東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

専門外、継承、逆算(8/27)

2014年8月27日 (水)

 何を持って専門というのか、結構難しい。遺伝学といえばそうだし、植物科学といえば、広くなりすぎる。ただ、学生の頃の日向研の名称は、植物育種学研。では、育種の現場のことをどれくらい知っているかというと、とてもたいへんなこと。ほとんどが失敗の連続であることくらい。もちろん、どの様な育種法を使っているかというくらいはわかっても、実際の現場の話となると、そうは簡単ではない。ただ、そうはいってられないので、そんな育種の現場の方々と話をしたり、現場を見せてもらったりする。そうすることで、、これまでにないイメージがわくことがある。もちろん、子供の頃過ごした田舎の風景は、その現場の部分を補ってくれる一部ではある。それがなければ、仕事をしていて、結構、大変なのではないだろうかと思うこともある。で、話を戻して、専門外というのは。。。果てしなく広い海のようでもあるが、それなりに注意を払って、アンテナをできるだけ広く、高く張るようにすると、それなりにこんなこともあるのだと思うことがある。ただ、それを実行するためには「現場」を理解しているプロとの連携が重要になる。もちろん、こちらも最低限のことを知らないと、話ができない。宇宙語をしゃべっている会話について行けないのでは、しょうがない。そんなことを思うからだろう。というか、師匠の日向先生が共同研究の重要性を説いてくれたからでもあろう、領域外のことを理解することの重要性を研究だけでなく、教育の場面、例えば「科学者の卵養成講座」の中でも、話をする。今年も、そうしたキャリア教育はアウトリーチ活動で何度も行ってきたし、。。。どんな立場であれ、できるだけ広い視野を持てば、と思う。もちろん、立ち位置が高いところになればなるほど、そうしないとという気がする。そういえば、この前も植物と化学を結びつけるようなことのお手伝いを。。。専門外のことではあったが。。。まあなんとか、なったような。

DSCN2037.JPG 研究室にいても、それぞれの背景は異なる。子供の頃からの体験とか、時代背景とか。そうしたheterogenityはもちろん重要である。遺伝学というか、進化というか、それを物語っていると思う。ただ、一方で、これを解明しようということで、組織されている訳なので、それに向かって、という意味では、homogenityなのかもしれない。「めざせ、○△□」というように。。。大学の研究室にいると、他の会社などの組織より、入れ替わりというか、年をとって平均年齢を上げているのは、渡辺で、学生の年齢は変わらない。その時に重要なことは、過去に積み上げたご先祖様たちの業績だったり、実験手法等をいかに次の世代に継承するか。簡単なようで結構難しい。何より、技術の発展という面もある。顕微鏡で観察するにしても、ほとんどパソコンで動いている。こうなったら、お手上げである。動いて、見ることができる状態になれば、あとは、少しできるかもしれない。つまり、その研究室に秘伝のやり方というか、技術というか、それがどれだけ大変な思いをして作ったのか、また、維持してきたのかということを考えれば、そう簡単に失ったり、なくしてはいけないことに気がつく。そういえば、日向研にいた頃に、それぞれが持っている技術をまとめて、本にしようという試みが2年ほどあった。今は、netでGoogleしたら、何か出てくるから、そんなものもいらないということはないと思う。そんな古いものも大事にしていると、たまには訳に立つこともある。この前、電気泳動をしていた学生さんに、「PCR産物の大きさは???、だったら、agaroseの濃度は、これくらいがよいよ」ということくらいはできた。昔取った何とかで。。。いずれ、これもご先祖様からの贈り物。大事にしておいてよかったなというか、実験、研究の百戦錬磨の過程で、こんなことも身につけたのだなと、ふと、。。。

 もちろん、こうした実験を含めた普段の活動も、計画性を持つことは不可欠。何をしようかと思うのではなくて、これをするためには、目的地から逆算してこのタイミングではこれを、その前にはこれをということを考えるのがよいとか。逆算というのは、昔、西武ライオンズの黄金期を作った森祇晶監督の本で読んだことがあるような。確かに、植物であれば、成長というのを計算に入れないといけない。いつやるかを元に、それから逆算して、いつ材料がいるのか、そのために、いつ種播きをして、植物を維持するのか。また、いくつくらいあればよいのか。結構、タイミングを計るのは難しい。先のように共同研究の場合、共同研究先からこれがほしいというリクエストをもらうこともあるだろうし、逆に、こちらがこれがほしいということも。そういえば、岩手大に異動してすぐの頃だろうか、アブラナのこの系統が必要というので、電話をして、仙台の研究所まで取りに来たことがあった。計画性がないと言えばそれまでかもしれないが、急な変更というか、急にこれが必要ということはあり得ること。そうしたとき、どう動くのか、予想外、想定外のことが起きても、折れないようにするとか。。。最後は、気合いと根性なのかもしれないというのでは、あまりに科学的でないかもしれないが。。。ただ、こうやれば、こうなると盲目的に思ってしまうと、大事な変化を見逃す恐れもある。その意味では、植物をしっかり観察して、それが何を言いたいのか、そんなことを考えてみるのもよいのかもしれない。植物の声が聞こえる人がいたら、ぜひ、実験を手伝ってほしいのだが。。。というか、そんな風になりたいものである。

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 わたなべしるす

 PS. そういえば、これを書く前に別の案件を片付けていたら、実験室で警報が。。。何かと思ったら「恒温器」のふたが開いていて。。。37oCの設定が、31.6oCに。。。何をするにも、ちゃんと目視で確認をすること。植物の生長を観察する注意力と同じように。。。



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