東北大学大学院生命科学研究科 植物分子育種分野 渡辺研究室

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News Release

【新聞記事掲載】「科学者の卵養成講座」エクステンドコース・第1回実験の様子、新聞記事として発表(8/21)

2010年8月21日 (土)

 7/30, 8/2-6に「科学者の卵養成講座」エクステンドコース・第1回実験を実施しました。その際に、河北新報から取材を受けましたが、そのときの模様が、けさの河北新報に掲載されました。河北新報のHPに記事が出ております。お時間の許す限り、ご覧ください。

DSCN4422.JPG 記事にもあったとおり、9月以降にはさらに発展した形の実験・研究を展開し、このHP「科学者の卵養成講座」のHPでも報告しますので。おたのしみに。


 わたなべしるす

DSCN4444.JPG


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【研究成果】:アブラナ科植物の自家不和合性における対立遺伝子間の優劣性発現メカニズムに低分子RNA・DNAメチル化が関与を世界初で証明、英国・科学雑誌「Nature」(8/19, 8/24一部改訂)

2010年8月19日 (木)

 渡辺の研究室は、これまで、アブラナ科植物の自家不和合性における分子メカニズムの解明を行ってきました。その過程でいくつかの論文発表を行い、エポックメイキングな発見をしてきました。

キャベツ・ブロッコリー.jpg 今年の4/19の電子版4/29の刷子体として、モデル植物のシロイヌナズナの花粉側S遺伝子(SCR/SP11)の一部を改変し、再び、遺伝子導入することで、自家不和合性のシロイヌナズナを作製することに世界で初めて成功し、英国・科学雑誌「Nature」に掲載されたことを報告しました。この成果に引き続き、今回はアブラナ科植物の自家不和合性に見られるS対立遺伝子間での優劣性発現現象に低分子RNA・DNAメチル化が関与していることを正解で初めて証明し、英国・科学雑誌「Nature」に、日本時間8月19日午前2時(ロンドン時間の8月19日午後6時)に掲載されました。なにより、4ヶ月という間に、2度の「Nature」誌への掲載という栄誉によくしたことに、感謝したいと思います。この研究は奈良先端大の高山教授グループとの共同研究であり、ここ10年あまりの研究が大きく花咲いたことに感謝したいと思います。

 さて、研究内容ですが、遺伝学の祖といえば、メンデルであり、「メンデルの遺伝の法則」は有名です。その法則の1つに優性の法則というのがあります。よく遺伝子、遺伝子といいますが、これは、英語の「gene」に当たるものが多く、その遺伝子が染色体上・ゲノム上のどこにあるかというのが、遺伝学でいう「遺伝子座」=「locus」になります。その遺伝子座の上にのっている遺伝子のことを「対立遺伝子」=「allele」といいます。つまり、特定の遺伝子座についてみれば、両親から1つずつの対立遺伝子(allele)をもらうことになります。対立遺伝子には、優性(仮にAとする)と劣性(仮にaとする)があり、この対立遺伝子を1対ずつ、両親からもらうと、子どもの世代では優性・劣性の対立遺伝子を持ったヘテロ個体(Aa)ができあがります。このとき、表現型として表に現れる方を優性(A)といい、隠れる方を劣性(a)といいます。少し説明の順番が逆になりましたが。これまでの多くの遺伝子レベルの研究から、優性の対立遺伝子には、「機能できるタンパク質」がコードされており、劣性の対立遺伝子では、その優性対立遺伝子の一部、あるいは全部に変異が起きていて、正常なタンパク質を作ることができない。だから、劣性対立遺伝子がホモとなった個体(aa)では、植物体に何らかの異常がでる(もちろん、見かけ上でない場合もありますが。。)ということになり、劣性になると良くないというようなイメージがあります。これは、対立遺伝子が2対の場合であり、アブラナ科植物の自家不和合性のように複対立遺伝子、つまり、3つ以上の対立遺伝子からできている場合はどうなるのでしょうか。これがそもそもの研究の出発でした。

 研究材料としている、アブラナ科植物のカブ、ハクサイ、ミズナの仲間であるBrassica rapaについて、遺伝学的にS対立遺伝子間の優劣性を決めたところ、いくつかの特徴がありました。特に花粉側では、直線的な優劣性関係が成立していたということです(Hatakeyama et al. 1998, Kakizaki et al. 2003)。つまり、S9>S44>S60>S40>S29という。この場合、S9は常に優性ですし、S29は絶対的に劣性です。ところが、不思議なことに、S44, S60, S40というのは組合せの相手によって、優劣性関係が優性にも劣性にも変化する。さらに、劣性ホモになったからといって、自家不和合性の形質を失う訳ではないという興味深い特徴がありました。このことは、遺伝子配列を変えず、ヘテロ個体からホモ個体ができるという世代を超えたとき、劣性として隠れていたものは、元に戻れるということができる必要があります。このような後生的に変化をさせるということから、エピジェネティックな遺伝子制御が機能していることを予想していました。2006年に、この優劣性発現に、SP11遺伝子のプロモーター領域のメチル化が関与していることをNature Geneticsに発表しました(Shiba et al. 2006)が、どのようなことがきっかけとなって、この劣性対立遺伝子特異的にDNAメチル化が誘導されるか不明でした。

 今回の実験では、優性、劣性対立遺伝子のS遺伝子座ゲノム構造を比較解析したところ、劣性SP11対立遺伝子の発現を制御するプロモーター領域(この領域がメチル化されることによって、遺伝子発現が抑制される)と高い相同性があり、かつ逆反復配列となった遺伝子構造をした領域を優性S対立遺伝子の中に見つけました。興味深いことに、この配列からは、低分子RNA(small RNA, sRNA)が、SP11と同様に、タペート細胞特異的に発現していました。この低分子RNAが劣性対立SP11遺伝子の相同領域のDNAメチル化を誘導していると考え、この低分子RNAをコードした領域を劣性S遺伝子系統に導入したところ、SP11遺伝子の発現は抑制され、プロモーター領域のメチル化も誘導されていました。つまり、低分子RNA、メチル化というエピジェネティックな遺伝子発現が自家不和合性の優劣性には機能しており、この遺伝子抑制メカニズムが、従来からの古典的な優劣性とは異なり、新規な分子メカニズムを提唱していたことから、このことが評価され、英国・科学雑誌「Nature」に掲載されました。

080429_DSC0945.JPGTrans-acting small RNA determines dominance relationships in Brassica self-incompatibility pp983-986
doi:10.1038/nature09308
Abstract: http://links.ealert.nature.com/ctt?kn=65&m=35704284&r=MjA1NjAyNDkwMQS2&b=2&j=Nzk5MDQ5OTUS1&mt=1&rt=0
Article: http://links.ealert.nature.com/ctt?kn=67&m=35704284&r=MjA1NjAyNDkwMQS2&b=2&j=Nzk5MDQ5OTUS1&mt=1&rt=0


 前回のNatureに掲載された論文では、「ダーウィン」の古典的な研究が基礎にありましたが、今回は、「メンデル」という遺伝の祖の研究に新しい概念を提唱できたことは、望外の喜びであります。また、この分子メカニズムを利用することで、遺伝子発現を自由にオン・オフできる可能性があり、植物・作物の品種改良にも新しい概念を導入できるのではないかと思っております。

  今後は前回のNatureでの成果と今回の成果をあわせて、自家不和合性研究、植物科学研究に新展開をもたらしたいと思います。


わたなべしるす

PS. News and Viewsにこの論文の内容の解説とする記事をいつも研究の競争相手であるトロント大学のProf. D. Goringが書いてくれていたのは、感動でした。

Gene expression: How plants avoid incest pp926-928
doi:10.1038/466926a
http://links.ealert.nature.com/ctt?kn=358&m=35704284&r=MjA1NjAyNDkwMQS2&b=2&j=Nzk5MDQ5OTUS1&mt=1&rt=0


また、大学HPのtop大学英語HP生命科学研究科HP東北大学「科学者の卵」HPにも関連記事を掲載しているので、ぜひ、ご覧ください。

PS.のPS. プレスにも取り上げて頂き、渡辺の方からアナウンスしたものでは、河北新報に掲載されました。取材は先週でしたが、取材のおりに、早稲田大学のインターの学生さん3名も一緒の取材でした。いつも1名の記者の方とのお話なのが、4名への説明でしたが、学生さん3名もとても熱心に取材頂き、未来の記者の姿を見たような気がしました。ありがとうございました。次の大きな研究発表では、ぜひ彼らにも取材頂きたいと。。。。
なお、当日の河北新報のアクセス件数では、トップでした。感謝です。

http://www.kahoku.co.jp/news/2010/08/20100819t15032.htm

また、奈良先端大の高山先生の方で記者発表を頂いた関係で、そうした記事も以下の新聞社に取り上げて頂きました。ありがとうございました。

http://sankei.jp.msn.com/science/science/100819/scn1008190200000-n1.htm
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0720100819eaah.html
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E3EAE2E4E28DE3EAE2EAE0E2E3E29180EAE2E2E2;at=DGXZZO0195579008122009000000
http://osaka.yomiuri.co.jp/university/research/20100819-OYO8T00383.htm

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【研究成果・受賞】5/11発表のPNASの論文が、Faculty of 1000 Biologyに推薦(7/30)

2010年7月30日 (金)

 高等植物の高温障害で起きる雄性不稔を植物ホルモン・オーキシン処理で回復、米国科学アカデミー紀要「PNAS」5月11日号に掲載 (生命科学・東谷研との共同研究)ということをお知らせしました。この研究内容は、これまでに多くの新聞紙上プロジェクトHPで取り上げて頂きました。

 今回、この論文が、「Faculty of 1000 Biology」に推薦頂きました。この「Faculty of 1000 Biology」というのは、世界の2,000名を超えるトップ研究者からの推薦に基づき、生物科学に関する論文で興味深い者が評価されるものです。

DSCN4254.JPG 何より、様々な方面から、評価を頂けるのはありがたいことです。


わたなべしるす

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【お知らせ】ダイコン多様性研究コンソーシアムとの共催による「研究者」という職業~第一線の研究者が語るキャリア教育講演会~(8/21(土))

2010年7月28日 (水)

 鹿児島県立錦江湾高校が主幹校をしている「ダイコン多様性研究コンソーシアム」研究の夏の研究発表会が8/18-20で行われ、運営指導委員を行っていることから、今年の夏も、鹿児島へ伺います。このSSHの活動とリンクする形で、今年は高校生向けの講義を行います。東北大の科学者の卵養成講座、SSH、高校、小学校への出前講義で、リクエストの高い「キャリア教育講演会」を企画しました。あわせて、渡辺がここ20年あまり研究を行っている「アブラナ科植物の自家不和合性」についてもお話しします。ダイコンがアブラナ科であり、自家不和合性をもっていることが関係しているわけですが。。開催の日時、場所は、

 日時:2010年8月21日(土) 10:00-15:00
 場所:鹿児島県立博物館(研修室3F)

 午前が、自家不和合性研究、午後がキャリア教育になります。申込が必要になりますので、鹿児島県立錦江湾高校・生物室・讃岐先生(Tel: 099-261-2121)へ、ご連絡下さい。

 昨年も多くの小中学生にダイコンの不思議を教育しましたが、今年は、高校生、楽しみにしております。


 わたなべしるす

PS. 関連記事が、ダイコンコンソーシアムのHPにもありますので。そちらもお時間のある方は、どうぞ。

↓の画像クリックでポスターのjpg版がダウンロードできます。pdf版はこちら(file size 1.73MB)

1007SSH_A3_2.jpg

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【お知らせ】JST 平成22年度SSHパンフレットに、記事・写真掲載(7/19)

2010年7月19日 (月)

 ここ数年、SSHのいくつかの活動をサポートしてきました。コンソーシアム・コアSSHのサポート、運営指導委員、出前講義などなど。そのような活動を評価いただいたのか、JSTで発行している平成22年度SSHパンフレットの表紙のSSHと書かれている右のまる囲みの写真が、昨年のダイコンコンソーシアムの遺伝学実験の指導の様子です。さらに、5ページには、全国コンソーシアムという項目で、鹿児島県立錦江湾高等学校が取り上げられており、ダイコン多様性研究を行い、東北大学大学院生命科学研究科が、サポートしていると。

 渡辺がアブラナ科植物の自家不和合性を研究しており、ダイコンはアブラナ科野菜の中でも重要な位置を占めており、根っこの形態の多様性はとても興味深いものです。昨年から始まり、今年からはコアSSHとしてスタートし、運営指導委員を同様にお願いされております。

 できるだけこうした活動をこれからもサポートできればと思います。

 お時間のある方は、

 平成22年度SSHパンフレット
 (PDFはこちら file size 6.7M

RIMG0530.jpg
 わたなべしるす 

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