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【遺伝研】北野班の記事を表示しています

公開講演会2012開催

11/3(土)に秋葉原にて、国立遺伝研の公開講演会が開催されました。北野も「新しい種はどのように誕生するか〜トゲウオの例〜」と題して講演を行いました。事前参加登録が170名を超えるという大盛況でした。一般の方への講演や質疑応答は、なかなか難しかったですが、遺伝研での博士教育に興味のある方の参加も半数を超えており、興味をもってもらった学生もいたのでよかったです。


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アウトリーチ活動

10月26日に富士高校の学生さんが、遺伝研にフィールドワークで来られました。午前中は講義、午後は研究室見学をしていただきました。熱心に聞き入り、反応のよい学生さんもいて、将来の研究者が一人でも育ってくれればと願います。

R0010898.JPGのサムネール画像

説明する北野と聞き入る学生さん

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北野班の石川研究員が受賞

国立遺伝学研究所の生態遺伝学研究室の石川麻乃研究員(学術振興会特別研究員)が、米国シアトルで開催されました第7回国際トゲウオ学会(Stickleback2012)で、最優秀口頭発表賞のポスドク部門の第1位を受賞しました。

国際トゲウオ学会は、トゲウオを題材に研究する100人以上の世界中の研究者が3年に一度集まり、ゲノミクス、生態学、進化生物学、生理学など多様な分野について議論する学会です。今回は、シアトル市近郊のベインブリッジ島にて7月29日から8月3日まで5泊6日で行われ、未発表の最先端の研究成果が報告されるとともに活発な議論が行われました。学会の合間の活発な議論の中から共同研究が発生して行くというトゲウオを題材に研究する者たちにとっては大変意義深い学会です。

私に加え、北野研究室の石川研究員、吉田研究員、ラビネット研究員が、アメリカ遺伝学会のポスドク参加助成を得まして国際トゲウオ学会(米国シアトル)で口頭発表を行いました。

このトゲウオ学会にて、石川研究員は、海と淡水を回遊する回遊型イトヨと淡水に一生とどまる淡水型イトヨについて、日の長さに応じて表現型を変化させる表現型可塑性(Phenotypic plasticity)の遺伝子発現レベルでの違いをまず明らかにし、その遺伝基盤を網羅的なゲノムスクリーニングから古典的な掛け合わせまでを駆使して明らかにしていくというゲノム遺伝子相関が進化して行くプロセスのメカニズムを解明するプロジェクトの進展について発表しました。その学際的な手法が高く評価され、言葉の壁を越えて欧米の学者を押さえて受賞しました。

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(写真の説明)第1位の景品のワイン(トゲウオという名前のワイン)を前に、景品のイトヨのぬいぐるみを手に喜ぶ石川研究員(右)と祝福するラボメンバー


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総説がThyroid Hormoneに掲載されました

ホルモンは、環境刺激に応答して体内の生理機能を調節します。したがって、異なる環境に生育する生物にとっては異なったホルモン調節機構が有利であることから、集団間でホルモン調節機構の分化が起こると考えられます。我々は、以前にトゲウオの甲状腺ホルモンについて、そのような例を見つけました(下図)。今回の石川麻乃研究員と執筆した総説では、ヒトも含めた生物で甲状腺ホルモンシグナルの変異がどの程度存在するのか、どういった環境への適応と考えられるのか、どういった遺伝基盤によるのか、についてこれまでに知られていることを整理しました。その結果、以下のようにヒトと動物で4つの共通点を見いだしました。

(1)ヨード不足によって起こるゴイターの起こりやすさに遺伝的変異があり、生育環境のヨード量と関連があるかもしれない。
(2)緯度間変異や人種間変異の原因の一部は、環境の温度に対する適応におそらく由来する。
(3)甲状腺ホルモンの変異と寿命に相関があるかもしれない。
(4)ゲノムスキャンの結果、甲状腺関連遺伝子が選択の標的になることが多々見つかる。

我々のグループでは、トゲウオを中心に環境適応の結果としてどのようにゲノムの分化が起こるかを研究していますが、ヒトとの共通点も見られたことからヒト遺伝学や医学など多様な分野の情報を融合して行くことで新しい研究の発展が見込まれると期待されました。オープンブックのチャプターですので、気軽に一読頂き、領域内外の多くの方々と有意義な議論へ発展していければ幸いです。

Ishikawa, A., and Kitano, J. (2012). Ecological genetics of thyroid hormone physiology in humans and animals. In: Thyroid Hormones  (N. K. Agrawal Ed.) p.37-50, InTech

http://www.intechopen.com/books/thyroid-hormone/ecological-genetics-of-variation-in-thyroid-hormone-physiology

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研究成果がEvolutionに掲載されました

我々の体の設計図である遺伝物質DNAは、「染色体」という構造をとって体の中に入っています。染色体には、くびれが真ん中にあるような中部動原体染色体とくびれが端にあるような末端動原体染色体とがあります。

このたび我々の研究グループは、常染色体の形と性染色体の進化との間に強い相関があることを発見し、その成果が5月21日付けの米国進化学会誌Evolutionにオンライン掲載されました。

哺乳類の染色体は、オスになる遺伝子を持ったY染色体と、Y染色体と相同だがオスになる遺伝子を持たないX染色体と、性決定に関係のない常染色体とに機能の上から分類できます。性染色体は、長い進化の過程で常染色体と融合したりしながら進化してきたことが知られています。

北野特任准教授と吉田研究員は、X染色体と常染色体の融合は中部動原体染色体を多く持つ哺乳類で起こりやすく、Y染色体と常染色体の融合は末端動原体染色体を多く持つ哺乳類で起こりやすいことを世界で初めて見いだしました。また、X染色体と常染色体の融合には、メスが卵子を形成する(減数分裂の)過程に、どのような形の染色体が卵子に伝達されやすいか(メス減数分裂ドライブ:female meiotic drive)が強く影響しているのではないかという仮説を提唱しました。性染色体の進化に、常染色体の形やメス減数分裂ドライブが関わっていることを示した研究として高く評価されました。

Yoshida, K. and Kitano, J. (2012) The contribution of female meiotic drive to the evolution of neo-sex chromosomes. Evolution, in press
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1558-5646.2012.01681.x/full


下図:紫と緑で染まった左下の染色体は、Y染色体と常染色体の融合で形成されたネオ性染色体
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下図:染色体の形と融合の起こりやすさに強い相関を発見
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