文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究」
研究成果
山元班の濱田らによるScience掲載論文の内容を紹介する邦文総説、『チロシンキナーゼBtk29Aはショウジョウバエの卵巣のニッチにおいてWntシグナル伝達系を増強することにより生殖幹細胞の増殖を停止させる』をライフサイエンス新着レビューに発表しました。
出典
http://first.lifesciencedb.jp/archives/8332
図
山元班の濱田(川口)典子らは、ショウジョウバエ卵巣の生殖幹細胞に対して増殖停止を働きかけるニッチの役割を解明し、2014年1月17日発行のScienceに発表しましたが、その成果はさまざまなメディアの取り上げるところとなりました。新聞では、朝日新聞(1月23日朝刊21面)、毎日新聞(1月23日朝刊17面)、河北新報(1月17日25面)に、Webでは、
QLifePro:
http://www.qlifepro.com/news/20140127/genetic-mechanisms-prevent-the-brake-ovarian-tumor-cell-proliferation.html
日経プレスリリース:
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=353156&lindID=5
Yahoo news:
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140117-00000154-mycomj-sci
研究成果
山元班の濱田(川口)典子らは、ショウジョウバエの卵巣で二次生殖幹細胞の増殖をオン‐オフするニッチで働くスイッチ機構を解明し、2014年1月17日付のScienceに発表しました。
ショウジョウバエの卵巣小管の基部には体細胞で構成されるニッチに囲まれて生殖幹細胞が存在し、分裂のたびに自身と同じ生殖幹細胞と、のちに分化経路に入るべく運命づけされた二次生殖幹細胞=シストブラストの二つの細胞を生み出してゆきます。シストブラストはその後4回の分裂によって16個の生殖細胞を作り、うち1個だけが卵細胞へと分化して、残りは哺育細胞となります。濱田らは、Btk29AというTECファミリーの非受容体型チロシンキナーゼの機能喪失型変異体では、シストブラストが分化に向かわず増殖し続ける結果、卵巣に腫瘍が生じることを見出しました。詳細な解析の結果、正常型Btk29Aはシストブラストそのものの中で働くのではなく、ニッチを構成する体細胞で機能し、b-cateninのチロシンリン酸化を介してpiwiの転写をup-regulateする結果、シストブラストの増殖をニッチ側で抑制していることが判明したのです。チロシンリン酸化されたb-cateninがpiwiの転写を直接活性化するのか否か、ニッチから出されるシストブラスト増殖停止シグナルの実体は何か、などは今後の課題として残されています。
本研究は、幹細胞に"外"から働きかけて増殖を止めさせる仕組みの実像に迫る大きな一歩であり、幹細胞制御に新たな突破口を提供する画期的成果です。
出典:Hamada-Kawaguchi, N., Nore, B., Kuwada, Y., Smith, C. I. E. and
Yamamoto, D. (2014) Btk29A promotes Wnt4 signaling in the niche to terminate
germ cell proliferation in Drosophila.
Science 343, 294-297.
http://www.sciencemag.org/content/343/6168/294.long#corresp-1
図
Wnt4機能低下型突然変異体の卵巣小管基部のニッチ[濱田(川口)原図]
アウトリーチ活動
リクルートの運営する無料ウェブマガジン「ゼクシイ」で、山元が男女の相性と遺伝子型(HLA)が関係するという実験について話題提供をしました。
出典:
http://zexy.net/contents/lovenews/article.php?d=20131022
図:山元の話を載せた「ゼクシイ」の1ページ
アウトリーチ
東京FMのラジオ番組『中西哲生のクロノス』の中で、現代日本の恋愛は衰退しているか、生物学者として私見を披瀝しました。『中西哲生のクロノス』では「恋愛格差社会〜プア充世代のXmas〜」と銘打った特集を組んでおり、2013年12月12日朝8時台の全国放送と東京限定放送の両方に登場しました。
図:放送日の『中西哲生のクロノス』を紹介するweb page