東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

研究室ダイアリー

JST・未来の科学者養成講座・開講、第4回特別講義(キャリア教育)(9/12)

2009年9月14日 (月)

4月から高校1, 2年生を対象に募集していたall 東北大の企画である「経験・体験を通して「科学を見る眼」をもつ「科学者の卵」養成プログラム」の第1回特別講義を開催しました。受講生の皆さんもずいぶんなれてきた様子で、他県の高校生同士がフランクにしゃべっている様子は、こちらが意図している異分野交流の1つではないかと思いました。

6月にも渡辺が「進化論を唱えたダーウィンも注目した高等植物の自家不和合性--花粉と雌しべの細胞間コミュニケーションとその分子機構--」と題して、植物の花粉と雌ずいの自他識別のモデルともいえる自家不和合性について、講義しました。これは、植物科学研究の最先端のお話をしたわけですが、今回は、趣を変えて、研究者・科学者としてのキャリア、つまり、どのようにして、現在に至ったかを、渡辺を例に取り上げてお話ししました。

小学校、中学校、高校、大学、研究者になってから、これらからのこと等々、渡辺がどこで何を考え、どのような分岐点をかいくぐってきたのかをお話ししました。小学校、中学校の頃に覚えた、「あやとり」、「ルービックキューブ」は、不完全なりにも、記憶の片隅に残っていて、できます。また、テレビから影響を受け、科学者、博士、研究者、になろうとしたようなことも。というか、そんな単純な発想で、今に至っていることを考えると、それでよいのかというのももちろんありますが。。

科学の講義ではなかったため、少し質問は少なかったですが、提出してもらったレポートには、講義でこちらが伝えたかったことがよく伝わった内容のコメントがたくさんありました。それについては、一両日中に、未来の科学者の卵のHPで紹介しますので、ぜひ、ご覧ください。

http://www.ige.tohoku.ac.jp/mirai/
http://www.ige.tohoku.ac.jp/mirai/news/2009/09/14172108.php
http://www.ige.tohoku.ac.jp/mirai/news/2009/09/14163242.php
http://www.ige.tohoku.ac.jp/mirai/activity/2009/09/16171526.php

自分が何をしたいのか、どこまで達成したいのか、というようなはっきりとした目標を持つことは、単に、受験とか、そういうことに限らず、重要であると思った、今日の講義でした。


わたなべしるす

PS. 当日は、プレスの取材もあり、近いうちに新聞紙上でも紹介される予定です。

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仙台市立川平小学校での出前講義「「花の不思議な世界」--りんごの花からリンゴができるまで??--」(9/1)

2009年9月 2日 (水)

 東北大と仙台市教育委員会の連携による「出前講義」も今年で5年目を迎えました。今年の最初の小学校は、「川平小学校」からです。また、新しい小学校で、植物の不思議、花の不思議を教えることができるのはうれしい限りです。仙台市青葉区川平という場所は、学生の頃、友達が住んでいたり、近くを通ることはたくさんありましたが、小学校がこんなところにあるとはという場所でした。5年生・3クラスで、90名と校長先生を始め、5名の先生も受講していただいたのは、うれしい限りでした。

 今回の出前講義は、「「花の不思議な世界」--りんごの花からリンゴができるまで??--」ということで、リンゴをモデルとして、花が咲き、受粉、受精して、リンゴができる。その過程には、花粉管が伸びる、自家不和合性という、花粉の自他識別があるという、植物のダイナミクスを、話しました。花粉管が伸びたり、自家不和合性反応が、柱頭の表面で起きると、「へーーー!」という歓声が。やはり、動画はインパクトがあるようでした。最後に、10名を超える生徒さんから、とても純粋な発想の質問をたくさんもらいました。感想文が届くのが楽しみです。

 川平小学校では、「科学工作クラブ」の指導の一環として、キャベツのなかまの栽培と交配もやって頂けるということ。また、元気な生徒さんたちと会えるのを楽しみにしています。キャベツがどのように育つのか、よく観察してくださいね。


わたなべしるす

PS. 川平小学校の校長先生が、渡辺が講義を終えて帰るときに、構内の掲示板に講義の様子を掲示していただいただけでなく、小学校のHPのtop pageに講義の様子を掲示いただきました。とても感動しました。ありがとうございました。

http://www2.sendai-c.ed.jp/~kawadai/
http://www2.sendai-c.ed.jp/~kawadai/news/index.php?UID=1251785559

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鹿児島県立国分高校での理数科特別講義と実験「アブラナ科植物の多様性とその研究者の履歴書」(8/21)

2009年8月22日 (土)

 SSH九州地区発信の「ダイコン多様性プロジェクト」(機関校:鹿児島県立錦江湾高校)が採択され、その指導委員を務めることから、その参加校でもある鹿児島県立国分高校で、理数科特別講義と実験を行いました。鹿児島県の国分市(今は、霧島市と呼ぶようですが、、。。)といえば、葉たばこの生産が日本でも有数だったような記憶があります。

 午前中の講義では、アブラナ科植物の多様性を最初に概説し、小生がなぜこのような研究に至ったかという点について、文科省も推進している「キャリア教育」を行いました。話として出てくる例は、生徒さんには、少々古い事例かもしれないですが、これからの自分の進路を決める上で、参考になったようで、いくつかの質問をいただきました。ぜひ、満足行く進路・人生の岐路を決断してもらえればと思います。

 午後からは、バナナ果実を使って、DNAを単離する実験を行いました。比較的簡単なプロトコールですが、初めてこのような実験をする高校生には、楽しい実験だったようです。白いDNAの沈殿が見えたときには、あちこちで歓声が上がっていました。この感動を忘れないで、これからも日々の実験に取り組んでもらいたいと思った次第です。

 国分高校もSSH九州地区発信の「ダイコン多様性プロジェクト」参加校ですので、すでにダイコンの栽培・観察を開始していました。観察するポイント、栽培のポイントを1hr近く議論し、これから何ができるかということを、生徒さん、指導される先生方にも方向が見えたようでした。ぜひ、おもしろい結果を出して、コンソーシアムのHPにデータがuploadされるのを楽しみにしております。


わたなべしるす

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「ダイコン多様性研究コンソーシアム」との共催による「小中校生向け・実験と講演の集い」(8/20)

2009年8月20日 (木)

8/20に「ダイコン多様性研究コンソーシアム」と科研費・若手研究(S)の共催により、鹿児島市立博物館で、「小中校生向け・実験と講演の集い」を行いました。鹿児島市内の小中学生とその保護者の方が40名参加頂き、「アブラナ・ダイコンの多様性と自家不和合性」について講義を実施し、その後、あらかじめ用意してもらった1000mlの牛乳パックに、ダイコンを播種し、生長観察をしてもらうという実習も行いました。

 参加者には、幼稚園の方から中学2年生までと多様で、アブラナの多様性にちなんだようでした。ダイコンとカブが同じ種であるという勘違いをしている子供さんが多く、形で見るのは間違っていることを話しました。また、昨日までのSSHコンソーシアムで使ったダイコンの花を解剖してもらい、花びらが4枚、おしべが6本、雌しべは1本しかないことを観察してもらいました。最後に、アブラナには自家不和合性という自己花粉を拒絶するシステムがあるという不思議を理解してもらいました。

 参加者唯一の中学2年生は、来年から科学オリンピックに参加したいと話をしてくれ、花が咲いたダイコンを見て、ロゼットの葉っぱと、花の脇についている葉っぱの形がなぜ違うのか、そんなことにも気がつく生徒さんでした。この観察力があれば、科学オリンピックでも、すばらしい成績を出せるのではないか、また、将来、どこかで一緒に研究をしてみたいと思いました。がんばってください。

 小学生の中には、最後に握手をしてほしいという生徒さんもいました。ぜひ、がんばって、よい科学者になってほしいものです。それから、みんなで種播きをしたダイコン、これから少しずつ大きく生長するはずです。しっかり観察して、ダイコンの味も楽しんでもらえればと思います。

 いつもは、仙台市中心の小中学生への講義でしたが、鹿児島市内という違った土地での講義も、違った刺激をもらうことができ、これからも継続して、アウトリーチ活動をできればと思います。

わたなべしるす

PS. 当日、皆さんと一緒に撮った写真など、しばらくお待ちください。

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鹿児島県立錦江湾高校でのSSH「ダイコン多様性研究コンソーシアム」夏の特別講義・実習「アブラナ科植物の多様性と自家不和合性」(8/18-19)

2009年8月19日 (水)

 SSH九州地区発信の「ダイコン多様性研究コンソーシアム」(機関校:鹿児島県立錦江湾高校)の指導委員を務めることから、参加校が一堂に会し、研究プロジェクトの発表、評価、指導などを行うと共に、ダイコンの多様性を利用したいくつかの実験を指導し、講義を行ってきました。九州地区からの発信にもかかわらず、西日本全体とも言えるほど、多くの高校が参加しており、長野、岐阜、石川、大阪、奈良、和歌山、広島、愛媛、島根、佐賀、沖縄など14校におよぶSSH高を含む大型プロジェクトです。

 プロジェクトの特徴として、高校生がダイコンの異なる品種を栽培し、成長を調査してみるというのが、1つの骨格にあるところが、注目すべき点でした。小学校では、アサガオ、ヘチマ、イネなどたくさんの植物を育てた記憶がありますが、高校では、そんなことをすることもなく、ひたすら受験勉強に明け暮れたような気がします。そんな高校の時期に、植物の栽培をする、つまり、植物を育てることの大変さ、日々、どのような成長の違いがあるのか、いわゆる、表現型の日々の観察は、将来的には、フェノーム(Phenome)につながる着眼点を育成するよい試みかもしれません。今の高校生が研究者になる頃には、様々な植物・作物で簡単にゲノム配列を決めることができるでしょうし、遺伝子配列を決めることより、その機能をどうやって決めるのか、小さな違いはなぜ起こるのかということを考えることができるのではと思います。また、同じ品種を異なる環境(地方)で育てることで、その差異が生じ、その原因を考えるということは、これからの地球温暖化など、環境への適応を考える上でも大切かと思いました。

 もうひとつの特徴として、ダイコンの持つ形態的多様性、辛味成分の分析に加えて、栽培されているダイコンが自生化したハマダイコンも研究対象にし、耐塩性という点にも着目して、研究を展開するようです。それぞれの参加校で、地方色があり、身の回りの自然を生かした研究があることは、とても評価すべきことではないかと思いました。また一方で、高校SSHならではだと思いますが、DNAシークエンサーを有している高校もあり、ダイコンの多様性を遺伝子レベルで解析しようという、大学での研究かと見間違えるようなものもありました。

 実習では、耐塩性実験とその評価法、辛味成分の化学的分析、遺伝学的実験に欠かせない交配実験が、3つのグループに分かれて、実施され、この日のために準備をされ、プロジェクトを支えている錦江湾高校、鹿児島大学の先生方の配慮に感動しました。また、1日目の夜には、特別講演として、福井県立大の丸山先生から、「辛み成分と健康」ということで、アブラナ科植物が持つ「イソチアネート」系の辛味成分の特徴について話があり、生物と化学の融合研究も十分可能と思いました。

 講義・実習の合間には、それぞれの参加校の先生方・生徒さんたちと多くの議論ができ、秋以降の発展が期待できるプロジェクトであることを実感しました。また、出前講義でお会いできるのを楽しみにしております。

 なお、これらの研究は、近日中に「ダイコン多様性コンソーシアム」のHPで公開されるとか。情報を高校生間、高校生と大学教員の間で交換しながら、HPを成長させていくとか。まさに、ダイコンが生長するというような感じを受けて、とても楽しみになってきました。

http://daikon-c.com/

 12月の成果発表会での成果が今から楽しみです。

わたなべしるす

PS. 鹿児島といえば、桜島。桜島といえば、火山灰。火山灰のお出迎えに会うとは思いませんでした。これも何かのご縁かもしれません。。。。

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