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トゲウオY染色体に残存する遺伝子群の特徴

トゲウオの性染色体のゲノム解析を行い、その成果がMolecular Biology and Evolutionにオンライン掲載されました。

White, M. A., Kitano, J., and Peichel, C. L. (2015) Purifying selection maintains dosage-sensitive genes during degeneration of the threespine stickleback Y chromosome. Molecular Biology and Evolution (http://mbe.oxfordjournals.org/content/early/2015/03/25/molbev.msv078.abstract)

Y染色体の非組換え領域と呼ばれる領域は、X染色体との間に組換えがないことから、有害な変異が蓄積し遺伝子機能を急速に失うと考えられています。一方で、生き物の生存にとって発現量の厳密なコントロールが必要な(dosage-sensitive)遺伝子は、Y染色体上でも純化選択によって残存するということが、哺乳類のY染色体の研究例から示されていますが、分類群を超えた普遍性は不明です。

今回、我々は、トゲウオのゲノム配列と遺伝子発現を解析することによって(1)トゲウオにはY染色体の遺伝子が失われた時に量的補償と呼ばれるX染色体上の遺伝子の発現量を変化させて補償する仕組みがないこと(2)Y染色体の非組換え領域には有害変異が蓄積しているものの、いまだ残存する遺伝子群は、哺乳類や酵母において遺伝子発現量が低下すると致死的であることが知られている遺伝子群であったり、タンパク複合体を構成する遺伝子群であったりすることから、dosage-sensitiveな遺伝子が多いことが明らかになりました。これは、哺乳類で最近明らかになった知見が魚でも共通であることを示しています。本成果は、フレッドハッチンソンがん研究所との共同研究で、北野研究室では、トミヨ属のゲノム配列とRNA配列の決定を、新学術領域研究のゲノム遺伝子相関の一部支援のもとで行いました。

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研究成果がPlant Journalに掲載されました

花芽形成の運命決定因子・フロリゲンが、移動性の分枝促進シグナルとしても機能していることを発見しました。また、フロリゲンが花芽形成や分枝促進といった異なる機能を使い分けるメカニズムが、フロリゲン活性化複合体の転写因子サブユニットの交換である可能性を示しました。

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日本育種学会奨励賞を受賞しました

日本育種学会第127回講演会(玉川大学)にて、2014年度日本育種学会奨励賞を受賞いたしました。対象となった研究は「花成ホルモン・フロリゲンの機能に関する遺伝育種学的研究」です。

花芽をつける植物ホルモン・フロリゲンの受容体発見と活性本体となる複合体の同定、その育種的応用を視野に入れた研究を評価いただきました。ご指導いただいた皆様、共同研究者の皆様、ともに研究を進めた大学院生の皆さんに感謝いたします。

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研究成果が新聞に紹介されました

アウトリーチ/広報


 山元らは、遺伝的に性指向性が変化して雄がもっぱら雄に求愛するようになったショウジョウバエのsatori変異体について長年研究してきました。ようやく最近になり、satori変異体雄を羽化後単独で飼って他の雄から隔離すると、その後、雄への求愛をわずかしかしなくなることを知るに至りました。山元班の古波津は、野生型の雄をトレッドミルに乗せて脳の特定のニューロン(P1)を刺激しながらコンピュータディスプレイ上の動く光点を見せると、雄がこの光点を追って求愛することを発見しました。satoriの雄は、P1ニューロンへの刺激がない状態でも動く光点に求愛し、しかもこの"無差別求愛"は他の雄との接触を断って飼われた雄では見られないことから、satoriの同性愛求愛と同様に、社会経験依存的であるとしました。この成果が、朝日新聞の科学面で紹介されています。

 

出典:恋の相手は育ち方で変わる・・・、朝日新聞科学面、2015年4月23日、朝刊。

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動植物の有性生殖システムは多様性に富んでおり、雌雄同体(多くの被子植物やカタツムリなど)から雌雄異体(ヒトやアスパラガスなど)が何度も進化したと考えられている。その進化の中間段階として、両性個体と雌(雄性不稔)が共存する雌性両全性異株gynodioecyが考えられている(ハマダイコンなど)。一方、その逆に、両性個体と雄(雌性不稔)が共存する雄性両全性異株androdioecyについては、チャールズ・ダーウィンが1877年に調査の限りで存在しないと述べている。ダーウィン以降、動植物それぞれ数例程度(C. elegansなど)が報告されてきていた。雄個体が存在し続けるためには、精子または花粉を通じて2倍以上の子孫を残すという厳しい条件を満たす必要があるというのが、雄性両全性異株が稀であることの理論的背景である。

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我々はシロイヌナズナ近縁種の繁殖システムを研究する中で、スイスなどの川沿いに生育するタネツケバナ属Cardamine amaraが雄性両全性異株を持つことを予想外にも発見した。雄個体では雌しべが未発達で、種子を作れなくなっていた(写真、バックグラウンド:Cardamine amara, 左:両性個体の花、右:雄個体の花)。これまでの理論的・実証的研究では、花ごとの花粉数は雄が2倍以上であることが予想され、また雄の頻度は50%以下であるはずだが、Cardamine amaraどちらも満たしていないように見えた。マイクロサテライトマーカーを用いて個体識別をしたところ、雄個体は種子をつくれないかわりに、無性繁殖によって川の流れに沿って多数のクローンを増やしていることがわかった。つまり、クローンを含めて考えれば雄の花粉数は2倍以上であり、遺伝子頻度で見れば雄は50%以下という条件を満たしていた。シロイヌナズナに近縁であることを活かして、マイクロアレイ解析を行い、雌しべ発生などの遺伝子の発現量が有意に異なることがわかった。今後、雄のゲノム進化のモデル系にしていきたい。


 ナショナルジオグラフィックのインタビューでも紹介されています。 


Tedder, A., Helling, M., Pannell, J.R., Shimizu-Inatsugi, R., Kawagoe, T., van Campen, J., Sese, J., and Shimizu, K.K. (2015) Female sterility is associated with increased clonal propagation in populations of Cardamine amara (Brassicaceae), Annals of Botany, 115: 763-776

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