文部科学省科学研究費補助金「新学術領域研究」
研究成果
山元班の原らは、キイロショウジョウバエ胚の筋細胞で中心的な役割を演じるCa2+チャンネルがDmca1Dであることを、パッチクランプ法と突然変異体の活用によって明らかにしました。胚の筋標本を用いることによって、致死変異のホモ接合体についても膜特性の解析が可能となり、神経変性疾患モデルの研究などに寄与することが期待されます。
出典:Hara Y, Koganezawa M, Yamamoto D. The Dmca1D channel
mediates Ca2+ inward currents in Drosophila
embryonic muscles. J Neurogenet. 2015 May 25
[Epub ahead of print]. PMID: 26004544
図:胚の筋肉から記録した活動電位(原佑介 原図)
広報
山元班の濵田-川口典子が、インテリジェントコスモス奨励賞を受賞しました。西沢潤一理事長から記念の盾を受け取る濵田の写真とともに、受賞のようすが河北新報に報じられています。
出典:河北新報、2015年5月22日朝刊第9面
研究成果
山元班ではキイロショウジョウバエの性行動を生み出す中枢ニューロンの同定を進めてきましたが、このたび、北海道教育大学の木村賢一らと共に、雌の生殖行動のトリガーニューロンを同定しました。雌は、二つの異なる脈略で産卵管を押し出す行動をとります。すなわち、求愛してきた雄を拒否する時と、産卵する時です。同じように見える産卵管の押し出しですが、交尾拒否の時と産卵の時とでは、それぞれ異なる脳の介在ニューロンが活性化されることで、それぞれの行動がひき起されることがわかりました。
出典:Kimura, K. et al. (2015) Drosophila ovipositor extension in mating behavior and egg deposition involves distinct sets of brain interneurons. PLoS ONE DOI:10.1371/journal.pone.0126445
図:doublesex遺伝子発現ニューロンを人為的に活性化させて誘起したキイロショウジョウバエ雌の産卵行動
アウトリーチ/広報
山元らは、遺伝的に性指向性が変化して雄がもっぱら雄に求愛するようになったショウジョウバエのsatori変異体について長年研究してきました。ようやく最近になり、satori変異体雄を羽化後単独で飼って他の雄から隔離すると、その後、雄への求愛をわずかしかしなくなることを知るに至りました。山元班の古波津は、野生型の雄をトレッドミルに乗せて脳の特定のニューロン(P1)を刺激しながらコンピュータディスプレイ上の動く光点を見せると、雄がこの光点を追って求愛することを発見しました。satoriの雄は、P1ニューロンへの刺激がない状態でも動く光点に求愛し、しかもこの"無差別求愛"は他の雄との接触を断って飼われた雄では見られないことから、satoriの同性愛求愛と同様に、社会経験依存的であるとしました。この成果が、朝日新聞の科学面で紹介されています。
出典:恋の相手は育ち方で変わる・・・、朝日新聞科学面、2015年4月23日、朝刊。
アウトリーチ
過去1年間、雑誌Scienceに掲載された日本人の論文を著者が自ら解説する『サイエンス誌に載った日本人研究者』に山元と濵田が寄稿しました。山元は同じ冊子のコラムに、"フェロモンはホントに効くの?"と題したエッセイも執筆しています。
出典:
濵田典子、山元大輔 (2015) Btk29Aはショウジョウバエ卵巣のニッチでWnt4シグナリングを促進することによって、生殖細胞の増殖にブレーキをかける.Science Japanese Scientists in Science 2014: 2015 issue, 18 (AAAS).
山元大輔 (2015) フェロモンはホントに効くの? Science Japanese Scientists
in Science 2014: 2015 issue, 19
(AAAS).
図:掲載誌の表紙