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研究成果がCellに掲載されました

 キイロショウジョウバエのfruitless遺伝子は、神経系に性差を作り出す主要因子であり、それを通じて行動の性差を生み出している。この遺伝子の産物であるFruitlessタンパク質はBTB-Zn-fingerファミリーに属し、雌の神経系には存在せず、雄の神経系の約2000個のニューロンに発現している。転写制御に関わることが推定されるものの、その作用機構はこれまで不明であった。今回、Fruitlessタンパク質が転写補助因子のBonus (TIF1s)を介して染色体上の標的サイト約100ヶ所にHDAC1またはHP1aを動員し、クロマチン状態を変化させることによってニューロンの性差を生み出すことを明らかにした。注目すべきことに、HDAC1Fruitlessの持つ雄化作用をサポートするのに対し、HP1aはこれに拮抗して脱雄化をもたらす。これらの因子を操作した際、単一ニューロンレベルでは、「性の中間状態」は認められず、「雄型ニューロン」と「雌型ニューロン」の割合が変化した。Fruitlessタンパク質は、その存否によってニューロンの性を転換するスイッチとして機能すると考えられる。

 

Ito, H., Sato, K., Koganezawa, M., Ote, M., Matsumoto, K., Hama, C. and Yamamoto, D. (2012) Fruitless recruits two antagonistic chromatin factors to establish single-neuron sexual dimorphism. Cell 149, 1327-1338.

 

図:唾腺染色体の免疫組織化学染色によってFruitless, Bonus, HP1aの局在を調べたもの


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