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性染色体の分化が初期段階にあるヒクイドリで、Z-W染色体間で分化が生じているゲノム領域の構造を明らかにし、鳥類における性染色体の分化プロセスを推定しました。

  現生鳥類のほとんどの種では、W染色体は大きく退化してヘテロクロマチン化し、ユークロマチン領域はほとんど残されていません。一方、古口蓋上目に分類されるダチョウ目では、Z-W染色体間の分化はほとんどなく、性染色体分化の初期段階にあることがわかっていますが、その構造的な違いを分子レベルで解析した研究報告はありません。本研究では、ヒクイドリのZ-W染色体間で分化が生じているkW1配列領域をゲノムウォーキングによってZ染色体とW染色体からそれぞれ単離し、その構造を調べました。その結果、W染色体上には約200塩基の欠失があり、その周辺領域には143塩基からなる反復配列が増幅していました。そして、kW1配列はW染色体の動原体近傍に位置し、配列の重複が見られました。kW1配列は鳥類だけでなくワニ類にも存在しますが、カメ類、ヘビ類には見られませんでした。鳥類では、キジ目とカモ目にはなく、フクロウ目やタカ目には存在していました。これらの結果は、kW1配列は主竜類の共通祖先においてすでに存在し、鳥類ではキジカモ類で消失し新鳥類には残されていることを示しています。W染色体におけるkW1配列の増幅は他のダチョウ目鳥類(ダチョウ、エミュ)でも見られ、さらにW染色体上のこの領域周辺ではDMRT1遺伝子が欠損していることから、小さな染色体欠失が生じていることが明らかになりました。本研究の成果は、脊椎動物における性染色体の分化機構を分子レベルで解明する上で、重要な基礎情報を提供するものです。



Ishijima J, Uno Y, Nishida C, Matsuda Y. Genomic structures of the kW1 loci on the Z and W chromosomes in ratite birds: structural changes at an early stage of W chromosome differentiation. Cytogenetic and Genome Research (online published).

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