文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究」
山元大輔と佐藤耕世は、Pubmedにもカバーされている和文誌、『Brain and Nerve 神経研究の進歩』に"雌型脳と雄型脳"と題する総説を発表しました。まず、ヒトの脳の性的二型を性指向性、性同一性と関連付けながら論じ、続いて哺乳類と鳴鳥類の脳の性的二型と行動、そして最後に自ら進めているショウジョウバエの性行動と脳の研究を紹介して、一般化を試みています。従来、脊椎動物の性分化は細胞非自律的な機構によって、一方、昆虫の性分化は細胞自律的な機構によって起こるとする二分律が定着していましたが、この総説はこの教義の限界を指摘し、性分化に関する新たな枠組みを提示しています。
出典:山元大輔・佐藤耕世 (2013)雌型脳と雄型脳、Brain and Nerve 65, 1147-1158.
図:掲載誌の表紙
大阪教育大学の鈴木です。
10月3日(木)に大阪府立高津高等学校にて進路講演会の模擬講義を行いました。高津高等学校の先生方には大変お世話になり、ありがとうございました。進路講演会は、生徒の進路意識を高揚させ、各自の進路を考える契機とすることを目的として取り組まれているものです。文系・理系の様々な分野の10講座が開かれ、近畿圏を中心とした大学の先生方が模擬講義を行っています。
私のタイトルは「近親交配を防ぐ植物の生殖システム −どのようにしてアブラナの花は自己と非自己の花粉を見分けるのか? −」で、アブラナ科植物の自家不和合性の分子メカニズムについて説明しつつ、生命科学系・農学系の大学への進路、および研究者とはどういう人達なのか、などについて、ざっくばらんに講義しました。生徒の皆さんからの聴講レポートを見ると、進路に対する前向きな意見と、生命科学に関する好奇心が見て取れました。対象は高校1年生でしたので、どこまで理解してもらえたかは分かりませんが、ゲノム遺伝子相関のホームページについても宣伝しましたので、この領域のような複雑な生命現象にも、若い人達の興味が増えていくよう期待しております。
鈴木 剛
鈴木班の渡辺は、この2年間では、200回を超える出前講義などのアウトリーチ活動(2011年度実績、2012年度実績)を行ってきましたが、この秋に500件を超えました。そんなにも多くなったも、ひとえに、いろいろとサポートしてくれた方々のおかげですし、何より、科研費でこうした活動を推奨したり、認めてくれたことにあると思っております。これからも継続して行いたいと思います。
そんなことを、本日付の地元紙・河北新報に「科学の楽しさ伝え出前授業500回 東北大院教授・渡辺さん」という形で紹介頂きました。どの様な形で出前講義を行っているかも、少し触れてくれています。皆様の参考になれば、幸いです。下の写真は、河北新報のHPのtopに渡辺の記事が紹介されていたスクリーンショットです。こんな風に取り上げてもらったのも初めてです。 これからのアウトリーチ活動、研究活動のエネルギー源にしたいと思います。
わたなべしるす
PS. 渡辺のHPにも関連記事を書いてあります。合わせて、ご覧下さい。
山元は、東北大学の一般向け広報誌、『まなびの杜』にて、自身の行った25年にわたるサトリ変異体研究の成果をわかりやすく紹介し、私たち人間の恋愛にまでその発見を拡張できるのか、夢を語っています。
出典:山元大輔(2013)遺伝子、脳、そして恋愛.まなびの杜 No. 65, 5.
図:『まなびの杜』に掲載された記事
山元班の伊藤弘樹と山元は、キイロショウジョウバエの性行動の生み出される仕組みを、個体レベル、細胞レベル、分子レベルにわたって紹介し、fruitless遺伝子がこの三階層のそれぞれに果たす役割を、自身の最近の成果に基づいて解説しました。さらに、fruitless遺伝子の働きを制御する上位機構として、ステロイドホルモン、エクダイソンに依存するシステムの存在を想定した仮説を展開しています。
出典:伊藤弘樹・山元大輔(2013)性行動の違いを生み出す分子機構、化学と生物 51, 686-692.
図:キイロショウジョウバエの雄