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研究成果がEcology and Evolutionに公開されました

研究成果がEcology and Evolutionに公開されました。

外来種は、様々な生態学的、社会的な問題を引き起こしています。これら外来種が何故、本来ではない生息地にうまく適応し、在来の固有種を駆逐するまでに定着してしまうのか、その詳しい原因はよく分かっていません。ゲノム遺伝子相関では、集団間の交雑が外来種の適応能力に与える影響について、その遺伝機構の解明に取り組んでいます。

今回の研究で、北野班では、カルデラ湖という本来ではない生息地に定着した小魚イトヨに着目し、その適応機構を詳細に調査し、その成果を米国科学雑誌「Ecology and Evolution」に報告しました。

現在、北日本を代表する三つのカルデラ湖(十和田湖、屈斜路湖、支笏湖)にトゲウオ科魚類のイトヨが定着していますが、いずれも外来の集団であると考えられます。カルデラ湖は火山で形成された湖であり、そもそも魚類は生息していなかったと考えられます。そこへ何らかの人的放流によって導入されたと考えられます。遺伝調査の結果、三つのカルデラ湖のイトヨは、別々の独立したイトヨ集団の放流が原因であることが明らかになりました。特に屈斜路湖の場合には、複数回の放流が行われ、北米の集団に近い遺伝型を持った個体も発見されていることから、北米からのサケマスの移植事業に伴って持ち込まれたと推定されました。また、十和田湖イトヨの過去50年間の追跡調査の結果、移入直後から体のサイズや形態を著しく変化させて新規環境に適応してきたことが明らかになりました。

Adachi, T., A. Ishikawa, S. Mori, W. Makino, M. Kume, M. Kawata, and J. Kitano (2012). Shifts in morphology and diet of non-native sticklebacks introduced into Japanese crater lakes. Ecology and Evolution In press オープンアクセスです

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遺伝研一般公開にて研究紹介を行いました

4月7日に国立遺伝学研究所の一般公開が行われました。所内の桜の開花に合わせて毎年行われる国立遺伝学研究所の一般公開に、今年も大勢の方が来所されました。北野班では、パネル展示、生きたトゲウオの展示、形の異なるトゲウオ標本の展示、パンフレットの配布などを通じて、日頃のゲノム遺伝子相関の研究活動を広く一般の方々や学生たちに紹介させて頂きました。あふれんばかりの人だかりでした。時間を割いて説明を聞いて頂いた方々、遺伝研まで来所頂いた全ての方々に心より感謝致します。

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国際シンポジウムにて、研究成果を報告しました

国際シンポジウムにて、研究成果を報告しました。

3/19-3/23に愛知県岡崎市にて、計画班の高橋がオーガナイザーの一人として共催しました国際シンポジウム「The 8th Okazaki Biology Conference: Speciation and Adaptation II - Environment and Epigenetics - 」が開催されました。高橋と北野は、Genomics of Speciationのセッションにて、木下は、Epigeneticsのセッションにて、ゲノム遺伝子相関の最新成果を発表しました。

42の口頭発表、35のポスター発表があり、種分化や環境適応、エピジェネティックスの分野の世界最先端の研究者が集まり、次世代シークエンサーなどを駆使したパワフルな研究から、着想に基づいたユニークな研究までの様々な最新成果が紹介されました。また、それぞれのセッションの後には活発な討論が行われ、現在未解決の問題についての活発な論争から、今後のゲノム研究の方向性などについて議論が行われました。植物から動物までの広い分類群が網羅され、手法や分野も様々で、刺激的な大変すばらしい集会でした。

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研究成果がPNASに掲載されました

研究成果が米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されました。

遺伝子の発現量は厳密に制御されているため、遺伝子間の発現量バランスが崩れることは大きな問題です(量的不均衡)。ヒトの細胞には22対の常染色体と1対の性染色体があり、女性では2本のX染色体、男性ではX染色体とY染色体を1本ずつ持ちます。また、性染色体は1億5千万年前に常染色体から進化したことが知られています。女性のX染色体の片方は不活性化され、機能するX染色体は男女ともに1本となり男女間の量的不均衡が解消されています。しかし、これではX染色体が常染色体と比較して半分しか機能していないことになります。そこで、X染色体と常染色体上の遺伝子発現量を比較したところ、発現量変化に敏感なX染色体上の遺伝子は発現量が半減することなく、常染色体上の遺伝子と等量となるよう発現していることが明らかとなりました。このことは性染色体の進化過程において、量的感受性の強いX染色体上の遺伝子に発現量を倍加させる選択が働いたことを示唆しています。また本研究で得られた知見により、X染色体数異常疾患の原因となる遺伝子を多数推定できました。

Pessia E, Makino T, Bailly-Bechet M, McLysaght A and Marais GAB. (2012)
Mammalian X Chromosome Inactivation evolved as a dosage compensation mechanism for dosage-sensitive genes on the X chromosome.
詳細はPNASのサイトをご覧ください



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図:1対の常染色体から性染色体が進化しました。男性ではX染色体を1本しか持たず、女性では片方が不活性化し1本のX染色体しか機能していません。2本ずつ存在する常染色体上の遺伝子と発現量のバランスを保つため、発現量への感受性が強いX染色体上の遺伝子は2倍量発現するように進化しました。一方で、発現量への感受性が強くないX染色体上の遺伝子では、常染色体上の遺伝子と比較して半量しか発現していません。


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研究成果がPLoS ONEに掲載されました

研究成果がPLoS ONEに掲載されました。
動物の近縁種間では、求愛ディスプレイや交配行動が分化していて、異種間交配が妨げられている例が多く知られています。こういった求愛シグナル分化の背景に、性ステロイドホルモンの違いが関わっているのではないかという仮説のもと、日本に生息する二種のイトヨ(日本海イトヨと太平洋イトヨ)について、求愛行動直後の血中の性ステロイド濃度の違いや、脳下垂体と生殖腺での遺伝子発現の違いを探索しました。その結果、これら近縁種間で多くの違いが見つかりました。特に興味深いことに、日本海イトヨのメスでは、メスにも関わらず一般的に男性化ホルモンと考えられているテストステロンの濃度がオス並みに高いことが分かりました。種分化とホルモンとの関係に着目した仕事は意外にも少なく、本領域では、この成果をもとにして、さらにこの機能的な意義と遺伝基盤に迫っていきます。

Kitano J, Kawagishi Y, Mori S, Peichel CL, Makino T, et al. (2011) Divergence in Sex Steroid Hormone Signaling between Sympatric Species of Japanese Threespine Stickleback. 
PLoS ONE 6(12): e29253. doi:10.1371/journal.pone.0029253

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