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研究経過報告|新学術領域|ゲノム・遺伝子相関

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スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の体験研修を担当しました

8月3-7日に名古屋大学で実施された、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の体験研修を担当しました。当研究室では、愛知県岡崎高校と豊田北高校の2年生4名を受け入れ、当研究室の研究員とティーチングアシスタントの大学院生と一緒に、実験の指導を行い、高校生たちに先端的な実験研究を体験してもらいました。今回の研修では、2つの実験実習:1) 蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法を用いた遺伝子の染色体マッピング;2) ウズラES細胞を用いたキメラ胚の作製と全胚培養、を実施しました。実習1)では、核型が大きく異なる鳥類と魚類の染色体標本を用いて、遺伝子の比較染色体マッピングを行い、染色体の相同性を調べる実験を行いました。実習2)では、GFP遺伝子を導入したウズラES細胞を胚盤葉期胚に注入してキメラ胚を作製し、全胚培養によってその発生過程を観察しました。そして、得られた実験結果をまとめ、実習レポートの作成に取り組みました。 
       
 研修に参加した高校生たちは、初めての実験の体験であったにもかかわらず、熱心に実験に取り組み、研究者顔負けの見事な実験結果を得ることができました。彼らにとっては、初めて先端的なサイエンスに触れ、とても新鮮で充実した体験研修となったようです。今後もこのような体験実習を企画し、一人でも多くの高校生にサイエンスの面白さを体験してもらうことによって、将来の日本のサイエンスをリードする研究者の卵が育ってくれればと願っています。
      
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ショウジョウバエ行動遺伝学テキストの書評をしました

広報活動・アウトリーチ


山元は、Josh Dubanauが編集してCambridge University Pressより刊行したテキスト"Behavioral Genetics of the Fly (Drosophila melanogaster)"の書評(invited)を、The Quarterly Review of Biology (University of Chicago Press)に発表しました。



出典:Yamamoto, D. (2015) Behavioral Genetics of the Fly (Drosophila melanogaster). Cambridge Handbooks in Behavioral Genetics. Quart. R. Biol. 90, 244.


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図:書評した本の表紙

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鳥類と爬虫類では、ほとんどの種が微小なマイクロ染色体をもっています。しかし、分岐年代が古く、トカゲ類・ヘビ類を含む有鱗目(Squamata)の系統樹の基底部に位置付けられるヤモリ科(Gekkonidae)の種には、マイクロ染色体が見られません。この事実は、有鱗目の祖先種はマイクロ染色体をもたず、マクロ染色体の分断によってマイクロ染色体が生じたと考えるfission説を支持しているように思われます。しかし、分岐年代の新しいカナヘビ科(Lacertidae)では、マイクロ染色体の消失が見られることから、爬虫類におけるマクロ染色体とマイクロ染色体の出現と消失の過程については、これまで大きな謎とされていました。そこで、私たちは、ZW型の性染色体構成をもちマイクロ染色体をもたないミナミヤモリ(Gekko hokouensis)とマイクロ染色体をもつシマヘビ(Elaphe quadrivirgata)、ミズオオトカゲ(Varanus salvator macromaculatus)、バタフライトカゲ(Leiolepis reevesii rubritaeniata)、そしてマイクロ染色体を1対しかもたないニワカナヘビ(Lacerta agilis)との間で機能遺伝子の染色体地図を作成しました。さらに、これらの染色体地図にアノールトカゲ(Anolis carolinensis)とニワトリのゲノム地図の情報を加えて染色体上の遺伝子の連鎖群の比較を行い、各種間の染色体相同性を明らかにすることによって、有鱗目における祖先核型と染色体の構造変化の過程を推定しました。

  その結果、ニワトリおよび他の有鱗目がもつマイクロ染色体の連鎖群が高度に保存されていることから、有鱗目の祖先が多くのマイクロ染色体をもっていた可能性が高く、その後、ヤモリ科動物では、マイクロ染色体の融合が高頻度に起こった可能性が強く示唆されました。また、同様にマイクロ染色体をほとんどもたないニワカナヘビとミナミヤモリとの間の染色体相同性は低いことから、カナヘビ科では、ヤモリ科とは独立して独自にマイクロ染色体の融合が生じたことが示唆されました。染色体サイズ依存的なゲノム構造の区画化が明確な爬虫類において、ヤモリ科やカナヘビ科でマイクロ染色体の融合が高頻度に生じた原因はまだ不明ですが、本研究の結果は、爬虫類におけるマクロ-マイクロ染色体間のゲノム相関の進化過程を探るうえで、有用な情報を提供するものです。 
   
本研究論文は、8月4日付でPLOS ONE誌にオンライン掲載されました。
Srikulnath K, Uno Y, Nishida C, Ota H, Matsuda Y (2015) Karyotypic reorganization in the Hokou gecko (Gekko hokouensis, Gekkonidae): Gekkota retains a highly conserved linkage homology with other squamate reptiles that have many microchromosomes. PLOS ON (online published: 24, July, 2015 ).

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