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本領域研究では、対立遺伝子間の相互作用として新たな優劣性の制御機構について取り上げます。従来、優劣性が生じる機構としては劣性側対立遺伝子が何らかの形で機能欠失している例のみが知られ、機能を保持した野生型対立遺伝子の効果に隠れて表現型が現れないと説明されてきました。しかし、我々はすべての対立遺伝子が機能を保持しているにも関わらず複雑な優劣性関係を示す自家不和合性対立遺伝子に着目して解析を進め、優性側対立遺伝子の近傍で作られる低分子RNAにより劣性側対立遺伝子の発現が抑制される例があることを発見しました。本レビューでは、その発見の経緯を紹介しています。この新たな制御機構がすべての自家不和合性対立遺伝子間の優劣性制御に関わっているか、さらに類似の機構により制御されている優劣性現象がないか、今後検証を進めていく計画です。
Epigenetic regulation of monoallelic gene expression
Shiba, H., and Takayama, S.
Develop. Growth Differ. (2012) 54, 120-128.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23741751
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新しい優劣性発現制御機構のモデル図

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植物の自家不和合性の多くは、S遺伝子座のハプロタイプ(S1, S2, ---, Sn)によって制御されており、(自己花粉の場合の様に)花粉と雌ずいが同じSハプロタイプを有する時に受精が抑制されます。この自他識別反応は、各Sハプロタイプがコードする少なくとも2つの因子(花粉因子と雌ずい因子)間の相互作用を介して行われています。最新の研究により、この自他識別反応は根本的に異なる2つの仕組みを含むことが明らかとなってきました。すなわち、アブラナ科やケシ科の植物の場合のように、自己の(同じSハプロタイプの)花粉因子と雌ずい因子が相互作用することで受精を抑制する反応が起きる仕組みと、非自己の(異なるSハプロタイプの)花粉因子と雌ずい因子が相互作用することで受精を促進する反応が起きる仕組みです。本新学術領域研究では、これら2つの仕組みを詳細に比較解析すると共に、こうした相互作用因子が生み出されてくる進化の過程に切り込む予定です。
Self/non-self discrimination in angiosperm self-incompatibility
Iwano, M., Takayama, S.
Curr. Opin. Plant Biol. (2012) 15, 78-83.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21968124
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研究成果がDevelopmental Cellに掲載されました

研究成果が9月13日付けのDevelopmental Cellに掲載されました。
今回の我々の成果は、ゲノムインプリンティングの制御ならびにDNA脱メチル化の過程にHMGドメインを含んだSSRP1の 機能が必要であることを示したものです。DNA脱メチル化の過程は、華やかなエピジェネティクスの分野でも謎が多く、脱メチル化酵素以外は殆ど明らかにさ れていませんでした。我々の研究を発端として、今後クロマチン機能変換とDNA脱メチル化の関係が急速に紐解かれていくと期待しています。

HMG domain containing SSRP1 is required for DNA demethylation and genomic imprinting in Arabidopsis

Yoko Ikeda, Yuki Kinoshita, Daichi Susaki, Yuriko Ikeda, Megumi Iwano, Seiji Takayama, Tetsuya Higashiyama, Tetsuji Kakutani, Tetsu Kinoshita Developmental Cell, 21, 589-596 (2011)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21920319


また、我々研究班では、オス側とメス側とでエピジェネティックな修飾に非対称性が存在することが原因で様々な軋轢を生んでいると予想していますが、SSRP1を介したメス側でおこるインプリント遺伝子の活性化は、非対称性を生み出す原動力とも言えます。

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本ゲノム遺伝子相関領域研究では、両親に由来する2つの対立遺伝子間の相互作用を1つの中心課題として取り上げます。その中で、ゲノムインプリンティング、X染色体の不活化、優劣性といった片側対立遺伝子のみが発現する現象(monoallelic gene expression)を取り上げ、分子機構解明の現状について議論しました。様々なエピジェネティックな制御システムが、この対立遺伝子間の相互作用においても重要な役割を果たしており、本領域研究によってこれらの機構解明が加速することを期待しています。
Monoallelic gene expression and its mechanisms
Tarutani, Y., and Takayama, S.
Curr. Opin. Plant Biol. (2011) 14, 608-613.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21807553

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Monoallelic gene expressionの例

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