東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

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News Release

自家不和合性の優劣性機構解明をNature Geneticsに発表

2006年1月30日 (月)

"アブラナ科植物の自家不和合性を制御するS対立遺伝子の優劣性機構を解明

(Shiba, H., Kakizaki, T., Iwano, M., Tarutani, Y., Watanbe, M., Isogai, A., and Takayama, S. (2006) Dominance relationships between self-incompatibility alleles controlled by DNA methylation. Nature Genet., DOI 10.1038/Ng1734.)

 東北大学大学院生命科学研究科の渡辺正夫教授は、奈良先端科学技術大学院大学の高山教授らと岩手大学の研究グループと共同で、植物における自他識別のモデルともいえるアブラナ科植物における自家不和合性を制御するS対立遺伝子間で生じる優劣性発現が、遺伝子のメチル化によって、制御されていることを明らかにした。これらの成果は来週1月30日、Nature Genetics(Shiba et al. 2006)の電子版に掲載される。

<概要>
 アブラナ(Brassica rapa (syn. campestris) L.)は春に黄色の花が咲き、日本各地で栽培され、また、同種には、カブ、ハクサイ、水菜等の野菜もふくまれ、その利用価値も高い。アブラナには、自家不和合性という植物の自他識別のモデルともいえる系が存在する。この自家不和合性は、ダーウィンの頃から着目されていた植物特有の現象であり、基礎科学からみれば、アブラナの自家不和合性は、遺伝的多様性を維持するメカニズムであり、植物における自己・非自己識別機構の1つとして注目されている。一方、この自家不和合性は、実際の安定的F1雑種による品種改良においても利用されている重要な形質である(図1A)。

 このアブラナの自家不和合性は、遺伝学的には胞子体的に機能するS複対立遺伝子系によって制御されており、これまでの研究で、雌しべ側S因子は、柱頭特異的遺伝子SRKであり、もう一つの柱頭特異的遺伝子SLGは、柱頭での認識反応を安定させることを明らかになっており、一方、花粉側S因子については、SLG, SRKの近傍に位置する葯特異遺伝子SP11であることが証明されている(図1B)。
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GGS Prize 2005受賞

2005年10月31日 (月)

" Endo, M, Tsuchiya, T., Saito, H., Matsubara, H., Hakozaki, H., Masuko, H., Kamada, M., Higashitani, A.,, Takahashi, H., Fukuda, H., Demura, T. and Watanabe, M. (2004) Identification and molecular characterization of novel anther-specific genes in japonica rice, Oryza sativa L. by using cDNA microarray. Genes Genet. Syst. 79: 213-226.が、2005年日本遺伝学会誌(Genes & Genetic System)のGGS Prizeを受賞しました。本研究科の東谷篤志教授、高橋秀幸教授との共同研究の成果であるとともに、共同受賞です。
 イネは単子葉モデル植物であり、また、作物としても重要である。近年、その全ゲノム配列が決定されたが、生殖器官で特異的に発現している遺伝子の網羅的解析は行われていなかった。生殖器官は、様々な環境変化に対して大きな影響を受け、また、東北地方では、冷害により不稔となる。こうした実用的な面とイネの葯、花粉成熟過程を理解することは、基礎生物学的にも重要である。

 本論文では、4,304 cDNAクローンからなるcDNAマイクロアレイを独自に作製し、156種類の異なる葯、花粉特異的遺伝子を、クラスター解析により同定し、また、in situハイブリダイゼーション実験から、新規の葯、葯壁、タペート細胞、小胞子特異的遺伝を単離した。こうした一連の遺伝子が同調的に機能することにより、花粉が成熟し、受粉、受精に至るものであると考察した。
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第4回インテリジェントコスモス奨励賞受賞

2005年5月16日 (月)

"第4回インテリジェント・コスモス奨励賞を、「自己・非自己を花粉を識別するアブラナ科植物の自家不和合性制御遺伝子の解析」というテーマで受賞した。
 高等植物の自家不和合性は、ダーウィンの頃から着目されていた植物特有の現象であり、基礎科学からみれば、アブラナ科植物の自家不和合性は、遺伝的多様性を維持するメカニズムであり、植物における自己・非自己識別機構の1つとして注目されている。一方、この自家不和合性は、実際の安定的F1雑種による品種改良においても利用されている重要な形質である。受賞者は、アブラナ科植物のBrassica campestrisを材料として、自家不和合性において花粉と雌しべで自己・非自己を識別するS遺伝子座の解析を行ってきた。まず、雌しべ側S因子について、柱頭特異的遺伝子SLG とSRKを独立に形質転換した植物体を作出した。その結果、SRKが雌しべ側のS遺伝子であり、SLGは、柱頭での認識反応を安定させるということを明らかにした。一方、花粉側S因子については、SLG/SRKを含む76kb ゲノム断片の全塩基配列を決定し、この領域で葯特異的に発現し、S対立遺伝子間で多型のあるSP11遺伝子を同定した。この遺伝子を形質転換し、花粉側S表現型の変化からSP11が花粉側S因子であることを明らかにした。さらに、20以上のSP11の対立遺伝子をクローニングし、SLG, SRKとの比較から、S遺伝子座上のこれら3つの遺伝子は共進化をすることにより、新しいS遺伝子を生み出してきたことを見出した。S対立遺伝子間に見られる優劣性制御が、柱頭側はSRK、花粉側はSP11の発現レベルによることを明らかにした。 "

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