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研究経過報告|新学術領域|ゲノム・遺伝子相関

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2015年4月の記事を表示しています

研究成果がPlant Journalに掲載されました

花芽形成の運命決定因子・フロリゲンが、移動性の分枝促進シグナルとしても機能していることを発見しました。また、フロリゲンが花芽形成や分枝促進といった異なる機能を使い分けるメカニズムが、フロリゲン活性化複合体の転写因子サブユニットの交換である可能性を示しました。

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日本育種学会奨励賞を受賞しました

日本育種学会第127回講演会(玉川大学)にて、2014年度日本育種学会奨励賞を受賞いたしました。対象となった研究は「花成ホルモン・フロリゲンの機能に関する遺伝育種学的研究」です。

花芽をつける植物ホルモン・フロリゲンの受容体発見と活性本体となる複合体の同定、その育種的応用を視野に入れた研究を評価いただきました。ご指導いただいた皆様、共同研究者の皆様、ともに研究を進めた大学院生の皆さんに感謝いたします。

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研究成果が新聞に紹介されました

アウトリーチ/広報


 山元らは、遺伝的に性指向性が変化して雄がもっぱら雄に求愛するようになったショウジョウバエのsatori変異体について長年研究してきました。ようやく最近になり、satori変異体雄を羽化後単独で飼って他の雄から隔離すると、その後、雄への求愛をわずかしかしなくなることを知るに至りました。山元班の古波津は、野生型の雄をトレッドミルに乗せて脳の特定のニューロン(P1)を刺激しながらコンピュータディスプレイ上の動く光点を見せると、雄がこの光点を追って求愛することを発見しました。satoriの雄は、P1ニューロンへの刺激がない状態でも動く光点に求愛し、しかもこの"無差別求愛"は他の雄との接触を断って飼われた雄では見られないことから、satoriの同性愛求愛と同様に、社会経験依存的であるとしました。この成果が、朝日新聞の科学面で紹介されています。

 

出典:恋の相手は育ち方で変わる・・・、朝日新聞科学面、2015年4月23日、朝刊。

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動植物の有性生殖システムは多様性に富んでおり、雌雄同体(多くの被子植物やカタツムリなど)から雌雄異体(ヒトやアスパラガスなど)が何度も進化したと考えられている。その進化の中間段階として、両性個体と雌(雄性不稔)が共存する雌性両全性異株gynodioecyが考えられている(ハマダイコンなど)。一方、その逆に、両性個体と雄(雌性不稔)が共存する雄性両全性異株androdioecyについては、チャールズ・ダーウィンが1877年に調査の限りで存在しないと述べている。ダーウィン以降、動植物それぞれ数例程度(C. elegansなど)が報告されてきていた。雄個体が存在し続けるためには、精子または花粉を通じて2倍以上の子孫を残すという厳しい条件を満たす必要があるというのが、雄性両全性異株が稀であることの理論的背景である。

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我々はシロイヌナズナ近縁種の繁殖システムを研究する中で、スイスなどの川沿いに生育するタネツケバナ属Cardamine amaraが雄性両全性異株を持つことを予想外にも発見した。雄個体では雌しべが未発達で、種子を作れなくなっていた(写真、バックグラウンド:Cardamine amara, 左:両性個体の花、右:雄個体の花)。これまでの理論的・実証的研究では、花ごとの花粉数は雄が2倍以上であることが予想され、また雄の頻度は50%以下であるはずだが、Cardamine amaraどちらも満たしていないように見えた。マイクロサテライトマーカーを用いて個体識別をしたところ、雄個体は種子をつくれないかわりに、無性繁殖によって川の流れに沿って多数のクローンを増やしていることがわかった。つまり、クローンを含めて考えれば雄の花粉数は2倍以上であり、遺伝子頻度で見れば雄は50%以下という条件を満たしていた。シロイヌナズナに近縁であることを活かして、マイクロアレイ解析を行い、雌しべ発生などの遺伝子の発現量が有意に異なることがわかった。今後、雄のゲノム進化のモデル系にしていきたい。


 ナショナルジオグラフィックのインタビューでも紹介されています。 


Tedder, A., Helling, M., Pannell, J.R., Shimizu-Inatsugi, R., Kawagoe, T., van Campen, J., Sese, J., and Shimizu, K.K. (2015) Female sterility is associated with increased clonal propagation in populations of Cardamine amara (Brassicaceae), Annals of Botany, 115: 763-776

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アフリカツメガエル(Xenopus laevis)は、ネッタイツメガエル(Silurana/Xenopus tropicalis)に近縁な2つの異なる祖先型二倍体種が交雑し、その異種間雑種のゲノムの倍数化によって新たに生じた異質四倍体種であることが知られています。私たちはこれまでに、cDNAクローンを用いたFISHマッピングによってX. laevis(2n = 36)とX. tropicalis(2n = 20)の比較染色体地図を作成し、X. laevisがもつ9組すべての同祖染色体を同定することに成功しました(Uno et al. Heredity 111: 430-436, 2013)。しかし、X. laevisならびに近縁種の染色体研究は1940年代からすでに行われており、多くの研究者によって様々な染色体の分類と番号付けがなされてきたため、大きな混乱が生じていました。最近、私たちが参画している日米合同のX. laevisゲノム解析プロジェクトが大きく進展したことから、世界基準となる染色体の命名法の確立が強く望まれていました。そこで私たちは、X. laevisゲノムプロジェクトコンソーシアムの協力を得て、分子細胞遺伝学・ゲノム科学的なデータを基盤とした新たな染色体命名法(Chromosome Nomenclature)を確立しました。

私たちがこれまでに作成したX. laevisX. tropicalisの染色体地図の比較によって、X. laevisの2組の同祖染色体間に逆位が存在することを除けば、2種間ならびに同祖染色体間での相互転座は検出されないこと、そして、X. tropicalisの2本の染色体が融合した染色体をX. laevisが1対もつことが明らかになっています。そこで、X. laevis -X. tropicalis間の遺伝連鎖群の保存性が極めて高いことに基づいて、新たな命名法では、X. laevis(XLA)の同祖染色体対を染色体サイズが大きいもの(XLA L)と小さいもの(XLA S)に分け、各染色体をX. tropicalis(XTR)の染色体番号(XTR1, XTR2, -------- XTR8)と対応づけて、それぞれ"XLA1L, XLA1S, XLA2L, XLA2S, ----------- XLA8L, XLA8S"の順に染色体番号を記載しています。そして、X. tropicalisの2つの染色体(XTR9, XTR10)が融合した染色体を"XLA9L, XLA9S"と命名するとともに、融合した染色体の起源がわかるように"XLA9_10L, XLA9_10S"という表記も併用することにしています。

新たな命名法に関するこの論文は、2015年4月8日付でCytogenetic and Genome Research誌からオンラインで世界に向けて発信されました。今後はこの命名基準をもとに、X. laevisX. tropicalisの染色体番号とゲノム情報を正確に対応付けることが可能となり、Xenopusの比較ゲノム研究の進展に大きく貢献できると考えています。


Matsuda Y, Uno Y, Kondo M, Gilchrist MJ, Zorn AM, Rokhsar DS, Schmid M, Taira M: A new nomenclature of Xenopus laevis chromosomes based on the phylogenetic relationship to Silurana/Xenopus tropicalis. Cytogenetic and Genome Research  (Invited paper in the special issue "Evolution, Genetics, and Genomics of Xenopus")  (published online on April 8, 2015) doi. 10.1159/000381292

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