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2014年3月の記事を表示しています

特殊な性染色体を持つ日本海イトヨのゲノムを解読

性染色体はオスになるかメスになるかを決定する性染色体で、例えばヒトの場合には、XYをもつと男性、XXをもつと女性になります。しかし、どの染色体が性染色体になるかは種によって様々で、近縁の種間でも性を決定する染色体が異なっている場合が多く知られています。しかし、このような性染色体の転換現象の生物学的な意義については多くが不明です。

今回、我々は、日本海イトヨと太平洋イトヨが異なる性染色体を持つことに着目し、これらの全ゲノムを決定することで、性染色体の転換現象が遺伝子の進化に与える効果を解析しました。日本には、太平洋イトヨと日本海イトヨの二種のイトヨが生息していますが、これまでの我々の研究の結果、日本海イトヨには、太平洋イトヨにはない新しく出現した性染色体(ネオ性染色体)があることが明らかになっていました。今回これら二種のゲノムを解読し比較することによって、日本海イトヨ固有のネオ性染色体の上では、XとYの間で遺伝子配列の分化が起こり始めるなど性染色体の特徴を既に示しつつあること、また、太平洋型の当該ゲノム領域と比較することで種間差を示す遺伝子が蓄積していることなどを見いだしました。

この成果は、これまで謎であった性染色体の転換という現象が、遺伝子の進化を促進することを示していることから、性染色体の進化と種分化との強いつながりを示すものとして評価され、米国科学誌のプロスジェネティックスに掲載されました。

この成果は、国立遺伝学研究所の生態遺伝学研究室と比較ゲノム研究室に加え、基礎生物学研究所、東北大学生命科学研究科、フレッドハッチンソン癌研究所、岐阜経済大学との共同研究です。


Yoshida, K., Makino, T., Yamaguchi, K., Shigenobu, S., Hasebe, M., Kawata, M., Kume, M., Mori, S., Peichel, C. L., Toyoda, A., Fujiyama, A., and Kitano, J. (2014) 
Sex chromosome turnover contributes to genomic divergence between incipient stickleback species. PLOS Genetics 10(3): e1004223

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 イネいもち病菌の大規模遺伝子破壊解析により、胞子生産および培養菌糸のメラニン化に必要とされるヘキソーストランスポーター様タンパク質遺伝子MoST1が同定された。MoST112個の推定膜貫通領域を含む547アミノ酸からなるタンパク質をコードしている。MoST1遺伝子破壊株(most1)では培養菌糸のメラニン化が抑制され、most1の胞子生産量が著しく減少した。これらの表現型はMoST1の再導入によって相補された(most1+MoST1)。Magnaporthe griseaデータベース(http://www.broadinstitute.org/annotation/fungi/magnaporthe/)を用いてMoST1アミノ酸配列のBLASTP検索を行った結果、他の66個のヘキソーストランスポーター様タンパク質遺伝子が見出された。その中の3つの遺伝子がコードするタンパク質はMoST1と高い相同性を示した。そこで、MoST1プロモーターの下流にこれら3遺伝子をそれぞれ融合させたベクターでmost1を形質転換した結果、いずれの形質転換体においてもmost1の胞子生産と菌糸のメラニン化の欠損は相補されなかった。以上の結果から、MoST1は、イネいもち病菌のヘキソーストランスポーター群の中で、胞子生産と菌糸のメラニン化に特異的な役割を担うタンパク質であることが明らかとなった。

 

Saitoh, H., Hirabuchi, A., Fujisawa, S., Mitsuoka, C., Terauchi, R. and Takano, Y.

FEMS Microbiology Letters (2014) 352: 104-113

 

論文紹介 (齋藤@岩手生工研)


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班員・東北大学渡辺正夫教授・野依科学奨励賞受賞

 班員の東北大学渡辺正夫教授平成25年度野依科学奨励賞受賞(受賞タイトル:双方向交流を通じた新たな出前講義の方向性の試みと実践~児童・生徒からの手紙への返事と電子媒体活用による出前講義~)を受賞しました。授賞式は、3/25(木)に国立科学博物館で執り行われます。

 野依科学奨励賞は、2001年ノーベル化学賞を受賞された野依良治博士の協力を得て、2002年度より、子どもたちの優れた学習・探究活動と子どもたちの科学する心を育てるために、優れた実践活動を行っている教員や科学教育指導者に対して、その功をたたえることを目的として創設されたものです。これまでのアウトリーチ活動が評価されたものであり、本領域の次世代育成にも貢献できたのではと思っております。

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DSCN6491.JPG この賞を励みとして、これからも研究教育活動と並行して、アウトリーチ活動を実践し、社会貢献ができる領域であるように努力したいと思います。


 わたなべしるす

 PS. 渡辺の研究室のHPにも関連記事が出ております。合わせてご覧頂ければ、幸いです。


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「インシリコ染色体ペインティング」による種内集団構造の推定

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塩基切り出し型制限酵素の発見

制限酵素は、特定のDNA配列の塩基がメチル化されていないときに、DNAを切断します。DNAを切るはさみとして、生命科学とバイオテクノロジーに大きな役割を果たしてきました。生命活動では、エピジェネティクスによる自己と非自己の区別によって遺伝的隔離による進化に寄与しています。


これまで知られている 制限酵素は全て、DNAのヌクレオチド単位を繋ぐリン酸ジエステル結合を加水分解します。私たちは、メチル化標的の塩基を切り出す新しい型の制限酵素を発見しました。


このような塩基切り出し酵素(DNAグリコシラーゼ)は、これまでDNA塩基損傷の修復で知られていましたが、最近動物細胞でDNAの脱メチル化に関わることが示されています。私たちの発見は、DNAメチル化によるエピジェネティクスの過程を繋げ、遺伝過程の理解を拡げるものです。

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