東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

タイミング、情報収集、次の一手 (2/11)

2013年2月11日 (月)

 アブラナを使った実験を初めて、25年くらいだろうか。花を使った実験であるので、最初は、ポットに苗作りをして、本葉が5-6枚にして、8号鉢(直径24cmくらい)に移植する。植えたあとには、アブラナが耐肥性が強いこともあって、通常の栽培より多め、というか、頻繁に施肥を行う。その分、葉っぱが緑と言うより、深緑、黒に近いような葉っぱにする。ところが、こんなに栄養いっぱいのアブラナになると、虫、病気にすかれる。そんなこともあって、病害虫防除は、欠かせない。というか、このタイミングを逸すると、あっという間に、病害虫にやられてしまう。花が咲く前までは、葉っぱの色は濃いが、花咲いてくると、施肥をしても、どうやら、花の方にたくさんの栄養が必要らしく、葉っぱの色が落ちてくる。というか、花が咲くまでにどれだけ葉っぱに栄養をためたかで、花の数が決まってくる。もちろん、たくさんの花を咲かせるために、主茎がみえたら切除して、分枝させることで、よりたくさんの花を咲かせる。雌しべの先端の柱頭、雄しべの先端の葯をよりたくさん集めないと、実験が成り立たないからである。というか、この一連の栽培の様々なタイミングをつかむのには、もちろん、たくさん栽培することかも知れないが、アブラナの日々の変化を観察すると言うことが大事なのかも知れない。

 観察をすると言っても、24hr観察し続けることはできない。仙台であれば、ガラス室で、加温しなくても、まず、アブラナが凍ることはない。盛岡でいた8年弱には、-10oCを下回ることもあり、葉っぱが凍って困るので、0oCくらいになるまで加温した。必要に応じて、いかに正しい情報を収集できるかが問題となる。これは実験に限ることではない。何をやるにも、今、そのtargetとしている事象が、どの様になっており、どう変化しているのかと言うことを正確に観察して、理解する必要がある。ただ、情報収集をすることは考えているより、はるかに難しい。internetがあり、何でも分かると思っているのかも知れないが、花粉と柱頭の相互作用を考えたときでも、花粉表面、柱頭表面にあるもの全ての記述さえできていないというか、現状の科学力でも無理がある。ただ、可能な限り、正確な情報を集めて、正しく判断することが、次なる発展をもたらす第一歩であることは間違いない。言い換えるならば、スポーツであれば、戦う相手によって、戦術を変えたり、メンバーをかえたりするのは当たり前である。そうしたことをふまえて、今やろうとしていることに対する相手というか、対象によって、やり方、方法を変えると言うことである。

DSCN5207.JPG では、十分に情報収集をして、物事のタイミングをみることができたとき、「次の一手は」となると、すぐには。。。もちろん、現時点でできる、最大限のことを努力することは、当然かも知れない。ただ、大きな飛躍を考えたとき、「次の一手は」を考えると、「転機」と言うことが重要になるだろう。自分の実験を考えたときも、特定の研究室でしか扱えなかった「遺伝子実験」。これが、1990年頃からできるようになった。その時代の転機というか、流れを見逃さずに、やってみたこと。それも、それまでの多くは、RI(放射性同位元素を使った実験系)を使ったものだったのが、non-RI(放射性同位元素を使わない実験系)によるもの。そのやろうとしたというか、できるという時期に、non-RIが登場しなかったら、。。。。今の状況にはなってなかったのかも知れない。つまり、「次の一手」を考えるとき、時代の転機なのかどうなのか、そうしたことも考えないといけないのではないだろうか。。。結構、難しいことかも知れないが。。。ひさしぶりに、大学時代の師匠の日向先生とお会いして、話したことで、こんな学生時代のことを思い出し、脳みその整理ができた1日でした。師匠に感謝しつつ。。。


 わたなべしるす

 PS. 日向先生が、「文章は書かないと上手にならないと。。たくさん書きましょう。」と。いっておられました。時代は変わっても同じなのだなと。。。。

DSCN5022.JPG

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