文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究」
研究成果がPCP(Plant Cell and Physiology)に掲載されました。今回の成果は、アブラナ科植物を材料に受粉領域である柱頭先端の細胞をレーザーマイクロダイゼクション法にて組織特異的に単離し、次世代シーケンサーを用いて大量解析を行ったものをまとめたもので、高山班、矢野班、班友・清水博士との共同研究の成果です。
植物の生殖過程において雌ずいと雄ずいが最初に出会う「受粉」は、雌しべ先端の乳頭細胞にて誘起されます。近年、シロイヌナズナをはじめ、アブラナ科植物において多くの植物生殖に関わる研究が報告されていますが、それらを制御する分子メカニズムについてはほとんどが解明されていません。本研究では、3種のアブラナ科植物Arabidopsis thaliana, A. halleri, Brassica rapaを用いた、乳頭細胞に限定した発現遺伝子群の情報基盤構築と特徴づけを行いました。上記3種の植物種それぞれから、レーザーマイクロダイゼクションによって受粉領域である乳頭細胞を特異的に単離し、次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析により乳頭細胞で機能する遺伝子群を網羅的に同定しました。得られた乳頭細胞発現遺伝子群をバイオインフォマティックス解析することで、60%を超える遺伝子が3種間で共通することを明らかにしました。また、受粉関連や乳頭細胞の発達・代謝関連、転写因子、シグナル伝達関連等の遺伝子を同定し、それらが受粉システムや乳頭細胞の分化・発達に機能していることを予測しました。これらデータは、植物生殖の分子機構を理解するうえで有用な情報基盤になると考えられます。今後、本研究で見出した遺伝子発現情報基盤をもとに、更に詳細なバイオインフォマティクス解析による受粉関連遺伝子の選抜や個々の遺伝子機能の調査を行い、受粉分子機構の全貌を解明していきたいと思います。
また、本稿はその成果が評価されPCP 11月号の表紙に選ばれました。さらにPCP HP上ではResearch highlightsとして紹介されています。Open accessですので、ぜひ、ご一覧頂ければ、幸いです。
Cell type-specific transcriptome of Brassicaceae stigmatic papilla cells from a combination of laser microdissection and RNA sequencing
Osaka, M., Matsuda, T., Sakazono, S.,
Masuko-Suzuki, H., Maeda, S., Sewaki, M., Sone, M., Takahashi, H., Nakazono, M.,
Iwano, M., Takayama, S., Shimizu, K.K., Yano, K., Lim, Y.P., Suzuki, G., Suwabe,
K, and Watanabe, M.
Plant and Cell Physiology (2013) 54: 1894-1906.
(URL: http://pcp.oxfordjournals.org/content/54/11/1894.full.pdf+html)
鈴木班の渡辺は、10/7にお知らせしたとおり、地元紙・河北新報に「科学の楽しさ伝え出前授業500回 東北大院教授・渡辺さん」という形で紹介頂きました。このことがきっかけとなり、NHKラジオ第一・ゴジだっちゃ!という宮城県限定の放送でしたが、10/24に「科学の楽しさを伝えて500回出前授業だっちゃ」と題したコーナーにゲスト出演しました。出前講義を始めたいきさつ、心がけていること、理科離れなど、これからの活動について等々。出前講義にない緊張感を頂くと共に、しゃべることの難しさを改めて、痛感しまし、そのことをこれからのアウトリーチ活動、研究活動のエネルギー源にしたいと思います。
わたなべしるす
PS. 渡辺のHP、東北大・科学者の卵養成講座のHPにも関連記事を書いてあります。合わせて、ご覧下さい。
熱帯性のダイズ根粒菌の中には、Nodファクター受容体NFRに欠陥を持つダイズ変異体(一般的なダイズ根粒菌の感染では根粒を形成しない)に対してさえ根粒を形成して窒素固定を行うこと、これは3型分泌系によりNFRを経ずに宿主の根粒形成遺伝子群を活性化しているためであることを示した論文を