を行ったレーザーマイクロダイセクション法を適応し、また、植物材料には、自家不和合性種(Arabidopsis halleri, Brassica rapa)と自家和合性種(A. thaliana)を用いて、それらを比較することで、受粉反応の共通性、特異性を理解し、乳頭細胞で受粉反応が起きるためにどの様な遺伝子群が機能しているかを、次世代高速シークエンサーを用いて、解析しました。興味深いことは、不和合性種、和合性種を問わず、遺伝子発現では60%が共通しているということでした。これは、不和合性種でも、和合花粉を受粉した時には、花粉発芽、花粉管伸長などのイベントが起き、それらは、和合性種で起きていることと、同様な遺伝子を活用しているということを意味しているのだと思います。

DSCN0255.JPG 今回の論文は、発現遺伝子カタログというようなものになっていると思います。この次のステップとして、個々の遺伝子解析に向けて、研究を展開したいと思っています(Osaka et al. (2013) Cell type-specific transcriptome of Brassicaceae stigmatic papilla cells from a combination of laser microdissection and RNA sequencing. Plant Cell Physiol., 54: 1894-1906.)。なお、Plant Cell Physiol.の2012のImpact factorは、4.134です。この論文は、Open accessになっていますので、HPをごらんのどなたでもpdfを読んで頂けます。また、今回はわれわれの研究を評価頂き、11月号の表紙に取り上げて頂き(英文は公開、日本文は後ほど。。。)、あわせて、11月号の4つの興味深い論文であるResearch Highlightsにも採用されました(HPでは、まだ、10月号のままですが、。。)。改めて、共同研究の重要性を実感できた論文でした。ありがとうございました。乳頭細胞は、生殖特異的かもしれないですが、cell-cell communicationのモデルでもあります。そうした観点から見て頂ければ、多くの方々の実験のヒントになるのではと思います。ぜひ、お読み頂ければ、。。。百聞は一見にしかずですから

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 今年度もあと5ヶ月を切りましたが、これに続いて、より多くの論文を発表したいと。。。


 わたなべしるす

 PS. 新学術領域研究研究科のHPにも、関連記事を。。。合わせてご覧下さい。

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