文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究」
研究成果
ショウジョウバエも種によって求愛の仕方は異なります。たとえば、雄が雌に正面から求愛するDrosophila subobscuraという種もいれば、雄が雌の後に回って求愛するD. melanogaster(キイロショウジョウバエ)もいます。キイロショウジョウバエの雄から嗅覚と視覚のどちらか一方を剥奪しても雌の後に回って求愛することにかわりはありません。嗅覚と視覚の両方を取り除いて初めて"前後の見境なく"雌に求愛するようになりました。雄が雌の頭とお尻を区別する際に使っている嗅覚的・視覚的手がかりは何なのか、興味ある課題です。本論文は、北海道教育大学の木村賢一教授のグループと山元の共同研究の成果です。
出典:Kimura, K-i., Sato, C., Yamamoto, K. and Yamamoto, D. (2014) Journal
of Neurogenetics (in press).
図:求愛のため片翅を震わせるキイロショウジョウバエの雄(佐藤耕世による)
日本遺伝学会第86回大会で、小林が世話人となって、ワークショップ「
DNA の破壊と修復と再編:塩基切り出しの役割をめぐる新展開 Recent excitements in DNA base
excision」を開催しました。小林、木下哲教授(本領域、横浜市立大学)、村松正道教授(金沢大)、中別府雄作教授(九大)が講演しました。
DNA の塩基の切り出しは、DNA
塩基への損傷からの修復という観点から研究される事が多かったのですが、エピジェネティックなメチル化塩基の排除に関与することが、動物植物で明らかにな
りました(木下)。さらに、原核生物では、エピジェネティックな塩基メチル化の有無によって非自己DNA
を破壊する制限修飾系に、塩基切り出しによるものが発見されました(小林)。また、塩基切り出し酵素は、抗ウイルス活性や抗体遺伝子の多様性増幅機構への
関与が示さ
れ(村松)、さらには細胞死による発がん抑制や神経変性をもたらす事も明らかになってきました(中別府)。
DNA
の塩基の切り出しが、遺伝過程、エピジェネティックス過程、個体恒常性維持で果たす予想外に大きな役割とその分子機構について、活発なディスカッション
が、ワークショップと、その前後のナイトセミナー、懇親会でも行われました。これまでエピジェネティックス、DNA複製・修復・組換え、細胞死の
研究として進んできたものが、脱塩基サイトを巡って合流することが感じられました。