HOME > 研究経過報告 > 有鱗目における大規模な比較染色体マッピングからヤモリ類におけるマイクロ染色体の消失過程を明らかにしました

研究経過報告|新学術領域|ゲノム・遺伝子相関

「研究経過報告」内を検索

有鱗目における大規模な比較染色体マッピングからヤモリ類におけるマイクロ染色体の消失過程を明らかにしました

鳥類と爬虫類では、ほとんどの種が微小なマイクロ染色体をもっています。しかし、分岐年代が古く、トカゲ類・ヘビ類を含む有鱗目(Squamata)の系統樹の基底部に位置付けられるヤモリ科(Gekkonidae)の種には、マイクロ染色体が見られません。この事実は、有鱗目の祖先種はマイクロ染色体をもたず、マクロ染色体の分断によってマイクロ染色体が生じたと考えるfission説を支持しているように思われます。しかし、分岐年代の新しいカナヘビ科(Lacertidae)では、マイクロ染色体の消失が見られることから、爬虫類におけるマクロ染色体とマイクロ染色体の出現と消失の過程については、これまで大きな謎とされていました。そこで、私たちは、ZW型の性染色体構成をもちマイクロ染色体をもたないミナミヤモリ(Gekko hokouensis)とマイクロ染色体をもつシマヘビ(Elaphe quadrivirgata)、ミズオオトカゲ(Varanus salvator macromaculatus)、バタフライトカゲ(Leiolepis reevesii rubritaeniata)、そしてマイクロ染色体を1対しかもたないニワカナヘビ(Lacerta agilis)との間で機能遺伝子の染色体地図を作成しました。さらに、これらの染色体地図にアノールトカゲ(Anolis carolinensis)とニワトリのゲノム地図の情報を加えて染色体上の遺伝子の連鎖群の比較を行い、各種間の染色体相同性を明らかにすることによって、有鱗目における祖先核型と染色体の構造変化の過程を推定しました。

  その結果、ニワトリおよび他の有鱗目がもつマイクロ染色体の連鎖群が高度に保存されていることから、有鱗目の祖先が多くのマイクロ染色体をもっていた可能性が高く、その後、ヤモリ科動物では、マイクロ染色体の融合が高頻度に起こった可能性が強く示唆されました。また、同様にマイクロ染色体をほとんどもたないニワカナヘビとミナミヤモリとの間の染色体相同性は低いことから、カナヘビ科では、ヤモリ科とは独立して独自にマイクロ染色体の融合が生じたことが示唆されました。染色体サイズ依存的なゲノム構造の区画化が明確な爬虫類において、ヤモリ科やカナヘビ科でマイクロ染色体の融合が高頻度に生じた原因はまだ不明ですが、本研究の結果は、爬虫類におけるマクロ-マイクロ染色体間のゲノム相関の進化過程を探るうえで、有用な情報を提供するものです。 
   
本研究論文は、8月4日付でPLOS ONE誌にオンライン掲載されました。
Srikulnath K, Uno Y, Nishida C, Ota H, Matsuda Y (2015) Karyotypic reorganization in the Hokou gecko (Gekko hokouensis, Gekkonidae): Gekkota retains a highly conserved linkage homology with other squamate reptiles that have many microchromosomes. PLOS ON (online published: 24, July, 2015 ).

ページトップへ|新学術領域|ゲノム・遺伝子相関