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総説がThyroid Hormoneに掲載されました

ホルモンは、環境刺激に応答して体内の生理機能を調節します。したがって、異なる環境に生育する生物にとっては異なったホルモン調節機構が有利であることから、集団間でホルモン調節機構の分化が起こると考えられます。我々は、以前にトゲウオの甲状腺ホルモンについて、そのような例を見つけました(下図)。今回の石川麻乃研究員と執筆した総説では、ヒトも含めた生物で甲状腺ホルモンシグナルの変異がどの程度存在するのか、どういった環境への適応と考えられるのか、どういった遺伝基盤によるのか、についてこれまでに知られていることを整理しました。その結果、以下のようにヒトと動物で4つの共通点を見いだしました。

(1)ヨード不足によって起こるゴイターの起こりやすさに遺伝的変異があり、生育環境のヨード量と関連があるかもしれない。
(2)緯度間変異や人種間変異の原因の一部は、環境の温度に対する適応におそらく由来する。
(3)甲状腺ホルモンの変異と寿命に相関があるかもしれない。
(4)ゲノムスキャンの結果、甲状腺関連遺伝子が選択の標的になることが多々見つかる。

我々のグループでは、トゲウオを中心に環境適応の結果としてどのようにゲノムの分化が起こるかを研究していますが、ヒトとの共通点も見られたことからヒト遺伝学や医学など多様な分野の情報を融合して行くことで新しい研究の発展が見込まれると期待されました。オープンブックのチャプターですので、気軽に一読頂き、領域内外の多くの方々と有意義な議論へ発展していければ幸いです。

Ishikawa, A., and Kitano, J. (2012). Ecological genetics of thyroid hormone physiology in humans and animals. In: Thyroid Hormones  (N. K. Agrawal Ed.) p.37-50, InTech

http://www.intechopen.com/books/thyroid-hormone/ecological-genetics-of-variation-in-thyroid-hormone-physiology

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