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研究成果がJournal of Experimental Botanyに掲載されました

アブラナ科植物は、S遺伝子座にコードされた花粉因子SP11(リガンド)と雌ずい因子SRK(受容体キナーゼ)との相互作用を介して自己を認識し、何らかの不和合性反応を誘起することで自己花粉を排除していることが示されてきています。一方、この自家不和合が高濃度のCO2ガス存在下では打破されることが古くから知られており、育種の現場では自殖種子の生産のための実用化技術として利用されてきましたが、この打破の機構は不明のまま残されています。今回我々は、同じアブラナ科Brassica rapaの中にも、CO2処理により自家不和合性が容易に打破される系統と強固に打破されない系統が存在することに着目し、その原因を遺伝学的に明らかにすることを試みました。両系統の後代の解析からCO2感受性が複数の遺伝子座の量的形質により支配されていることが示されたため、鈴木班の諏訪部博士の協力を得てQTL解析を行いました。その結果、主要責任座位を染色体3番と5番上の2カ所に絞り込むことができました。今後さらに解析を続け、原因遺伝子を同定し、自家不和合性打破の機構を明らかにしていく予定です。
Physiological and genetic analysis of CO2-induced breakdown of self-incompatibility in Brassica rapa
Lao, X., Suwabe, K., Niikura, S., Kakita, M., Iwano, M., Takayama, S.
J. Exp. Bot. (2014) 65, 939-951.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24376255
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研究成果がPCP(Plant Cell and Physiology)に掲載されました。

研究成果がPCP(Plant Cell and Physiology)に掲載されました。今回の成果は、アブラナ科植物を材料に受粉領域である柱頭先端の細胞をレーザーマイクロダイゼクション法にて組織特異的に単離し、次世代シーケンサーを用いて大量解析を行ったものをまとめたもので、高山班矢野班班友・清水博士との共同研究の成果です。

植物の生殖過程において雌ずいと雄ずいが最初に出会う「受粉」は、雌しべ先端の乳頭細胞にて誘起されます。近年、シロイヌナズナをはじめ、アブラナ科植物において多くの植物生殖に関わる研究が報告されていますが、それらを制御する分子メカニズムについてはほとんどが解明されていません。本研究では、3種のアブラナ科植物Arabidopsis thaliana, A. halleri, Brassica rapaを用いた、乳頭細胞に限定した発現遺伝子群の情報基盤構築と特徴づけを行いました。上記3種の植物種それぞれから、レーザーマイクロダイゼクションによって受粉領域である乳頭細胞を特異的に単離し、次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析により乳頭細胞で機能する遺伝子群を網羅的に同定しました。得られた乳頭細胞発現遺伝子群をバイオインフォマティックス解析することで、60%を超える遺伝子が3種間で共通することを明らかにしました。また、受粉関連や乳頭細胞の発達・代謝関連、転写因子、シグナル伝達関連等の遺伝子を同定し、それらが受粉システムや乳頭細胞の分化・発達に機能していることを予測しました。これらデータは、植物生殖の分子機構を理解するうえで有用な情報基盤になると考えられます。今後、本研究で見出した遺伝子発現情報基盤をもとに、更に詳細なバイオインフォマティクス解析による受粉関連遺伝子の選抜や個々の遺伝子機能の調査を行い、受粉分子機構の全貌を解明していきたいと思います。


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 また、本稿はその成果が評価されPCP 11月号の表紙に選ばれました。さらにPCP HP上ではResearch highlightsとして紹介されています。Open accessですので、ぜひ、ご一覧頂ければ、幸いです。 

Cell type-specific transcriptome of Brassicaceae stigmatic papilla cells from a combination of laser microdissection and RNA sequencing

Osaka, M., Matsuda, T., Sakazono, S., Masuko-Suzuki, H., Maeda, S., Sewaki, M., Sone, M., Takahashi, H., Nakazono, M., Iwano, M., Takayama, S., Shimizu, K.K., Yano, K., Lim, Y.P., Suzuki, G., Suwabe, K, and Watanabe, M.

Plant and Cell Physiology (2013) 54: 1894-1906.

(URL: http://pcp.oxfordjournals.org/content/54/11/1894.full.pdf+html)

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研究成果がG3(Genes Genomes Genetics)に掲載されました

研究成果がオンラインジャーナルのG3(Genes Genomes Genetics)に掲載されました。今回の成果は、鈴木班のメインプロジェクトの1つです。アブラナ科植物の生殖隔離に関連した不和合現象の遺伝学的解析をまとめたもので、高山班との共同研究の成果です。

受粉時における一側性不和合性(UI)は近縁種間の交雑時に頻繁に観察される受精拒絶システムの一つです。花粉親、雌しべ親ともに正常な個体において、雌雄の特定組み合わせでの受粉は成功するにもかかわらず、雌雄を入れ替えた逆交配では受精に至りません。本研究では、B. rapaの同一種内で確認されたUI機構について遺伝学的手法を用いて解析を行いました。その結果、雌しべ側制御因子は、自家不和合性制御遺伝子座(S遺伝子座)とは異なる1遺伝子座により支配されることが明らかになりました。また、以前に報告していた花粉側制御因子との強い連鎖が見られたことから 両制御因子が近接して存在していることが示されました。この遺伝子座領域に存在する雌しべ側制御因子をSUI、 花粉側制御因子をPUIと名付けました。さらに、SUIと自家不和合性との関連を明らかにする目的で、自家不和合性関連因子MLPKの突然変異体を用いた遺伝分析を行った所、変異型mlpk背景ではUIが打破されることを見いだしました。これら結果から、自家不和合性と反応機構を共有しつつ、種内UIを引き起こす花粉・柱頭認識因子の存在が明らかになりました。

Involvement of MLPK pathway in intraspecies unilateral incompatibility regulated by a single locus with stigma and pollen factors.  

Takada, Y., Sato, T., Suzuki, G., Shiba, H., Takayama, S., and Watanabe, M.

G3 (Genes Genomes Genetics) (2013) 3: 719-726.
【アドレス】http://www.g3journal.org/content/3/4/719.abstract

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研究成果がGenes & Genetic Systemsに掲載されました

アブラナ科植物の自家不和合性研究は、Brassica rapa, Brassica oleraceaなど強固な自家不和合性を有する植物種を使って進められてきました。しかし、これらの自家不和合性種は、植物体が大きい、世代時間が長い、形質転換体の取得が困難といった研究上の問題点を抱えていました。一方、本領域の鈴木班と班友の清水健太郎博士との共同研究や、米国コーネル大学の研究により、自家和合性のモデル植物Arabidopsis thalianaが自家不和合性を制御するS遺伝子座に変異を持つこと、この変異を修復すると自家不和合性を再獲得することが明らかにされてきました。しかし、恐らく他の遺伝子変異等の影響により、B. rapaの様な強固な自家不和合性を再獲得するA. thalianaはC24など比較的少数の系統に限られており、Col-0などを中心に整備されてきた遺伝子資源の多くが自家不和合性研究に利用できないといった問題が指摘されてきました。今回我々は、A. thaliana C24を用いてTILLING (Targeting Induced Local Lesions IN Genomes) に利用可能なリソースを作出すると共に、このリソースが実際に逆遺伝学的解析に利用できることを実施例で示しました。本リソースの整備により、本領域研究で扱うアブラナ科植物の自家不和合性機構や優劣性機構の解明が加速するものと期待しています。
A TILLING resource for functional genomics in Arabidopsis thaliana accession C24
Lai, K.S., Kaothien-Nakayama, P., Iwano, M., Takayama, S.
Genes Genet. Syst. (2012) 87, 291-297.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23412631
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高山誠司領域代表が日本農学賞・読売農学賞を受賞されました

ゲノム・遺伝子相関領域代表の高山誠司奈良先端大教授が第84回農学賞ならびに第50回読売農学賞を授与されました。日本農学賞は、大正14年から続く歴史と伝統があり、農学分野では最高の栄誉賞として位置づけられています。同賞は、農学分野の技術や学問分野に顕著な貢献をした研究者に授与されます。今回の受賞は、高山先生が長年続けられてきた、アブラナ科植物とナス・バラ科植物を材料にした、植物の自己と非自己の認識機構の研究成果が高く評価されたものです。本研究はいわゆる「植物の自家不和合性」として知られており、その分子機構の解明は、多くの生物種がいかにして自他を認識しているかという基本的仕組みの理解に大きく貢献しています。授与式ならびに受賞講演は、第84回日本農学大会にて4月5日東京大学山上会館にて行われる予定です。(木下@奈良先端大)


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