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2014.10.24研究成果がScienceに掲載されました。

シダ植物のいくつかは,集団における遺伝的な多様性を確保するため,雄と雌の比を制御するフェロモン様の物質を分泌します.このフェロモン様の物質はアンセ リジオーゲンとよばれ,その構造は植物ホルモンであるジベレリンと類似しており(図1)、雄の個体を誘導するはたらきがあることが知られています.この論文において私たちは,シダにおけるアンセリジオーゲンを介した個体間のコミュニケーションについて明らかにしました.この個体間コミュニ ケーション系とは,異なる生育ステージにある個体のあいだでジベレリンの生合成経路を分けて所有することにより成立するもので,アンセリジオーゲンはこの 2つの個体をつなぐ架け橋として機能することが分かりました(図2).すなわち,集団において早く成熟した配偶体はアンセリジオーゲンを周囲に分泌されますが、それ自体は生理活性を持たず,生体に取り込まれやすいという性質を持っています.遅れて発生した若い個体は分泌されたアンセリ ジオーゲンを取り込み,生体においてこれを活性型ジベレリンへと変換することにより雄の個体の形成がはじまることが解明されました.

Matsuoka-Science-14.10.24-Fig.1.png

図1 アンセリジオーゲンおよびジベレリンの構造

アンセリジオーゲン(GA9-Me)はジベレリン(GA4)と非常に似た構造をとっているが,C3位の水酸基を欠き,C6位のカルボキシル基がメチルエステル化されている点が異なる.


Matsuoka-Science-14.10.24-Fig.2.png

図2 カニクサにおけるアンセリジオーゲンによる性別の制御機構

成熟した個体において,ジベレリンの生合成経路の上流にある酵素までを使用したのち,メチルトランスフェラーゼによるメチルエステル化をうけてアンセリジ オーゲンは完成する.分泌ののち,若い個体に取り込まれたアンセリジオーゲンはメチルエステラーゼによる脱メチル化をうけ,つづいてGA3oxによる水酸 化をうけてジベレリンへと変換される.さらに,GID1により受容されることでジベレリンシグナルがオンになり,造精器の形成が誘導される.


Antheridiogen determines sex in ferns via a spatiotemporally split gibberellin synthesis pathway.


Junmu Tanaka, Kenji Yano, Koichiro Aya, Ko Hirano, Sayaka Takehara, Eriko Koketsu, Reynante Lacsamana Ordonio, Seung-Hyun Park, Masatoshi Nakajima, Miyako Ueguchi-Tanaka, Makoto Matsuoka

Science, 346, 469-473 (2014)


この内容を紹介した日本語の概要が「ライフサイエンス 新着論文レビュー」に掲載されています(http://first.lifesciencedb.jp/archives/9500)。そちらも参考にしてください。

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