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研究成果がPNASに掲載されました

研究成果が米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されました。

遺伝子の発現量は厳密に制御されているため、遺伝子間の発現量バランスが崩れることは大きな問題です(量的不均衡)。ヒトの細胞には22対の常染色体と1対の性染色体があり、女性では2本のX染色体、男性ではX染色体とY染色体を1本ずつ持ちます。また、性染色体は1億5千万年前に常染色体から進化したことが知られています。女性のX染色体の片方は不活性化され、機能するX染色体は男女ともに1本となり男女間の量的不均衡が解消されています。しかし、これではX染色体が常染色体と比較して半分しか機能していないことになります。そこで、X染色体と常染色体上の遺伝子発現量を比較したところ、発現量変化に敏感なX染色体上の遺伝子は発現量が半減することなく、常染色体上の遺伝子と等量となるよう発現していることが明らかとなりました。このことは性染色体の進化過程において、量的感受性の強いX染色体上の遺伝子に発現量を倍加させる選択が働いたことを示唆しています。また本研究で得られた知見により、X染色体数異常疾患の原因となる遺伝子を多数推定できました。

Pessia E, Makino T, Bailly-Bechet M, McLysaght A and Marais GAB. (2012)
Mammalian X Chromosome Inactivation evolved as a dosage compensation mechanism for dosage-sensitive genes on the X chromosome.
詳細はPNASのサイトをご覧ください



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図:1対の常染色体から性染色体が進化しました。男性ではX染色体を1本しか持たず、女性では片方が不活性化し1本のX染色体しか機能していません。2本ずつ存在する常染色体上の遺伝子と発現量のバランスを保つため、発現量への感受性が強いX染色体上の遺伝子は2倍量発現するように進化しました。一方で、発現量への感受性が強くないX染色体上の遺伝子では、常染色体上の遺伝子と比較して半量しか発現していません。


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